昼
昼を過ぎた頃、大樹が疲れた顔で神社の神主の屋敷へとやって来た。
佐伯も報告のためにここへ来ていたが、神主の屋敷の前には来られても、中までは入れないので、外で待機している。
ちょうど午前中の儀式が終わったところで、聖は二人を拝殿へと呼んだ。
「ご苦労だったな、佐伯、大樹。それで、事務処理はどうなっている。」
佐伯が答えた。
「は。所長には事のあらまし、とはいえ襲撃をあらかじめ知っていたことは伏せましたが、外の者達が二人を襲撃したようだ、とだけ報告致しました。尋問は所長自ら立ち会うとおっしゃったのですが、穢れが酷いので神社の牢へ繋いである、と報告し、尋問は聖様に一任するということに落ち着きました。」
大樹が、横から言った。
「襲撃された咲也さんが、気丈にも登庁していて、自ら尋問したいと長らく納得してくれずで。説得するのに佐伯とオレが大変だったんだ。それでこんなに時間が掛かってしまった。」
佐伯は、頷いた。
「所長の春樹さんが説得してくれて、なんとか落ち着きました。神社でないと対応ができないほど穢れているんだ、と何度も言って、やっと納得していました。どうやら、神社で対応しなければならないほど、狂っているのだと思ったようです。」
聖が、言った。
「…午前中の儀式には、忠臣の息子の忠興と、妻の千紗、娘の千夏が来ていたが、忠興から早急に私に面会したいと忠臣が言っている、とその時に聞いたのだ。伊津岐様の浄化が直接忠興と千夏に届いた途端、あの二人は確かに伊津岐様を見上げた気がする。つまりは、もしかしたら能力者なのかも知れない。それが、浄化可能な穢れだけだったので、あの二人の能力は戻って来ているのではないか。それも気になるので、どうあっても忠臣と忠興、千夏に面会したいと考えている。」
佐伯は、頷いた。
「では、迎えに参りましょうか。午後の儀式が終われば、もう儀式が終わるでしょう。その時刻に合わせて、馬車で向かいましょう。」
聖は、頷いた。
「頼んだぞ。咲也に、見張りは付けているか。」
佐伯は、頷いた。
「はい。また襲撃があってはならないと表向き護衛のていで、屋敷に三人。動きがあればすぐに連絡が来るようになっています。」
聖は、また頷いた。
「ならば良い。とはいえ、護衛が付いているのを知っているので、動きはないだろう。今、あやつは疑われてはいけないのだ。が、穢れが酷いので予測のつかぬ事をして来る可能性がある。それらには、重々気を付けるように言っておくように。」
佐伯は、頭を下げた。
「は!では御前失礼致します。」
そうして、佐伯は出て行った。
正月からいきなり呼び出されて働き詰めだが、文句も言わない忠節ぶりだ。
やはり佐伯は頼りになる、と大聖は思って見送った。
大樹が、疲れ切った顔で息をついた。
「夜中に叩き起こされてあんまり寝てないんだ。ちょっとどっかで寝ててもいいか。社務所を借りる。」
聖は、苦笑した。
「使えばいい。とはいえ、今日も札と守りを買いに来る人々でごった返しているから、ゆっくり眠れないだろうがな。」
大樹は、頷いてそこを出て行った。
聖は、それを見送ってから、大聖を見た。
「…大聖。結は、それなりに励もうとしているだろう?もう、あからさまに嫌な顔をするのはやめないか。空気が悪くなる。」
大聖は、下を向いた。
「はい…申し訳ありません。」
聖は、息をついた。
「ここは、結の知識も重要であるし、上手くやって行かねばならないのだ。神社を追い出すなどと脅してはならないぞ。そんなことは、あの知識がある限りできぬ相談なのだからな。ここを出ると言い出したら、私が結の記憶を消さねばならなくなる。そんな後味の悪いことはしたくない。記憶を奪うこと、つまりは生きる手段を断つことだ。私にはできない。が、命じられたらやるしかない。分かったな。」
大聖は、頷いた。
「はい。肝に銘じます。」
だったら良いが。
聖は、立ち上がった。
「食事に行こう。午後の儀式を済ませて、まだやることは山積みだ。」
そうして、大聖は聖について、拝殿を後にした。




