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「聖!」聞き覚えのある声だ。「ここに居たか。」

「父上!」

聖は、言った。

…聖矢さんだ…!

結麻は、ホッと力を抜いた。

そして後ろを見ると、そこにはあの時神主の里で会った、退役神主達が揃って浮いていた。

「皆でいらしてくださったのですか。」

聖が言うと、聖矢は頷いた。

「選べと清輪様は仰ったが、全員が参ると申した。」と、瀧を見て、その場に着地すると、膝をついた。「伊知加様。ご無沙汰致しておりまする。」

10人全員が、それに倣って膝をつく。

瀧は、眉を寄せた。

「だから覚えてねぇの。もうその名で呼ぶことは咎めねぇが、畏まるのはやめてくれ。」

聖矢は、頷いた。

「は。それで、我らは聖達と交代するためにこちらへ参りました。」と、聖を見た。「主らは神社の守りに戻るのだ。後は我ら10人が、伊知加様をお守りする。」

聖は、言った。

「はい。」と、結麻を見た。「結麻、君も足手まといになるだろう。共に行こう。」

結麻は、え、と瀧の腕に抱きついた。

「嫌です!」

え、と瀧は結麻を見た。

「お前な、無理だから。お前は非力だろうがよ。術を知ってるったっていきなり出て来るのか。魔法陣だって、敵と相対してから描いてたら、待ってはくれねぇぞ?」

聖は、言った。

「そうだ、盾の呪文。父上、盾の呪文を結麻が教えてくれました。それが術を防いでくれます。」

聖矢は、頷いた。

「知っておる。我らも大聖からそれを聞いて、覚えて参ったところよ。神達もご存知だ。もしもの時は、それを発動させて何とかしようと話してある。主らも聞いたのだな。」

聖は、頷いた。

「は。それから、三奈が囚われて奥に。恐らく様子から見て、ここの亜津真というリーダーに言いくるめられてこちらへ来ているようで。ですが、結麻があれらの話を盗み聞いたところ、どうやら術を発動させるのに、使うつもりであるようです。後は、神を一人捕らえるだけだと申しておったと。どんな術なのか、結麻にも今は思い出せないようで。」

聖矢は、険しい顔をした。

「…恐らく命を使うもの。そもそもが、その昔最初の巫女を殺した術も、一人の女の命を犠牲にして発動する術であったと伊津岐様より聞いた。ゆえに未だ、巫女は太らねば神と話せぬようになってしまっておる。」

…そうか、あれはその術なんだ…。

結麻は、思った。

なら、女一人と神を使うなんて、いったいどんな大きな術なの?

結麻は、眉根を寄せた。

何か思い出しそう…なのに思い出せない。

「…もう一度、大聖が掛けた術と同じものを私に掛けてくれませんか。」結麻は、聖と聖矢に言った。「その術を防ぐためにも、それの解呪を知らねばいけないのです。私の記憶のどこかにあるのに。それが思い出せないんです。」

聖が、言った。

「…大聖が一度君にそれを掛けたというのなら、もう同じ術は掛けられぬ。」

え、と結麻が驚いた顔をすると、聖矢が言った。

「君という存在が、おかしくなるからだ。頭の中をかき回しておるようなものなのだぞ。しかも、それは前世の記憶なのだろう。一度やった時、それがハッキリして混乱せなんだか。今の自分と昔の自分の区別がつかぬようにならなんだか。それが、二度目となると更に強くなり、悪くすると今の主は消えて、昔の主だけになるぞ。今生の記憶が犠牲になっても良いのか。」

私が私でなくなる…。

結麻は、さすがに言葉を失った。

一度目も、ごっちゃになって混乱し、結の気持ちに押し潰されされそうになったのだ。

確かに二度目は、キツいかもしれない。

「…もういい。」瀧は言った。「結麻を犠牲にしてまでのことじゃねぇ。もう充分思い出してくれたじゃねぇか。盾の呪文があれば、とりあえず弾き返せるだろ。結麻、お前は聖達と帰れ。オレは聖矢達が居るし、奥まで行って三奈の様子を見て、もうヤバいほど腐ってたら諸共ここを焼いて消す。全部なかったことにする。そうしねぇと、オレが来た意味がねぇ。お前は足手まといだ。また何か思い出したら伊津岐に言え。何とかしてこっちに知らせてくれるだろう。これだけの人数が居るんでぇ。なんとかなる。」

結麻は、それでも瀧の腕を強く握った。

「瀧…!でも!」

瀧は、首を振って結麻を引き離した。

「聖、早く連れてけ。結局早くやっちまえば良いんだよ。術を発動させる暇を与えねぇで焼いちまえばいい。早く行け。」

聖は、頷いて結麻の腰を掴んだ。

「では、失礼します。行くぞ、悟、充。」

悟と充は頷いて、そうして各々の父に頭を下げてから、聖と共にそこを飛び立った。

「待って!」結麻は叫んだ。「瀧!」

だが、すぐに結麻と聖達の姿は見えなくなった。

そうして、瀧は言った。

「…行くぞ。この先だ。気配が近付いている。光は出すなよ。」

そうして、一行は進み始めた。

瓦礫の山は、段々に広く隙間を空けて来ているように見えた。


結麻を連れた聖達が外へと出ると、待ち構えていた伊津岐が寄って来て言った。

「結麻!お前な、無茶しやがって!オレ達は本来、人同士のことに手を出せねぇんだぞ?それを…よく聖達に合流できたな。」

結麻は、頷いた。

「はい。あの、人探しの魔法陣があって。」と、懐からそれを出した。「これのお陰で方向がわかりました。でも、伊津岐様、来斗は殺されて埋められて、リーダーらしい亜津真という男が、何かの術の準備をしていました。それには、未婚の女と神が必要らしく、三奈ちゃんが奥で囚われているようです。でも、瀧が言うには自分から進んでここに居るようだと。充さんが、三奈ちゃんは私を恨んでいたから危ないと…そして、ここへ戻って来てしまいました。」

伊津岐は、頷いた。

「お前はここに居て正解だ。中に居てもお前を庇って伊知加も好きに動けねぇ。とにかく、神社へ戻れ。大聖も戻ってる。オレが命じた。」と、聖を見た。「聖、お前も戻れ。現役の奴らは、キリサの血筋を守ることに専念しろ。後は、聖矢達が手伝ってくれる。」

聖は、頭を下げた。

「は。」と、聖は顔を上げた。「こんな時ではありますが、申し上げねばならぬことが。」

伊津岐は、眉を上げた。

「なんだ?」

聖は、頷いた。

「我ら神主の家系は、歴代必ず一人の男子に恵まれて、それを守って生きて参りました。なので、まさかと思うたのですが…美智子が、身籠っております。」

え、とその場の皆が驚いた。

伊津岐は、言った。

「…まじか。美智子は二人目を腹に持ってるって?」

聖は、頷いた。

「はい。こんなことは我らには初めてで、しかし私は美智子と、常に共でありますし、あれが他の男の子を身籠るはずがないのは知っております。何故にと、美智子も戸惑っており、話すのが遅れました。」

美智子は聖と同級生なので、もう38だ。

神主家系でなくても驚くかもしれない。

「…オレにも分からねぇ。まさかと思ってたから、美智子の腹ん中まで見ていなかった。とりあえず、それは後だ。とにかく一度帰ってお前はいつも通りにしていろ。これがどうなるのか分からねぇが、あと二週間で年が明ける。そっちのこともあるだろう。」と、結麻を見た。「結麻の体力が限界だ。早く行け。」

結麻は、伊津岐と話していて、尋常でなくお腹が空いて来るので、目眩が止まらなかった。

聖はぐったりして居る結麻を抱き直して、そうして頷いた。

「は!御前失礼致します。」

そうして、結麻は聖に連れられて、その場を後にした。

意識が遠のいて、もう自分がどこに居るのかも、ハッキリ分からなかったのだった。


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