-救い-
落下している。目が、音が、肌が、頬が、風を感じる。
風が強すぎる。
一瞬の間、気を失っていた。
見下ろすと大きな滝と広がっている森の一部が見えた。
森の木が赤黒い色をしている。不自然だ。
明らかに、日本ではない。こんなジャングルが日本にあるとは思えない。
これは夢だ…夢に決まってる。
こんなこと有り得ないんだ。
「うぁあああああああああああああああああああッ!!!」
鳥肌が立つ程の空気の冷たさ、轟音で鳴る風切り音、感じたことのない浮遊感で
音、視覚、思考がぐちゃぐちゃになる。
空から落ちている。現在進行形でだ。
こんな空から地面に叩きつけられたら、命はない。
絶対に死ぬ。落ちて肉片になって、ジャングルの栄養になって熊にでも食われるんだ。
怖い、怖い、怖い。
体が地面に近づいてくる。顔が引き攣った。
人としての本能が地面に降りることを拒否している。
何も考えられない、現実逃避することしかできない。
目を瞑れば…
「あぁぁあああぁあああ!!!おぉふぅ!!!」
体で木々の枝を突き抜けた後、
固い地面に背中から叩きつけられた。
息がーーーーーできないーーーーー。
人生で初めて感じるほどの痛み、目が霞む。こんな痛みは人生で一度も体験したことがない、、、
霞んだ目で自分の腕を見ると在らぬ方向へ曲がり、骨が飛び出ていた。
体の下には水溜まりができている。
俺は…これで死ぬのか…死にたくないこんな所で…
こんな姿で!!!
強い願いと共に体の至る所から水が溢れてくる。
壊れた腕、動かない両脚を水で包んでいく。
ーーーーーそして、体全体が水で包まれた。
(水で すくうのです
ーーーー で包むのです)
何かが音となって聞こえた。体の痛みが消え、視界が広がる。
俺の腕は?脚は?大丈夫なのか?
ハッと腕を見ると体に纏っていた水がすべて地面へと流れる。
骨が飛び出し、壊れた腕が前の姿に戻っていた。
「 治っている 」
周囲を見渡すと大きな木々生えていた。
真下には夥しい量の血が広がっている。
誰もいる様子はない。
どうなっているんだ。今のは何だったんだ・・・
誰かが俺を救ってくれたのか・・・。