第十八話「サン」
シジマさんの工房はあの時と変わらない。まずは掃除から始めることにした。
ある程度片付いたところで、サンを作業台に寝かす。気持ち良さそうに寝ている犬にしか見えないが、こいつは機械だ。不思議な気分だ。
作業に取り掛かる。
工房を掃除している最中にサンの設計図を発見した。設計図を参考にすればそう時間はかからないだろう。とても助かった。
スクラップ置き場と工房を行き来し、順調に作業を進めていく。自分の腕前が向上していることを実感するとやはり嬉しいものだ。
休憩のタイミングにはルーナが軽食を運んでくれ、一緒に食事をした。彼女の料理はとても美味い。ルーナはぼくの作業の様子を見守ったり、椅子に座って本を読んだりしていた。そんな生活をしばらく送っていた。
サンが目を覚ますことはなかった。
やれる限りのことはした。もしかしたらいつか目を覚ますかもしれない。
今ではないだけで、いつか……
ルーナは何も言わずぼくを抱きしめてくれた。サンの冷たい感触とルーナの体温の差を感じ、余計に悲しくなった。
二、三日ルーナと一緒に過ごし、ぼくらは冬眠室へ。
両親やサトルの寝顔を確認し、ぼくも自分の寝床に入る。ちゃんと修理した。今回は本当に長期間の睡眠に入る。ルーナも寝床に入っている。
みんなを起こすような大きな声で、
「おやすみ」
と叫んだ。彼女も、
「おやすみ」
ぼくに負けないくらいの声で叫んだ。
三年の月日が流れた。
ぼくはルーナを起こした。彼女は眠そうに目を擦っていた。
眠っていた人類は目を覚ました。