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天高く巫女肥えるべきこの世界から  作者:
初めての遠出
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行方

大聖は、あちこち港町で聞いて回ったが、きちんとした村から来た、身なりの良過ぎる大聖や警備兵たちは警戒されて、大した情報は得られなかった。

この辺りは漁村のようで、南之国と取引があり、他の集落とは違って、比較的豊かに暮らしているらしい。

とはいえ、神が守る土地とここでは、全く雰囲気も空気も違い、治安も良くないのがチラと見た路地裏の様子からも分かった。

…こんな場所では、巫女のような隔離されて育った人には、生きて行くのも難しいだろう。

それは、佐伯も含めた全員が思ったことだった。

大聖は、一晩かけて必死に結麻の気を探ってあちこち広範囲に気を放ったが、しかし結麻の気は、欠片も返ってこなかった。

…やはり、結界があるのだ。

大聖は、息をついた。

恐らく、父ならば他人の結界を探すための方法を知っているのだろうが、自分はそれを知らない。

まだ、そこまで学んではいなかったのだ。

…井の中の蛙だったな。

大聖は、不勉強な自分を恨んだ。

このままでは、無意味に時が過ぎてしまう。

結麻が、仮に凌辱されてしまったとしても、もうこれだけの時間が経っているのだからなかったことにはできないだろう。

こうなったら、確実な方法を探して、仕切り直して行くしかない。

大聖は、言った。

「…このまま、退役神主の里へ行く。」え、と佐伯が驚いた顔をするのに構わず、大聖は続けた。「祖父に、結麻の捜索を手伝ってもらうしかない。幸い、ここから退役神主の里は目と鼻の先だ。馬を手に入れてここを発てば、恐らく明日には到着する。そこから、最初の旅館に置いて来た警備兵たちに指示を出して罪人を中之国か西之国の牢へと繋いでもらい、残して来た荷物と共に、船でこちらへ向かってもらおう。ここまで時間が経つと、焦っても仕方がない。オレはまだ未熟で、できないこともあるんだ。祖父なら、きっと結麻を探し出せるはずだ。」

佐伯は、大聖の苦渋の決断を、感心して聞いていた。

なかなか、そんな決断はできないのだ。

なので、頭を下げた。

「はい。では、すぐに人数分の馬を手に入れられるように、手配いたします。」

そうして、大聖たちは退役神主の里へ向けて、結麻を置いて旅立つ事になったのだった。


碌に寝ていない状態でここまで来た大聖を気遣い、佐伯は馬と、馬車を準備して、馬車に大聖を乗せて、その中で休んで行けるように気遣った。

そのお蔭で、大聖は最初、眠ることなどできないと思っていたのにも関わらず、何とか移動中は、しっかりと眠ることができた。

途中、休憩を入れながらもしっかり進んで行った結果、大聖が言った通り、次の日の朝には、退役神主の里へとたどり着いた。

そこは、必ず神主の家系の者か、巫女と共にでないと入ることができない場所で、そこに居る多くの神主たちの力で、何重にも結界が張られ、そこに穏やかに守られて存在した。

どこの国にも属していないが、神に守られた村よりむしろ、平和で穏やかな場所だった。

大聖が、そこへ警備兵たちと共に到着して、結界の入り口である鳥居の前で止まった馬車から降り立つと、中から懐かしい、祖父の聖矢が出て来た。

「大聖!よく来たな。」

大聖は、驚いた。

祖父の顔が、父の聖とそう変わらないように見えたのだ。

父は今37歳で、祖父は今56歳のはずだった。

二人とも、18歳で結婚し、19歳の時に息子を持ったからだった。

神主は年を取らないとは聞いたが、それは言葉のあやで、事実ではないと大聖は思っていたのだが、目の前の祖父はどう見ても56ではなく、父よりちょっと年上かなという程度の若さだった。

幼い頃に別れたので、その時から全く印象が変わっていないのだ。

大聖は、言った。

「おじい様!最後にお会いしたのは10年前ですのに、全く変わっておられないので驚きました。」

聖矢は、頷いた。

「だろうな。ここに居るヤツはみんなこんな感じだ。」と、キョロキョロした。「それで、噂の巫女はどこだ?絵姿がここにも伝わって来て、なかなかに美しい娘であったし会うのを楽しみにしておったのに。」

大聖は、言った。

「おじい様…実は、国を出て一日の位置で旅館に泊まった時に、賊に連れ去られてしまい…追ってきましたが、どうやら賊も能力者のようで…。結麻の気配を、辿ることができなくなりました。結界内に入ったように思います。」

聖矢は、途端に笑顔を崩して、険しい顔になった。

「…結界か。我ら神主の結界とは違い、あれらの結界は探すのが難しい。性質が違うからな。能力者は神から能力を授かるが、魂が穢れていたらその能力は持続できぬはずなのだ。それを持続できておるのに、巫女を攫うとは…どうにも解せぬのだがな。」

大聖は、訴えるように言った。

「ですが!現に攫われておるのです。」

聖矢は、ふーんと考える顔をした。

「…分かった。だが、しばし時を取るぞ。今も言うたように、神主ではない能力者の結界は、厄介なのだ。探すのに時が要る。こちらの放つ探索の気に掛からないのでな。神であられても、目視で探さねば見つけにくいと仰っておった。大体の場所が分かれば、助かるのだがの。」

大聖は、頷いた。

「はい。ここから北東へ少しの位置。小さな港町に、結麻を乗せて来たと思われる船が係留されていました。そこからの足取りが、全く掴めておりません。」

聖矢は、頷いた。

「ならば、警備兵たちは中へ。」と、鳥居の中へと足を向けた。「ここには、訪問者用の建物があるので、そこで待っているが良い。私と大聖で、巫女を探して参る。」

佐伯は、驚いたように言った。

「我らもお手伝い致します。遊んでいるわけにはいきません。」

だが、聖矢はチラと佐伯を見て、言った。

「我らだけの方が速いこともある。主らはここで、事務仕事をこなすが良い。その間に、我らは巫女を探して参る。分かったの。」

佐伯は、まだ不満そうだったが、仕方なく頷いた。

「はい。では、そのように。」

鳥居から結界内へと入ると、入ってすぐの脇には、平屋の長い建物があって、その脇には馬小屋も完備されていた。

そして、小道を奥へと視線を向けると、点々と間を空けて、大きな屋敷が点在し、清々しい風通しの良い里になっていた。

聖矢は、言った。

「そこの建物を、好きに使っていい。お前達が来るのは、皆に知らせてあるので誰が来ていると皆に不審がられることはないから。」と、大聖を見た。「大聖、疲れておらねば少し、外へ出て気を探ろう。巫女の気配を、教えてくれぬか。」

大聖は、頷いた。

「はい。では、外へ。」

佐伯達が、馬を馬小屋へと移動させて自分達も部屋の確認へと移動している中、二人は鳥居から、外へと出たのだった。


外へ出てすぐに、聖矢は浮き上がった。

「大聖。行くぞ、一刻の猶予もないのだろう。もう、どれぐらい行方不明になっておる。」

大聖は、同じく浮き上がりながら答えた。

「は。もう三日目になります。」

聖矢は、飛びながら息をついた。

「噂の通り美しい娘なら、今頃心の痛い事になっておるやもしれぬぞ。村とは違い、街道沿いは無法地帯だ。哀れな事になってしもうたな…巫女を失うのは、中之国にとっても大きな損失ぞ。」

大聖は、下を向いて答えた。

「は…。」

聖矢は、息をついて空高く上がった。

「そら、もっと高度を上げるぞ。低い位置を飛んでおったら、誰かに見られて大騒ぎになる。高く飛んでおったら、鳥かぐらいにしか思わぬから。大勢に見られることだけは、避けねばならぬ。我らの血筋の祖先の事を、知られぬ方が良いからな。」

大聖は、祖父について高く空へと上がりながら、今結麻はどうしているのだろうと、心が痛くなるような気がしていた。

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