20話
初めて“気”を発現してから10日が経った。
カルヴィスはその間、たまに広場に来てはアドバイスをしてくれた。
そのおかげもあり、“気”を纏った状態を維持し、ゆっくりであれば動くこともできるようになっていた。
「ふぅ……」
目を閉じ、深呼吸をして自分の中の生命エネルギーに意識を集中する。
――すると、体の周りを淡い光が纏う
そのまま一本、二歩歩き、剣を構える。
そしてゆっくり振りかぶり――
「ふっ!」
――ブォン!
目を開き自分の体を確認する。
「よし!気を纏った状態を維持できてる!」
「お!坊主、10日間でだいぶ成長したな。」
広場にやってきたカルヴィスが驚いたようにそう言った。
「よし、今日は、少し先のことを教えようと思う。」
「先のこと?」
「ああ、気の使い方が上手くなるとどんなことができるのか、参考までに見せておこうと思ってな。」
そう言ってカルヴィスは広場隅にある、俺の身長と同じくらいの大きな岩の前に立った。
「それじゃあ、ゆっくりやってやるからよく見てろよ!」
言うと同時にカルヴィスの全身を気が纏う。
カルヴィスの体を包む”気”は、俺のそれとは感じる圧力がまるで別物だった。それに、全身を覆うスピードがとても速い。
カルヴィスが深く息を吸い込んだと同時に全身を覆っていた白い光が、腕と剣に集まっていきよりまばゆい光へと変わっていく。
そして、”気”が集まったと同時にゆっくりと剣を振り上げた。
「じゃあ行くぜ!」
風が裂ける音と同時に、剣が振るわれた。
岩に走る一本の亀裂。
そのまま、真っ二つにスパッと割れて、鈍い音を立てながら地面へと崩れ落ちた。
「……!」
俺は目を見開いた。
あんなに大きい岩を真っ二つにするなんて!
「まあ、こんなもんだな。”気”をうまいこと使えりゃ今みたいに一点に集中させることで一撃の威力を跳ね上げることができる。お前も頑張ってればいずれできるようになるさ」
「...ああ、俺も絶対にできるようになる!」
「その意気だ」
カルヴィスは満足そうにうなずいた後、ふっと空を見上げた。
「そろそろ……俺も街に帰らないとだな」
「えっ......」
「ギルドからのお願いで魔物の情報を伝えに来ただけだったからな。ちょっと長居しすぎちまった。」
急な別れに、俺は思わず拳を握りしめた。
もっといろいろ教えてほしかった。そういう気持ちがこみあげてくる。
でも、カルヴィスは俺のそんな心を見透かしたかのように、軽く肩を叩いた。
「基本は教えた。後は、自分で積み重ねていくしかねぇ。それに、お前なら1人でもやっていけるさ。」
「......うん」
「......困ったら思い出せ。"気"は、命を燃やす力だ。そしてそれを導くのは――おまえ自身の意思だってな」
そう言ってカルヴィスは、歩きだした。
その背中に向かって俺は声を張り上げる
「色々と教えてくれてありがとうございました!」
声が聞こえたのか、カルヴィスは、歩みは止めず軽く手を振った。
静かになった広場。
そこに立ち尽くしたまま、ここ数日間のことを思い返す。
そして、すぐに木剣を握った。
「次合うときまでに、少しでも追いついてて見せるからな」
1人呟いた俺は、全身に”気”を纏い、素振りを始めるのだった。




