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12話

 祭りの翌朝、村はいつも通りの静けさを取り戻していた。


 俺は木剣を握り、村の外れの広場で日課の稽古をしていた。


「はっ!」


 木剣を振り下ろす。


 大会で優勝したからといって休んでいる暇はない

 俺は、もっと強くなりたい

 リディアに負けないためにも


「おーい、アレン!」


 遠くから誰かが俺を呼んでいる。

 振り向くと、ロベルトが畑仕事の途中らしき格好でこっちへやってきた。


「朝っぱらからまた剣振ってんのか? お前、本当に剣士になるつもりなんだな」


「当たり前だろ?」


 俺は木剣を肩に担ぎながら言った。


「せっかく優勝したんだし、ちょっとは休めばいいのに」


「休んでる暇はねぇよ。もっと強くなりたいからな」


 ロベルトは俺の言葉に「へへっ」と笑った。


「いいな、その意気込み。でもよ、お前がどんだけ鍛えても、リディアちゃんにはまだまだ勝てなさそうだけどな?」


「……ぐっ」


 やっぱりそこか。


 村でもみんな知ってるんだろうな。俺がいまだにリディアに勝てないってことを。


「うるせぇ! そのうち勝つ!」


「そりゃ楽しみだな」


 ロベルトは肩をすくめながら、俺の隣で腕を組んだ。


「でもさ、お前、剣の鍛錬ばっかじゃなくて、もっと別のことにも視野を広げてみたらどうだ?」


「視野を広げる?」


「そうだ。例えば……村の外に出てみるとか?

 お前、近くの町にも行ったことないだろ?」


「確かにないな……」


 ロベルトの言葉に、俺は少し考えた。


 俺の世界は、この村だけだった。

 実は生まれてからずっと、この村から出たことがない。

 出るとしても稽古の息抜きに森の中を少し散歩するくらいだ


 とはいえ、村の外には何があるんだろう?

 正直なところ少し興味はある。

 もっと広い世界を知れば、強くなるヒントもあるかもしれない。


「……ちょっと、考えとく」


「おう、そうしろ。そのうち俺が町に行く用事があったら、お前も連れてってやるよ」


「本当か?」


「まぁな! その時までに、もうちょいマシな剣の腕になっとけよ」


 俺はロベルトの言葉にムッとしながらも、心のどこかでワクワクしていた。



 その日の昼過ぎ。

 俺は剣の稽古を終えてパン屋にお昼ご飯を買いに来ていた。


 「レイナおばさん!いつもの奴を1つ頂戴!」

 

 「はーい、アレンはほんとにこのパンが好きね~

 おまけで新作のパンもつけてあげるわね」

 

 「いいの?ありがとう!」

 

 俺はここのパンが大好きだ。

 日課の訓練が終わった後はここのパンでお昼ご飯をするまでが習慣になっている。

 

「アッレーン!」


 お会計が終わると、店の外からリディアの声が響いてきた。


「なんだよ?」


「暇でしょ?」


「いや、今から昼ご飯食べるところ」


「じゃあ暇してるってことね! 今日は久しぶりに勝負しようと思って!」


「いや、昼ご飯を...」


 言葉を完全に無視された俺は、リディアに袖をつかまれ村のはずれの広場まで引きずられていった。


「それで、勝負って何するんだ?」

 

「ふふん、これで勝負するのよ!」

 

 そう言って、リディアは木剣を構える。


「はぁ? お前、剣士じゃねぇだろ?」


「でも、剣で戦うことくらいできるわよ!」


 うーん、こいつが剣を振ってるところは見たことがないんだが、ちゃんと勝負になるのだろうか?

 

「まあ、いいぜ! 今度こそお前に勝ってやる!」


「ふふっ、それはどうかしらね?」


 リディアが得意げに笑う。


 こうして、俺たちはまたいつものように向かい合った。

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