9話
村に鐘の音が響き渡る。
今日、村では祭りが行われている。
一年に一度、この日は村中が活気に満ち、普段は真面目な大人たちも子どもみたいにはしゃぎ、子供達に至っては、いつも以上にはしゃいでいる。
広場には露店が並び、焼きたてのパンや肉の串焼きのいい香りが漂っている。
「アッレーン! ほら、早く!」
「おい、引っ張るなよ!」
俺はリディアに手を引かれながら、祭りの中心へと走っていた。
「わあ、あっちのリンゴ飴、おいしそう!」
彼女は目を輝かせながら、屋台を次々と見て回る。
「あ!あっちの焼きそばも美味しそう!こっちにはたこ焼きもある!」
「食べ物ばっかじゃねぇか!」
「お祭りなんだから、いいでしょ?」
リディアは楽しそうに笑いながら、さっそくリンゴ飴を手に取った。
「食べすぎると太るぞ…?」
「へっへーん、私、どんだけ食べても太らないから!」
「そうだったな…」
こいつ、昔からめちゃくちゃ食うのに全然太らないんだよな、リディアが食べたものは一体どこに行ってるんだ?
本当に謎だ…
そんな彼女を横目にしながら、俺の目はあるものに釘付けになっていた。
剣の競技大会──。
⸻
この祭りでは、子ども向けの剣の競技大会が開かれる。
木剣を使った模擬戦で、トーナメント形式で勝者を決める仕組みだ。
俺はずっと、この大会に出たかった。
でも、去年までは出られなかった。
大会の参加資格は「8歳から10歳までの子ども限定」。
去年まで俺は年齢が足りず、出場資格がなかったのだ。
だからこそ、今年が俺にとって初めての挑戦になる。
「お、アレン。やっぱり出るのか?」
声をかけてきたのは、農家の倅、ロベルトだ。
ロベルトは現在10歳、すでに農家の仕事を手伝っていて、身体も大きい。因みに去年の優勝者だったりする。
「もちろんだ。剣士になるなら、こういう勝負には参加しないとな」
「へへっ、まぁ、せいぜい頑張れよ」
ロベルトはニヤリと笑う。
「てかお前、今年が初参加のくせに、優勝する気なのか?」
「毎日鍛錬してるからな、同年代に負けるつもりはない!」
「でもお前、リディアちゃんに負けてなかったか?」
「あいつは別!剣での戦いではってこと!」
「ふーん? まあ楽しみにしとくわ」
ロベルトは肩をすくめ、会場の方へ向かっていった。
「……ふっ、やってやるさ」
俺も木剣を握り、競技会の準備に向かった。
⸻
そして、競技大会が始まった。
試合はトーナメント形式で、一対一で戦い、相手を倒せば勝ち進める。
俺の初戦の相手は、村の同年代の少年だった。
「よし、いくぞ!」
木剣を構え、相手の動きを見る。
今までの稽古で培った動きで、しっかりと相手の攻撃を避けながら反撃を狙う。
相手の隙をつき、一気に踏み込んで──。
バシッ!
「おお、アレンの勝ちだ!」
見事な一撃で、俺は初戦を突破した。
「やった!」
リディアが遠くから手を振っている。
その後も試合を重ね、俺は勝ち進んでいった。
⸻
そして、ついに決勝戦。
相手は、やはりロベルトだった。
「へへっ、まさか決勝で当たるとはな」
「……お前にも絶対勝つ!」
「面白ぇ……勝てるもんならやってみやがれ!」
二人とも木剣を構え、息を詰めるような緊張が走る。
そして、合図と同時に──
「はあっ!!」
互いに、全力でぶつかり合った。




