表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天高く巫女肥えるべきこの世界から  作者:
異世界の巫女
5/337

神との会話

空に浮いていた、神が降りて来た。

「…そうか、お前ら手を繋いでるから。」え、と二人は自分達の手を見る。神は続けた。「お前ら、めっちゃ仲良いだろ。心が通じ合ってるから、そうやって手を握ってたら結麻の見てるものは真樹にも見えるし、聴こえるんだ。それに、真樹から結麻に向かって力が流れ込んでるぞ。お前らの間は、そうやっていろいろ行き来してる状態ってことだ。」

結麻は、真樹を見た。

「…ってことは、真樹ちゃん、お腹空いてない?」

真樹は、首を振った。

「まだ大丈夫。でも、なんか確かに吸い取られてるような感じはしてる。」

神は、ふーんと何かを考えるように顎に触れながら、言った。

「…そうか、だったら話は早ぇ。」え、と二人が神を見上げると、神は言った。「とりあえず、お前と真樹の二人が巫女になれ。真樹だってお前を通したらオレと話せるんだから問題ねぇ。普通、巫女と手を繋いだからってオレが見えるなんてこたねぇが、真樹とお前はそういう絆があったってことだ。こいつが居たら、お前もいきなり死ぬこたねぇからよ。だが、真樹だけに頼るんじゃなく、お前も体力付けろよ。太れないなら筋肉でもいい。鍛えまくってムッキムキになったらそれはそれでエネルギーになるしな。そうしろ。大人の事情ってのがあるんだろ?」

結麻は、ムッキムキになるのは嫌だなと思いながらも、確かに大人の事情があるので、仕方なく頷いた。

「…はい。真樹ちゃんさえ良ければ。」と、真樹を見た。「いい?真樹ちゃんも巫女にならなきゃならないけど。」

真樹は、一瞬黙った。

結麻は、まさか断るんだろうかと不安になったが、真樹は頷いた。

「…分かった。結麻ちゃんがそれで助かるなら。」

すると、神は頷いて浮き上がった。

「じゃあそれで。聖に言っとくよ。お前ら二人を巫女にするってな。てか、別にオレは良いんだけどよー、真樹んとこの親はめんどくせぇやつらだからなあ。あんま好きじゃねぇし、本来親も本殿に入って来て良い事になってるんだが、そっちは遠慮してもらっていいか?」

結麻は、え、と神を見上げた。

「真樹ちゃんのお父さんとお母さんって、神様から見て問題あるんですか?」

神は、渋い顔をした。

「…言いたかねぇなあ。本来巫女なら言ってもいいんだが、真樹の親のことだからよぉ。」

真樹は、黙っている。

結麻は、真樹を気遣って言った。

「…あの、じゃあ良いです。神様が良いように決めてください。」

神は、頷いた。

「そうか。だったら良いように言っとくぞ?」と、更に高く浮き上がった。「じゃあ神社に戻る。」

結麻は、ハッとして慌てて言った。

「あの、神様!」神は、宙で止まってこちらを見る。結麻は続けた。「神様のお名前を、聞いてもいいですか?!」

神は、何を言ってるんだというようなきょとんとした顔をした。

「名前?お前らが言ってるんだろうが。中津国一之宮伊津岐尊(なかつくにいちのみやいつきのみこと)。オレには元々、名前なんかねぇし。」

長っ!

結麻は、顔をしかめた。

「…なんてお呼びしたら良いですか?」

神は、うーんと面倒そうな顔をした。

「何でもいいけど。そもそも、神って呼ばれるのも何でだろって思ってるぐれぇなのに。」と、真樹をチラと見た。「お前は真樹から吸い取ってるから平気だろうが、真樹は二人分持ってかれてるからそろそろしんどいぞ。なんでもいい、聖はオレを伊津岐って呼ぶぞ?」

え、と結麻は真樹を見た。

確かに、真樹の顔色が悪くなっている。

結麻は、急いで頷いた。

「では伊津岐様!ありがとうございました!よろしくお願いします!」

伊津岐尊は、頷いた。

「ま、よろしく。どうせ結花みてぇにすぐ見えなくなるんだろうけどよ。」

そして、そのままスッと消えて行った。

途端に、真樹がその場に膝をついた。

「!!真樹ちゃん!」

結麻は、慌てて真樹を支える。

真樹は、弱々しく笑って、言った。

「結構きつかったかも。」と、おむすびの包みを見た。「それ、もらっていい?」

結麻は、急いで頷いてそれを差し出した。

「食べて食べて!ごめん、全然気遣えなくって。」

真樹は、そこに座っておむすびを齧りながら、言った。

「大丈夫だよ、私太ってるから。このために貯め込んだぜい肉だもんね。結麻ちゃんだけだったら、きっとすぐに倒れてたよ。これで助けになるなら、私は嬉しいよ。」

助けになるなら…。

結麻は、ハッとした。

そういえば、真樹は一瞬、伊津岐からの問いかけに応えるのを躊躇ったのだ。

もしかして、結麻のために無理をしたのではないだろうか。

結麻は、真樹の隣りに座りながら、言った。

「真樹ちゃん、もしかしたら、無理させたんじゃない?あの、巫女になるの。本当は嫌だったんじゃ…。」

真樹は、おむすびをゆっくりと味わいながら、伊津岐の去った空を見上げて、答えた。

「…あれはね。私が巫女になるって言ったら、多分お母さんたちが喜ぶんだろうなって。」結麻が、眉を上げると、真樹は苦笑した。「ほら、言ったでしょ?大人って汚いんだ。私はみんなのためにって頑張って食べて太ったのに、伊津岐様が見えなかったら厄介者扱いされたでしょ?今は妹を巫女にってそればかりで、私のことなんて放りっぱなし。私が巫女になるって神託が降りたと知ったら、また手の平を返して真樹真樹って言うのかなって思うと、なんか嫌だなあって思っただけ。できたら、もう会いたくないなあ。」

それには、結麻は言った。

「あ、それ大丈夫よ。」え、と真樹が目を丸くすると、結麻は続けた。「だって、巫女は神社に住むんだよ?巫女殿があるじゃない。あそこに、巫女に選定されたら住むってお母さんが言ってた。家族は会いに行けば会えるけど、基本的に他の人は会えないんだって。今、伊津岐様が真樹ちゃんの両親に会いたくないって言ってたから、多分真樹ちゃんの両親は入れないの。会いたくなかったら会わなくて済むってこと。」

真樹は、みるみる目を輝かせた。

「本当?じゃあ、もう嫌な思いをしなくてもいい?」

結麻は、頷いた。

「うん。本当は巫女に選ばれたらそのまま巫女殿に進むんだけど、今回はこんな風に決まっちゃったから入るまで時間が掛かるかもしれないから、その間だけ我慢したら大丈夫だと思うよ。今頃、伊津岐様が聖おじさんに話してくれてると思うんだけどな。なんなら、このまま神社に行く?」

真樹は、少し考える顔をした。

「…そうね、取りに帰る物もないし、このまま行ってもいいかな。」真樹は、立ち上がった。「行こう、結麻ちゃん。伊津岐様、多分もう聖のおじさんに話してくれてるよ。」

結麻は、同じように立ち上がったが、いきなりに家を出て来たので、着物も何も持って来ていない。

真樹は取りに帰る物もないと言っていたが、突然に自分達二人が押し掛けて、巫女殿に着物はあるんだろうか。

「…待って、真樹ちゃん。着物とか、二人分あると思う?ちょっとは持って来た方が良いんじゃない?」

真樹は、首を振った。

「だったら、結麻ちゃんは取りに帰っていいよ。私は、家に帰ってもし、知らせが届いてたらお父さんとお母さんがめんどくさいなって思うから…。あの、伊津岐様も言ってたけどね、私の両親は結麻ちゃんの両親みたいに子供想いの親じゃないんだ。私も最近知ったけど、自分のことばっかり考えてるの。私を巫女にしたかったのも自分達のためよ。今回だって、結麻ちゃんとあれだけ仲良くしろって言っておいて、評判が落ちたらすぐに関わるなって言って来たり…ほんとにもう、愛想が尽きてるんだ。できたらもう会いたくないぐらいよ。」

そんなにか。

結麻は、また顔が険しくなっている真樹に慌てて頷いた。

「真樹ちゃんがそう思ってるんならそれでいいと思う!私も一緒に行くよ。着物はまたお母さんに持って来てもらうからいいや。だって、お母さんは巫女だったんだし、何が必要なのか知ってると思うから。」

真樹は、頷いた。

「うん。そうだよね、結麻ちゃんのお母さんは巫女だったんだもの。じゃあ、一緒に行く?無理しなくてもいいよ。」

結麻は、首を振った。

「ううん、大丈夫。行こう!神社に。」

そうして、二人は頷き合って、中津国一之宮へと向かった。

きっと、伊津岐が先に聖に話しておいてくれているはずなのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ