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WATER HEART  作者: ふる
第一章 転移
8/9

-世界-



襲い掛かってきた鳥を始末し、休憩したことで大分時間が立ってしまった。

夜遅くになる前にジャングルからでなければ、獣との遭遇率が多くなり、戦闘になる可能性が高まる。

その可能性を考慮し、すぐに広場から抜けて走ることを選択した。


タッ、タッと苔の生えた根を踏まぬよう、猫の如く静かに森を走り続ける。

外へと移動し続ける際に、忍者物のヒーローのように木の上を跳躍できるかと試してみたことで

人間とは思えない速度で跳躍が出来ることも判明した。

ただ、足の色んな所に力をいれたせいか、革靴の側面周囲の接合部が壊れている。


今の状態で走り続けていれば、靴全体の接合部分が衝撃で裂け、

縫い合わせた糸が解けることで革靴を失うだろう。

こんな事になるなら丈夫な靴を日ごろから履いておくべきだった。

出社時に安物の革靴を履いていた訳ではないが、こんな道を走るために革靴は製靴されていない。

何れにしても、山用の丈夫な靴以外だったら壊れるか。


木々を避けて走り続けながら、色んな事を考える。

さっき戦闘したダチョウみたいな鳥は、本当に地球に存在するものだろうか。

ネットサーフィンや動画サイトでの暇つぶしで世界の獰猛な動物を見ることもあった。

しかし、あんな派手でデカい鳥が出てきたのを見たことはない。


それに、、この目の前にある木は地球に存在するんですかねえ…

目視でその存在を確認した俺は足を完全に止めた。


目の前には大鳥の嘴と同じ蛍光緑色の葉が見事なまでに広がり、

蛍光ピンクに光る大粒の実を数個吊るした神聖さすら感じる針葉樹が鎮座していた。

木自体は中木で、そこまでの大きさではないものの、薄暗い森では非常に目立っている。

日が落ちれば、一際目を引くこと間違いない。


「ピカピカし過ぎだろ。 こんな木、世界のどこにもねえわ!」


薄々と感づいてはいたが、今いる場所が地球ではないと完全に確定した。

地球ではない、似た星の何処かに飛ばされたのだろう。

見たことも聞いたこともないスピリチュアルな木を見せられ、水を操ること体験した現状では

違う星に来たから霊的な木が存在し、違う星に来たから超常現象が起こせると考えた方が妥当だと思える。



「それにしても、あの実とか食べれたりするのか?

ピンクでちょっと気持ち悪いけど…」



目を細め、遠目で光る実を見てみると、苺のように実の周りに粒がついているのが見える。

今まで日本で生きてきた経験から推測すると、確実に毒が入ってそうだ。

それにしてもお腹減った。あんな不気味な実を見て食欲が減るかと思ったがそんなことはなかった。

走りながら自分で出した水飲んでごまかしてきたけど、このままじゃ餓死する。

早急に森の外を目指したほうがいいだろう。


周りで一番大きな大木を見つけると力任せに腕を使って木に上る。

人一人乗っても折れることのない丈夫な枝を上り上げ、

てっぺんに行くと茂った葉から顔をだして空を確認した。


あんだけ蒼かった空は鉛色となっており、空気が淀んでいた。

直ぐにでも雨が降るのかもしれない。

雨に、夜に、森か、最悪だな。

枝を飛び降りながら地面に着地すると、奇妙な木を後ろに本気で駆け出した。



       ◇◇◇◇


急いだおかげか、林のような場所に移動することができた。

転ぶことも考えず、本気で森を走ったこともあり、流石に疲れた。

いつも通りに右手から水を出して水分補給を行い、両手から水を出して顔も洗った。



「それにしても、また景色が大分変わったな。」



周りを見渡すと枝が細長く、登れなさそうな中木が一律に立ち並んでいる。

中木は葉が少なく、葉と葉の間に隙間がある為か、常に空模様が眺めた。

幸いにも雨がふることはなかったが、かなり暗くなってきた。


薄暗くなった空を眺めていると、後ろからドタドタとうるさい足音が聞こえる。

振り向くと、木の陰に半身を隠しながら茶色の何かが迫ってきた。

足を止めて構えていると四足歩行の動物が表に現れる。



「なんだコイツ!? キモ!!!」


薄暗いせいもあり、割と近くで存在を確認する事となった。

イノシシのような毛深い体付きをしながら、白と茶色の斑模様になっている羊の顔。

顔に牙など何もついてないし、結構小さめ。めちゃくちゃ弱そうだ。

日本で見たことのある生物の合体ということもあり、違和感しか感じない。



「ンフッ、ンフッ、グィーポ、グィーポ……」



鼻をならした後に息を吐きながら、目の前の可笑しな生物が変な鳴き声を鳴き始める。

その後、急に口をもごもごし始めると何かを勢いよく吐き出した。

吐き出した塊が地面に転がる。どこに吐いたか薄暗いせいで分からないが、近くに転がった。

毒を警戒し、バックステップで少し距離を離すも、その塊の効果が発揮された。



「くせぇえええええええええ! おぇええええええええええ!

おヴぇ、おヴエ ……くっつつっううさああああ! 」


吐き出した塊は強烈な異臭を発し、吐き気を催す。

硫化水素臭と腐敗物、ニンニク、放置した台所の生ゴミをブレンドしたかのようなにおいであった。

急いで更に後退するが、その生物は前進して、自慢げにもう一度鼻をならし、同じ鳴き声を上げる。



「ンフッ、ンフッ、グィー…」


「…コロス」



その鳴き声が聞こえると同時に、右腕から水をすぐに放出させ、触手を完成させた。

動物に照準を合わせて、右手を向ける。

消防車の放水をイメージした。水を圧縮させて、放水、あの害獣にあてる。

手の延長線上にある触手から勢いよく、動物に向けて放水された。



「 ギュァ  」



プシューという音と共に水が放水され、動物に直撃する。

バンという音が鳴り、水の勢いで動物は吹き飛んだ。

















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