13話
村の外れの広場に、木剣を構えた俺とリディアが向かい合う。
昼下がりの陽光が降り注ぎ、二人の影が地面に伸びていた。
「準備はいい?」
「いつでも来いよ!」
俺が木剣を握りしめると、リディアは木剣を構える。
だが、構え方が完全に素人だった。
腕の角度、握りの強さ、重心の置き方。
どれもめちゃくちゃだ。
(やっぱり、剣を使ったことがないんだな……)
正直、これなら楽に勝てそうな気がする。
「いくわよ!」
リディアが勢いよく踏み込む。
でも──
(……遅い)
リディアの動きは、俺の想像よりもずっとぎこちなかった。
身体が剣の重さに慣れておらず、手首の使い方も雑。
バランスも悪く、重心がぶれぶれだ。
「ふっ!」
俺は軽く体をずらして、リディアの攻撃を避ける。
「なっ……!」
リディアはよろける。
……正直、これなら勝てる。
「……おい、やめといた方がいいんじゃねぇか?」
「なによ! まだ終わってないわ!」
リディアは悔しそうに歯を食いしばりながら、もう一度剣を振る。
──だが、やはり遅い。
俺は楽に避けながら、反撃のために木剣を構えた。
(悪いけど、ここで終わらせる)
そう思い、俺が踏み込もうとした時だった。
「……っ!」
リディアの足元に、風が巻き起こった。
次の瞬間、彼女の動きが一変した。
「はっ!!」
今までぎこちなかったリディアの剣が、驚くほど鋭くなった。
俺はとっさに木剣で受け止める。
ガキィンッ!!
「っ……重っ!?」
さっきまでとは比べ物にならない威力。
まるで、別人の動きだった。
(こいつ……魔法で身体能力を強化してるのか!?)
剣そのものの技術はまだ拙い。
でも、魔法で補ったことで、俺の想定を超える速度と力になっている。
「どお!? これなら戦えるでしょ!」
「……ずりぃぞ、それ!」
「別に剣しか使わないなんて1度も言ってないでしょ?」
「……っ!」
その言葉と同時に、リディアの攻撃が加速した。
リディアの剣は、相変わらずたどたどしい動きだ。
でも、魔法で動きの補正が入ることで俺と同等、いや、それ以上の身体能力を発揮している。
動き自体はたどたどしいのに、スピードは早く、攻撃は重い。
それに、普通の剣士の動きとは違うリズムだから余計にやりづらい。
「くっ……!」
俺は懸命に防ぎながら、反撃のタイミングを探す。
(魔法ってのはこんなこともできるのか……!)
魔法の補正があるせいで、俺はほとんど防戦一方になっていた。
「アレン、そろそろ負けを認めたら?」
「……ふざけんな!」
俺は木剣を振り上げ、思い切り叩きつける。
だが──
スカッ!
リディアの体がふわりと浮くように動き、俺の攻撃を回避した。
風が、彼女の動きを後押ししている。
(……だったら!!)
俺は次の瞬間、木剣を振り抜いた。
狙いは──リディアの剣。
バキィンッ!!
「──えっ!?」
リディアの木剣が、俺の一撃で吹き飛んだ。
木剣は宙を舞い、遠くの地面へと転がる。
「よっしゃ!」
「おい、リディア。どうする? 剣なしで戦うか?」
「……へぇ、やるじゃない」
リディアはニヤリと笑う。
そして次の瞬間──
バシュッ!!
「うおっ!?」
俺の足元が、突然強風に襲われた。
「なっ──!?」
俺の体が浮き上がる。
気がついた時には、俺は地面に背中から叩きつけられていた。
「……っ!!」
目の前に、リディアが立っていた。
「はぁ……はぁ……」
リディアの手には、魔力が渦巻いている。
「勝負ありね」
「……くそっ……!」
俺は、地面に横たわったまま、悔しさを噛み締めた。
「やった……! 勝った!」
リディアが満面の笑みで拳を掲げる。
俺は、深く息を吐いた。
「……お前なぁ……」
「なに?」
「結局、剣じゃなくて魔法で勝つのかよ……」
俺はボソッと呟いた。
「さっきも言ったけど、別に1度も剣だけで勝負しようなんて言ってなかったでしょ?それに、」
「私は魔法使いだもん♪」
「……ぐっ」
確かに、剣だけで戦うとは言ってなかったな。
俺は負けたのか…
でも──
(俺は、確実に成長できている)
リディアの木剣を吹き飛ばせた。
以前の俺だったらそれすらもできずに負けていただろう。
「……俺は、まだまだ強くなれる。」
横で飛び跳ねて喜んでいるリディアを見ながら、木剣を握りしめ、強くそう思った。




