9交際手帳の詳細
宜しくお願いします。
『仮交際、同時に複数人と結べる関係性。
好意を持った者同士でする。
無許可で素手で手に触れられるようになる。
手にキスすることができたり、抱擁することが出来たりする』
以上が仮交際の欄に書かれていた説明文だった。
「仮交際は友達以上、恋人未満ってところですかね」
丁度都合のよかった先生に意見を求めた。
「上手く言ったね。その通り。恋人の一歩手前といった感じかな。
さて、リハビリだけど足に使ってるゴムを腕でも使う方法を導入しようと思う」
「はい、お願いします」
新しい方法はゴムを使って、腕を曲げて伸ばしてとするやり方だった。
足でも使えそうな気がするけど、どうなんだろう。
「足でも同じ方法で使える気がするんですけど」
「うん、出来るね。やってみるかい?」
「はい」
腕の方を途中で切り上げて足での方法を実行してみる。
「この間ベッドから出てみたんですけど、直ぐに倒れてしまって」
「立つにはまだ早いね。百回疲れずに出来るようになれば、安定して立てるようになるかもしれないね」
「そうですか。早く歩きたいんですけど、まだまだ先ですか?」
「そうだね、まだ先かな。一週間みっちり頑張れば、近づくんじゃないかな。君は初めての症例だから詳細はハッキリしてないけどね」
魂が抜けていた身体の成長だからね、分からなくて当然。
魔法で鍛えている分、一般的な回復よりだいぶ速いと思うけど。
「分かりました。頑張ります」
最低回数、百回を朝昼晩の三回実施すればいいような気がする。
他にも時間があったら、こまめにやればいいんじゃないかな。
考えがまとまった所で、朝の分のリハビリを再開した。
それと同時に交際手帳の続きを読んだ。
『交際、当然一人だけ。
好きな人と結ばれている関係。
顔へのキスが解禁される』
うん、一般的な男女交際がこれだと思う。
『仮婚約、女性側から将来結婚を見据えた相手の交際関係を更新する。
上半身にキスすることが出来るようになる』
中々詳細まで書かれてる。
仮婚約は女性側から許可され、対して男性側は受けの姿勢みたい。
女性は何が切欠で更新を考えるんだろう。
『婚約、男性側からのみ。
結婚したい相手にプロポーズすることが切欠で行われ、女性側からの返事で仮成立。
正式成立にはプロポーズの証人が必要とされている。
下半身へのキスが可能となる』
逆プロポーズは認められていないみたい。
男の負担が少々重そうというか、責任重大な感じだよね。
『公認婚約、婚約者の双方の両親または保護者が許可を出さなければならない。
相手と交わり契ることが可能となる』
この公認婚約で脱童貞、処女ってことかな。
双方の両親の許可がなければ成立しないとはね。
意外と難しい関係性な気がするけど、どうなんだろう。
どちらにしろ、契ったら何があっても婚姻確定だよね。
焦らず一歩ずつ進んでいけば良い印象だった。
後は役所に届を出すと同棲の許可が出るのと、結婚式で交際手帳が燃えて灰になるというもの。
灰を役所に出すと入籍となるらしい。
一つずつこなしていく必要があるから、面倒くさそうだが自動で記されるらしいので実際には楽かもしれない。
日が記載されるので、燃えてなくなる前に記念日みたいなのは忘れないように書いておく必要があるかもしれない。
そうして交際手帳に記載されている事項を読みながらリハビリをすること数十分。
最初の手の百回を終え、次の足の百回を始めた。
「おはよう、ユート。リハビリは順調か?」
「おはようございます、父様、母様。順調です」
「魔法は必要かしら?」
「そこまで痛くなってないので、まだ大丈夫だと思います」
百回はともかく、二百回こなすと痛くなり始めるくらいかな。
と言っても初めてするリハビリなので、百回の時点で痛くなる可能性は高いんだけどね。
「あ、でも念の為かけてもらえますか?」
「ええ、もちろんよ」
母様に腕と足に回復魔法をかけてもらった。
魔法をかけてもらった分、リハビリが段違いに捗るようになった。
「手足が思っていたよりも軽くなりました、ありがとうございます」
「お安い御用よ」
笑顔の母様に自然と私も笑顔を返していた。
「お、交際手帳を読んでいたのか?」
父様がベッドサイドにある交際手帳を見つけた。
「はい。どんな段階があるのか確かめてました」
こちらの、エアルスフィアの恋愛のいろはを確かめていた。
「それで?難しそうか?」
「いえ、一つずつ段階を踏んでいけば難しくないと思います」
「そうか、ユートはやはり理解力が高いな。別人として成人を経験していただけあるな」
確かに大学まで卒業し、社会人として生活していたので普通の九歳児よりは理解力が高いよね。
「家庭教師には事前にテストをしてもらうべきだな」
「そうね。国語と算数は問題なく、初級卒業程度まで回答できるでしょうね」
国語は漢字が何年生まで対応可能かが分からない。
漢検みたいなのがあったりするのかな。
とにかく書く方より読む方が得意だったのは覚えている。
今からどんな問題が出されるのか微妙に楽しみかも。
算数の、九九以降が何を学んだか覚えてないから、ちょっとあやしいんだけど大丈夫かな。
いざ問題として出されれば計算可能かもしれないけど、どうなんだろう。
若干自信がない。
そもそも小学生の国語と算数はどの程度のものが出題されるのか、それが問題な気がする。
後、こちらの常識を取り入れている社会と理科が気になる。
全てリセットされた状態で一年生から習っていくのかな。
そうこうしているうちに二百回も終えた。
そして手にはスポンジ製のボールが一つ。
リハビリ初日から潰す為にあるボールだ。
握って、放して、握ってと繰り返す。
これもだいぶ慣れてきた気がする。
「あとちょっとで完全に握れるな」
「はい!」
「始めてからもう一週間になるものね。よく頑張ってるわ」
「はい、もっと頑張ります!」
両親に頑張りを認められて高揚した。
褒められて、天にも昇る気持ちになりました。
そして一週間後。
「やったー」
リハビリ用のスポンジボールを最小サイズになるまで握れた。
「よく出来たな、偉いぞ」
「ありがとうございます!継続は力なり、でした」
回復魔法を含めたリハビリは超が付く順調だった。
筋肉痛が直ぐに治るので、凄い勢いではかどる。
「次のボールを用意してもらわなきゃね」
「はい!」
母様に言われて気分が上がった。
「おお、最小までいけたね。じゃあ、このボールと変更だ」
丁度先生が来てくれた所だった。
渡してきたのは、同じくスポンジ製のボールだけど、こっちの方が重そうというか質量が多そう。
ギュッと握ってみると半分以下どころか四分の一くらいしか潰れなかった。
「このボールが最小サイズまで握れたら、退院がより一層近くなるから頑張りなさい」
「分かりました、頑張ります!」
目が覚めてからずっとこの病院に入院しているから、退院の言葉が聞けて嬉しくなった。
早く家族全員がいる家に帰りたいと切に願うばかり。
「立つのに挑戦しても良いですか?」
「ああ、いいよ。慎重にね」
「はい」
ベッドの端に座り、靴を履いてから足を先に下ろす。
脚から先に少しずつ下ろしていき、床に触れるまで慎重に動かした。
向きを調整し、ベッド側に手を出し、支えるような形にする。
少し震えているけど、立つことが出来た。
「大丈夫かい?」
「はい、前回挑戦した時と比べ物にならないくらい安定しています」
「そうか、それはよかった。歩けそうかい?」
「試してみます」
ベッドを持ちながらゆっくり足を動かす。
横に移動しているからカニみたいな動きになったけど、歩けている。
「プールでのリハビリを開始しようか」
「プールがあるんですか?」
「ああ、あるよ。歩行の補助に水力が使用されるから、歩く練習に丁度いいだろう。今ここで補助なしで歩けるかい?」
「いきます」
支えにしていたベッドを放し、部屋の真ん中に向かって足を踏み出した。
一歩二歩とグラつきながら進めるが、バランスがあやしい。
三歩目でバランスをくずし、床に手をついてしまった。
「うん、プールでの練習を開始しよう。明日からでいいかな」
「はい、よろしくお願いします」
「ああ、水の浮力による補助が可能になるだろう。移動用の車椅子も用意しとこうね」
「ありがとうございます」
「うん、じゃあここまでで。自力で戻れるかい?」
「試してみます」
支えなしでなんとか立ち上がり、ベッドへと向かう。
ベッドの端に手をかけて、何度かよじ登ろうとしたけど、無理だった。
ベッドの上に胸まで上がれた状態でストップした。
「すみません、ここまでが限界です」
胸から下、腹と下半身が登れない状態だ。
手を使って何とか登ろうとするけど、それ以上いくのは無理だった。
「はい。大丈夫?」
母様が補助してくれて、無事ベッドに戻った。
「大丈夫です、ありがとうございます」
「良かったわ」
「プールですけど、水着がありません」
院内で売ってたりするのかな。
「下の受付で売ってるから、そこで買うといいよ」
良かった、売ってた。
「分かりました。父様母様お願いします」
「ああ、分かった。任せろ」
実に頼もしい言葉が父様から返ってきた。
こうして明日からプールでのリハビリが増えることとなった。
どれくらいのサイズのプールなんだろうと考える。
明日からの楽しみが増えた。
そして翌日。
車椅子に乗って、父様のリードでプールのある地下へと移動する。
受付で水着を購入し、ロッカーのある控室で着替えた。
父様に補助してもらいながら、ゆっくりと歩く。
プールは大きいサイズと小さいサイズの二種類あった。
入り口に近い大きいプールの方に着き、支持をしてくれる先生を待つ。
よく見たら小さい方のプールに先生が待機していた。
「こちらのプールで行います。腕にこれを付けて水に入りなさい」
「はい」
小さい方のプールに移動する。
両腕に小さな浮き輪のようなものを取り付けてから、準備運動をしなかったので、ゆっくりと入水した。
胸まで水がくる深さで、丁度いいと言えるかな。
「それじゃあ、まずは一周行ってきなさい」
「はい」
言われた通りに、歩いてプールのレーンを一周した。
だけど、それだけで軽くクタクタになってしまった。
体力がない証拠かな。
「回復魔法、お願いします」
「ああ、今行く」
父様が来てくれ、回復魔法をかけてくれた。
「ありがとうございます」
「ああ。無理はしないように」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、もう二周して上がろうか」
「はい、分かりました」
プール担当の先生に指示され、それをこなす努力をする。
二周目もヘトヘトになってしまい、また回復魔法で治してもらった。
三週目が終わってからはそこまで疲れなかったので、回復魔法はなしにした。
「回数増すごとに良くなってるね。次回は五周できるように頑張ろう」
「はい!ありがとうございました」
こうして初回のプールリハビリは終わったのだった。
お読みいただきありがとうございます。




