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15話


 広場には、穏やかな風が吹いており、いつもと変わらない静けさに包まれている。だが、俺の心は静かではなかった。

 本物の冒険者との戦い……!


 俺は木剣を握りしめ、目の前の男──冒険者ガルヴィスと向き合っている。


「おいおい、そんなに気負うなよ」


 ガルヴィスは気楽な調子で笑いながら、片手で木剣を軽く振る。


「鋼の剣じゃさすがにあぶねぇからな。俺も木剣を使わせてもらうぜ」


 そう言って、ガルヴィスは村の訓練用の木剣を握り直した。

 ……とはいえ、木剣でも十分危険だ。

 ガルヴィスが振るえば、それはただの木の棒じゃなく、「本物の武器」になるだろう。


「……お願いします」


 深く息を吸い、心を落ち着ける。


「おう、そんじゃ遠慮なくいくぜ」


 ガルヴィスが一歩踏み出した。

 その動きに、俺の全身が一瞬だけ震えた。


「……っ!」


 ガルヴィスが軽く踏み込んだかと思った瞬間、彼の木剣が目の前に迫っていた。


 咄嗟に木剣を構える。


ガキィンッ!


 木剣と木剣がぶつかる音が広場に響きわたり軽く後ろに吹き飛ばされる。


「おお、悪くねぇな。今のを防げるのか」


 ガルヴィスは俺の防御を見て軽く感心したように言う。


「ぐっ……!」


 俺の腕に痺れが走る。

 

 たった一撃で、この威力。

 

 力だけじゃない。

 

 攻撃のタイミング、角度、すべてが無駄なく洗練されている。


 これが本物の冒険者の剣か……!


 ガルヴィスは容赦なく攻めてくる。

 

 俺は必死に防御しながら、反撃の隙を探す。

 

 でも、ガルヴィスの動きは無駄がない。

 

 俺の剣が届く間合いに入る前に、先手を打たれる。


「ちっ……!」


 このままじゃ、ただ押されるだけだ。


 考えろ。

 俺が勝てる方法……。


 相手は経験豊富な冒険者だ。

 正攻法では勝てない。


 ならば──


「……!」


 俺はあえて、隙を作った。


「おっ?」


 ガルヴィスの目が細められる。


 一瞬、ガルヴィスの木剣が動いた。


 今だ……!


 俺は全力で踏み込む。


 そして──


「そらっ!」


「え──」


 俺の視界が、いきなり反転した。


 ドサッ!


「……は?」


 俺は地面に転がっていた。


 ガルヴィスの木剣は、俺の首元にピタリと止まっている。


「……やられた、のか?」


 俺は呆然とした。


 俺の狙いは、わざと隙を作って相手を誘い、カウンターを狙うことだった。


 でも、何をされたのかすらわからないまま気づいたら俺は倒れていた。


 これが冒険者か!


「いやぁ、お前、なかなか面白い動きをするな」


 ガルヴィスは木剣を軽く肩に担ぎながら、満足そうに言った。


「でも、まだまだ甘ぇな。剣の技術もそうだが、お前……気は使えねぇのか?」


「気……?」


 俺は思わず聞き返した。


「おいおい、村の剣士は気の使い方も知らねぇのか?」


 ガルヴィスは呆れたように言う。


「気ってのは、剣士が戦ううえでの基本中の基本だ。Cランク以上の冒険者なら、誰でも使ってるぜ?」


「そんなの、知らなかった...

 ということは、カルヴィスはCランク以上の冒険者なのか?」


「ああ、おればB級冒険者だ。

 ったく……よし、ちょっと見せてやる」


 そう言うと、ガルヴィスは目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。


 次の瞬間──


 ガルヴィスの体が、白い光に包まれた。


「……っ!」


 驚いて目を見開く。

 それは、目の錯覚ではなかった。

 ガルヴィスの全身から、揺らめくオーラのようなものが漂っている。


「これが、気を使った状態だ」


 ガルヴィスがゆっくりと一歩踏み出すと、その動きに合わせて光が微かに揺れる。


「気を込めることで、身体能力を引き上げる。強くなればなるほど、この光は濃くなるってわけだ」


 確かに、ただの動きではなかった。

 動きに「力」が乗っているのが、見ているだけでわかった。


「で、お前が今後も剣士を目指すというなら、気を使えるのは絶対条件だ」


「……っ」


 俺はカルヴィスがやったように目を閉じ、気を意識する。

 全身に力を込め、心の中で強く念じた。


 ……しかし、何も変わらなかった。


「……無理だ」


「だろうな」


 ガルヴィスは腕を組みながら、ニヤリと笑う。


「気を使えるようになるには条件が2つあるんだ。

 お前は毎日鍛錬をしてるようだから、気を扱うだけの生命エネルギー量は十分あるはずだ。だからお前に必要なのはもう一つの条件」


「ゴクリ...」


「ズバリ、限界まで体力を使い切ることだ」

  

「...それだけ?」


「ああ、それだけだ。だが、甘く見ちゃいけねぇ、本当に体力がスッカラカンの状態にならなきゃいけないからな、これがなかなか難しい」


「どうする? 気の訓練をやってみるか?」


「……!」


 俺はガルヴィスを見つめる。

 俺の答えは、決まっていた。


「……もちろん!よろしくお願いします!」


 こうして、俺の気の修行が始まった。

 

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