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16話

 翌朝、俺は広場に向かって走っていた。


 俺はあの後すぐに修行を開始するのかと思っていたが、やることを思い出すとかで今日から開始することになった。


 広場には、すでにガルヴィスがいた。

 訓練用の木剣を手にし、軽く体を動かしている。


「遅ぇぞ、坊主」


「すまな、みません!」


 俺は息を整えながら立ち止まる。


「それじゃあ早速、気を扱うための訓練に入る。

 ...の前に、今の変なのは敬語か?口調はもとに戻していいぞ。俺は堅苦しいのは苦手なんだ。」


 カルヴィスが苦笑いをしながら言う


「わかった!それならそうさせてもらう」


「よし、じゃあまずは、改めて気が使えるようになる条件についてだ。

 昨日少し説明したが、気を使ったことがないやつが気を使うには二つの条件がある。

 まず1つ目が十分な生命エネルギーを持っていること、2つ目が、体力を限界まで使い切ることだ。」


「昨日から気になってたんだが、その生命エネルギーっていうのは何なんだ?」


「そういえばその説明はまだだったな。生命エネルギーっていうのは生き物なら、どんなものでも持っている生きてくために必要なエネルギーのことだ。

このエネルギーを燃やすことで気を発現することができる。」


「生きていくのに必要なエネルギーを燃やしてしまって大丈夫なのか?」


「おお!いいところに気が付いたな。そう、もし生命エネルギーをすべて燃やしてしまった場合...」


「場合...?」

 

「そいつは死ぬ」


「ええ!し、死ぬ!?」

 

「まあ、そんなことにはよっぽどならないから安心しろ。人間の脳にはリミッターがかけられていてな、生命エネルギーが少なくなると気を発現できないようになってるんだ。それに生命エネルギーは時間と共に回復する。」


そうなのか、安心した...ん?よっぽど?

「よっぽどってことはリミッターが外れることもあるのか?」


「ああ、俺はなったことないが、感情の爆発で外れることがあるらしい。まあ、気の使い過ぎで死んだなんて話、俺の周りでは聞いたことないからそうそう外れるものではないはずだ。一応、Aランク冒険者や、王都の近衛騎士とかは自分でリミッターを外して自分の限界をうまく調整することができるって噂だが...実際どうなのかは俺にはわからん。」


「なるほど...それでなんで限界まで体力を使い切る必要があるんだ?」


「厳密には自分の体の中にある生命エネルギーを認識するというのが2つ目の条件だ。体力を使い切るって言ったのは、生命エネルギーを感じるために必要だからだな。

 俺もよくはわかってないんだが、人間は普段、においだったり痛覚だったり、色々なものを感じるだろ?そういうのが邪魔になって初めての場合、生命エネルギーの感覚が何なのかわからないんだ。だから限界まで体力を使い切って感じるものを少なくする。すると、普段は気づけてない感覚を感じることができる。みたいな理由だったはずだ。」


「それ、本当にあってるのか?」

俺は眉をひそめて聞き返す。


「まあ、大丈夫だろ。俺はこのやり方でできるようになった。なんだ?ビビっちまったか?」

ニヤついた顔でそういうカルヴィスに、思わずムッとする。


「そんなわけあるか!やってやる!」


「よし!じゃあ説明は終わりだ!ここからはひたすら体を追い込む。走れ、跳べ、斬れ。とにかく動き続けろ」


「……分かった!」


 俺は木剣を握りしめ、走り出す。

 広場を何周も駆け巡り、木の的に何度も斬りかかる。

 腕が重くなり、脚が震える。息が荒くなっても止めない。


「まだだ、もっといけるぞ!」


 ガルヴィスの声が飛ぶ。


 どこまで動けば“限界”なのか、自分でも分からなかった。

 ただ、とにかく前へ。限界のその先へ。


 ──ドンッ!


 足がもつれ、俺は地面に倒れ込んだ。


「はぁ……はぁ……」


 全身が鉛のように重い。


「どうだ?何か感じるか?」

 

「はぁ……はぁ……

 いや、わからない……」


 ガルヴィスさんはにやりと笑った。


「ということはまだ限界じゃないってことだ。走れ!限界を超えろ!」

 

「くっそぉおお!」

 俺は絶対に“気”を使えるようになってみせるという気合だけで立ち上がり、走るのを再開した。

 


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