4話
「アレン! 早くしろ!」
朝早くから、村の農場でロベルトの怒鳴り声が響いた。
「わかってるって! けど、なんで俺がこんなことを……」
「いいから働け!」
俺は朝から、畑仕事を手伝う羽目になっていた。
理由は簡単。
「お前、剣士になるんだったら体力をつけねぇとダメだろ?」
……という、ロベルトの無茶苦茶な理屈だった。
いや、確かに剣士には体力が必要だ。
でも、俺がやりたいのは剣を振るうことであって、クワを振るうことじゃないんだが。
そんな俺の横で──。
「アレン、大変ねぇ~」
リディア が暇そうにしゃがみ込み、畑の端で草をいじっていた。
「お前、何でついてきたんだよ」
「だって、暇だったんだもん!」
「……だったら手伝えよ」
「いやよ! 私は魔法使いだから!」
「うるせぇ! いいからクワ持て!」
俺はリディアに鍬を差し出すが、彼女はそっぽを向く。
「こういう仕事はね、体を動かす人間がやるべきなのよ。私は見守る係!」
「それ、ただのサボりじゃねぇか!!」
「頑張ってね、アレン!」
「お前ぇぇぇ……!!」
⸻
畑仕事を終えた俺は、今度は家畜を管理しているリック爺さんに捕まり、そのまま家畜の世話を手伝うことになった。
村の家畜小屋では、羊や牛がのんびりと草を食べている。
「よし、次はこの羊たちを見てくれ」
リック爺さんが俺に指示を出す。
「この羊……やけに目つきが悪いな」
「この子はちょっと気が強くてな。ほら、試しに近づいてみなさい」
「へいへい……」
俺は羊にそっと手を伸ばす。
──その瞬間。
「メェェェェッ!!」
「うおっ!!?」
突如、羊が全力で俺に体当たりをしてきた。
「ぐはっ!!」
俺はそのまま吹っ飛び、干し草の山にダイブした。
「いってぇ!お前、絶対普通の羊じゃねぇだろ!」
「ははは! こいつは気に入らない相手にはすぐ体当たりするんだ」
「先に言えよ……」
俺が干し草まみれになっていると、リディアがくすくす笑って近づいてきた。
「アレン、何やってるの?」
「見てわかるだろ……羊にやられた」
「ふふっ、そんなの避ければいいのに」
「だったらお前がやってみろ!」
「私は魔法があるからね! ほら!」
そう言って、リディアは軽く手をかざし、羊の前でふわっと風を起こした。
すると、羊は驚いたように耳をぴくりと動かし、そのままおとなしくなった。
「……お前、ほんとに便利だな」
「でしょ?」
「いや、でも羊に魔法使うのは反則だろ」
「アレンが弱いだけじゃない?」
「ぐぬぬ……」
結局、その後も俺は羊と戦う羽目になり、ボロボロになった。
⸻
そんな風に、村の仕事を手伝いながら、一日が終わる。
剣士を目指しているのに、なんで俺は農業と家畜相手に全力を尽くしてるんだろう……
そんなことをぼんやり考えながら、俺は空を見上げた。
そこには、変わらず穏やかな青空が広がっていた。