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天高く巫女肥えるべきこの世界から  作者:
異世界の巫女
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試行錯誤

一斗缶は、すぐに手に入った。

その丸い蓋の部分にピッタリフィットする竹を大聖が見つけて来てくれて、それを差して準備すると、中に何本かの切った細い木々を詰め込んだ。

その上で、また煙突のついた蓋をしっかりと閉じて、竈の上に鎮座させ、着火だった。

着火は大聖が居れば一瞬なので、火は瞬く間に一斗缶を包みこんだ。

「…うわあ…。」

何やら、ツンとした匂いのする煙が煙突から漏れて来る。

大聖は、それを見ながら言った。

「…あれが二酸化炭素とかいうのと、その他なんかわからない成分か?」

結麻は、頷いた。

「うん、多分。水素とかもかな…あんまりそこには詳しくないの。でも、このまま1時間ぐらい待ったら、そういうのが全部無くなって煙が透明になるはずよ。そうしたら、火から下ろして冷めるのを待つ感じ。」

大聖は、竈の前の石に座った。

「…そうか。じゃあそれまで火の番をしなきゃな。火力が落ちたら駄目なんだろ?」

結麻は、頷いた。

「うん。じゃあ大聖、ここを任せていい?私、あっちのツボを見て来るよ。」

大聖は、頷いた。

「ああ、任せとけ。」

大聖の態度が、格段に柔らかい気がする。

結麻は、黙って後ろで聞いている、真樹を見て言った。

「じゃあ真樹ちゃん、あっちの窯を見て来よう。朝大聖と二人で着火して来たんだ。」

真樹は、頷いた。

「うん。」

何やら、真樹の口数が少ない気がする。

だが、結麻はそんな日もあるかと気にせず、二人で窯の方へと歩いて行った。

窯の方は、煙突からの煙の勢いは弱かった。

「あれ?」結麻は、ハッとした。「ちょっと待って、よく考えたら着火した方も閉じちゃったら、火が消えるじゃない!」

結麻は、うろ覚えだから、と慌てて入口の蓋を避けた。

思った通り、中の酸素がなくなった時点で、火は綺麗に消えていた。

「あちゃー。」結麻は、ため息をついた。「間違ったかー。こっちは開けて置いて、奥の方をしっかり閉じて置かなきゃだった。」

真樹は、まだ燃えていない薪もある窯の手前を覗いて、言った。

「…やり直し?」

結麻は、頷いた。

「うん。私が悪いよ、これじゃ駄目だよね。伊津岐様は間違ってないと言ってたけど、使い方を間違ったんだ、きっと。せっかく真樹ちゃんにも大聖にも手伝ってもらったのに…ごめん。」

真樹は、首を振った。

「大丈夫、気にしないで。そんなこともあるよ。また一緒に頑張ろう?」

真樹は、元気付けようとしてくれているのか、明るく微笑んでそう言ってくれた。

結麻は、感謝しながら頷いた。

「うん。ありがとう、頑張るよ。また手伝ってね。」

真樹は、頷く。

「じゃあ…とりあえず、これを報告しに行かなきゃだね。森に木を取りに行ったら、その間にあっちの炭はできちゃうんじゃない?」

結麻は、ため息をついた。

大聖に、駄目でしたというのが心苦しいのだ。

だが、そんなことも言っていられない。

結麻は、頷いた。

「うん。大聖に報告してから、また新しい木を拾いに行こうか。どちらにしろ、窯が冷えないと触れないしね。」

真樹は、明るく言った。

「だね。時間はあるんだし、何度でもやり直したら良いと思うよ。気落ちしないでね。」

結麻は、そんな真樹に感謝して、二人でまた台所へと向かったのだった。


大聖は、すぐに戻って来た二人に、振り返って言った。

「…どうした?」

何やら、結麻の顔が暗い。

恐らく、良くない報告だろうと大聖は気取っていた。

「あの…やり方間違えたみたい。」結麻は、説明した。「ほら、竈はそうやってこちらに口が開いていて、酸素が供給されているから燃え続けるでしょう?私、燃やすべき方の入り口も、塞いでしまっていたの。形は間違ってないんだろうけど、使い方を間違ってて。でも、どうやったら良いのかって今、頭の中で考えてる。」

大聖は、ああ、と頷いた。

「確かにな。じゃあ、火は消えてたってことか。」

結麻は、息をついて頷いた。

「うん、そう。どう使ったら良いのかな…。」

大聖は、少し考えた。

「そうだな…オレが理解した感じ、この一斗缶と竈と同じようになればいいわけだろ。ってことは、あの竈自体を一斗缶にして、その下から燃やせるようにしたらいいわけだ。」と、細い枝で、土間に絵を描いた。「こう、壺があるわけだろ。で、この壺をまるまる一斗缶代わりにして、底をまた土で作る。」

結麻は、しゃがみ込んでそれを見ながら、ウンウンと頷いた。

「で、それで?火はどうするの?」

大聖は、答えた。

「もう出来てる窯があるし、移動は難しい。だから、下に穴を掘る。」大聖は、言ってその絵の下に穴を書いた。「そのままだと崩れるかもしれないから、角石を壁にしながら掘り進めて、支えにして下から熱したらどうだろう。上はそのまま、下に竈を作る感じだ。ちょっと時間は掛かるけどな。一からまた土を持って来てってやって別の窯を作ってたら、材料を集めて来るだけで大変だろう。昨日の作業が無駄になるしな。」

結麻は、感心した顔で大聖を見た。

「大聖、天才!あなた、ほんとに頭が良いわね!」

大聖は、眉を寄せた。

「今頃気付いたのかよ。」と、横を向いた。「とりあえず、すぐにはできない。先にこっちが上手く行くのかどうか見てからにしよう。さっきから、だんだん上から出てる煙が少なくなってるんだ。もう少ししたら、火から降ろして冷めるのを待とう。その間に、窯の底を作る土を取って来て作業をしようか。今中に入ってるのも、外へ出さなきゃならないしな。」

結麻は、頷いた。

「うん。まだ熱がこもってるから、もう少し待ってからになるけど。土を取って来てたら、冷めるかな。」

大聖は、こちらを見ずに火をじっと見て、頷いた。

「そうだな。できる事からやって進めて行こう。」

結麻は、そんな大聖の横顔を見つめた。

…同い年なのに、大聖ってほんとにしっかりしてるなあ。

結麻は、思った。

結麻は前世は24歳だったので、その意識のはずなのだが、大聖はその時の自分よりずっと、大人びているような気がする。

それに、あまり気にして見たことがなかったが、大聖は聖によく似ていて、とても精悍な凛々しい顔立ちをしていた。

…伊津岐様も美しいお顔だったなあ。

結麻は、余裕がなくてそんな風に考えて見ていなかった今生の皆の顔を、改めて思い浮かべていた。

24歳の記憶の方で全員の顔を思い浮かべると、自分はかなりのイケメンに囲まれて生活している。

そう思うと、急に意識して来て、結麻は居心地悪く、黙って竈の前で一斗缶を見つめることしかできなかった。


無事に竹筒の上から出て来る煙が透明になり、恐らくもう、中では木々が炭化しているはずだった。

一斗缶を竃の上から土間へと、慎重に下ろした大聖は、言った。

「…これで、冷めるのを待つんだな?」

結麻は、頷く。

「そう。冷めてから出した方が黒い炭になるって見た気がする。」

慌てたら白くなったような。

結麻だって、一度死んでその前の記憶なのだ。

そこまでハッキリ覚えているわけではなかった。

大聖は、ため息をついた。

「…じゃあ、これはこのまま置いておいて、お前の作った窯の中を見て来るか。冷めてたら中身を掻き出して、底を作る準備を始めておこう。まあ、そこまでやっても、この一斗缶の中の木が炭とやらになってなかったら終わりなんだけどな。」

結麻は、言った。

「それは大丈夫と思う!」

だって、ほんとに簡単に出来上がってたから。

結麻は、それを動画で見た記憶が、脳裏にまざまざと浮かび上がるのを感じた。

大聖は、呆れたように結麻を見た。

「はあ?なんだよ、その自信。まあいいか、とにかく窯へ行こう。」

結麻は、頷いた。

「うん!行こう行こう!」と、真樹を見た。「真樹ちゃんも行くよ!」

大聖は苦笑して、張り切って前を行く結麻の後ろを歩いて行ったが、真樹は少し遅れて、静かに黙ってついて行ったのだった。

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