力を持つ者9
人が集まりだしたので、全員で離れていくが、俺たちの後ろに子供が3人ついてきている。
子供たち3人が、なんだかワクワク顔でついてきているので、しょうがなく足を止める。
俺たちは歩きを止めて、子供の方を振り返るが、子供も驚いて建物の角に隠れてしまった。
「こっちにおいで」とコリン。
その手にはお菓子が載せてある。
子供たちは顔を見合わせて、おずおずと近寄ってきた。
その様子に、普通なら、微笑ましい感じがするんだが、俺は、どうしてか緊張感を拭い去れない。
緊張感を拭い去れないので、自分でもどうしてかわからないが鑑定魔法を行使してみた。
その結果、3人のうち、一番、小さくて可愛い女の子の反応だけが違った。
「コリン、離れろ」と言うと俺は、他の女の子と男の子の横に転移して、二人の腕を取った。
何とか転移で子供二人を引き離すことに成功………した、はずだったが、その子供二人から、俺はナイフを突き立てられる。
「くっ………」と言いながら、ナイフが刺さった二か所を押さえる。
なんとか、立っているが………
俺の状況を見て取ったメンバーの動きは素早かった。
ジャネットとアレクが、男の子を取り押さえている。
ロゼッタとパトリシアが女の子を取り押さえている。
「お前は、何者だ?」と俺の声は少し かすれている。
「はっは、おれか、俺様はウルフ様配下、直属の四天王の一人、アドルファスだ。」
「アドルファス?」
「そうだ。勇者よ、そろそろ目がかすみだしただろう?」
「毒か?」
「そうだ、それもウルフ様が作った特性の物さ」
俺の体がフラフラしだしている、立っていられない。
そこに、俺の体を支えようと、服に血が付くことも構わずに、アリシアとステラが、両側から体を支えてくれる。
体を支えながら、俺は息が荒くなり、地面に崩れ落ちる。
「はぁ、はぁ、はぁ………」と地面に手をつく。
「勇者も、これで終わりだな」とアドルファス
ジャネット「こんな、ことくらいでご主人さまが傷つくものですか」
「何を強気なことを言っているんだ、現に、そこに死にかけがいるじゃないか」
俺を指さす。
ジャネットが、もう一度「こんな汚いことをしても、ご主人様には、効果ないと言っておるのだ、このバカ者目!」
なんだか、良い方にトゲがあるジャネット、よっぽど怒っているみたい。
こんなジャネット見たことない。
よっぽど気分を害したみたい。
「………」アドルファスはジャネットの言い方を聞いて、唖然として言い返せないみたい。
やっと起動したアドルファスが、「き、き、きさま、このウルフ様の幹部にして信頼熱き、この俺様に対して、なんと言う口を聞くか」ちょっと声が震えている、怒りに震えているのか? それとも、ちょっとジャネットの良い方が怖かったのか?
俺もジャネットの良い方で、痛みを忘れるくらいだった。
しかし、それも違った。
両脇を支えるアリシアとステラ王女の間にいて地面に崩れ落ちている俺が、消えた。
「えっ?」
「えっ?」と二人は、俺が消えたことに不安そうな顔をしてキョロキョロしている。
そう、俺がナイフで傷を負うことは無い、どうしてかって言うと、俺は常に魔力をまとっているから、その魔力が結界みたいになっているからだ。
しかも操られいる子供の力で俺を害することはできない。
それが角の建物の壁に寄りかかり、「おまえさぁ、え~と名前なんだったか? あっ、そうそうアドルファスだっけ? お前が、子供3人の中にいること自体、おかしいだろう、いくら子供に扮していると言っても、その、ひねくれた顔つきを見れば、おかしいと思うだろ」と俺もオーバーに奴のことを言う。
実際は、顔つきは、そんなにひねくれた顔をしている訳ではないが、ジャネットの言い方を引用した。
「お前ら、殺す」と言い出した。
「お前ら、殺す」と繰り返す。
「お前な、そんな子供の姿で言われても、凄すごみないぞ」
しかし、奴は、子供の姿から戻ることなく、手のひらを上に向けて、ドス黒い魔力を発動する。
奴のドス黒い魔力は、炎系の魔法とも、違う、こちらの世界で分けられるとしたら闇魔法なのか?
奴が闇魔法に相当するだろう魔法を出したので、俺は右手を開いて、そこに聖属性の魔法を、まとった剣を出して握った。
奴のドス黒いオーラ、それを俺の剣で対処する。
邪魔にならないように、全員が、俺たちから離れる。
あっ、あとでアリシアとステラに謝っておかないといけないな、と戦いに入る前に、思っていた。
「きさま、戦いに集中しろ」と戦いに集中していないのが、ばれていた。
奴の掌ではドス黒いオーラが渦を巻いて、周辺の空気を吸いだした。
ブラックホールみたいなものか?
掌のドス黒いオーラが、その中で雷を発生させている。
時々、雷の光で明るくなる。
俺は、それをみて、聖属性と、付与するものを増やすことをした、、増やしたものは雷属性、俺の雷と奴の雷、どちらが強いか?
勝負を一瞬で決める。
ここは、少し人が減った通りだとはいえ、街なかには変わりない。
俺は、突っ込まずに、待つことにした。
しびれを切らしたアドルファスが、俺に向かって真っすぐに突っ込んでくる。
俺が剣を、右腰の部分で構える。
奴が突っ込んでくる。
ドス黒いオーラがある掌を俺に押し付けようとする。
俺は徐々に近づきつつある、奴の右手を、ドス黒いオーラの玉ごと、剣で真っ二つにした。
その瞬間、奴の極端に大きい悲鳴が上がる。
「ぎゃぁぁぁぁあーーー」
右手を押さえて地面にへたり込む。
ジャネットの方を見ても、押さえつけている子供は、相変わらず暴れている。
へたり込んでいるアドルファスに対して、俺は剣を上に振り上げて、一気に奴を真っ二つにした。
奴は半身ずつ、薄皮を引きはがす感じで、割れていく。
その時になってやっと、子供が暴れるのをやめた。そして眠りだした。
俺は立ち上がって剣を払い、剣を消した。
そこにイザベラが俺の頭を叩いてきた。
「もう、クリス心配させすぎ」
アリシアも抑える必要がなくなった子供を置いて「ほんとうだよ、でも、いつ、分身体にすり替わったの?」
「コリンが近づいて行った時だよ」
「そんな、前から?」
「うん、だって、怪しいよね、こども3人の中にいる時点で、すり替わりが行われていると思ったし、以前の情報で、操作系の奴だって言う情報はあったからね」
「操作系?」
「うん、そうだよ、人を操る事だと思っていたから、いつかは、来るんじゃないかと思っていたからね」
「よく回避することができたね」
「そうだね、それを知っていたのがジャネットだけが知っていたと言うのが、ショックだけど、もっと、もっとジャネットにも気が付かせないようにしないと
今からは、魔法力や剣の実力だけじゃなく、ああいう駆け引きが必要になってくると思うんだ。
まぁ、騙しあいみたいなものかな?」
「戦いなれるって言おうよ、騙しあいなんて、身もふたもないよ」
「まぁ、そうだね、でも、こんな子供を使うなんて、本当に汚い」
「クリス、奴が変装していた子供は?」
「ああ、奴は、憑依でもないと思うな、つまり、自分が子供になって、あとの二人に近づいたって感じだと思う。
だから元に戻ることがなかっただろう?」
「じゃあ、子供の姿が奴だと?」
「う~ん、それはわからないけど、普通なら、戻るよね」ソフィア
「そうだね、たぶん」
「しかし、姿形が子供だと言って、俺は無いと思うな」
「あ~ぁ、あの悲鳴だね」
「うん、まさか、本当に子供なのかな?」
「違うとも言えないね」
「じゃ、子供殺しの勇者?」と冗談交じりに言うアレク。
「こらっ、アレク、そんなこと、言うもんじゃないよ」とパトリシア
「ごめ~ん」
「でも、本当に理不尽だよね、あんな奴を相手にしなければならないなんて」アリシア
「まぁ、そうだね、色々な敵がいるって言うことなのかな、それよりもウルフの奴が、どうして、あんな奴を配下に置いたのかな?」
「うん、でも自分で名乗っているだけで、ほんとうなのか、わからないよ」
「でも、自分のところの幹部をかたることができるとおもっているの?」
「まぁ、奴らだからね、以前よりも俺の能力が飛躍的に伸びてきていることは実感しているよ。」
ジャネットが「そうですね、私だけが、ご主人さまがすり替わったのが、わかりましたから」
「他にわかった人っていた?」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
いないみたい。
そこに手を上げる人がいた。
恐る恐る上げる手の持ち主は、エイミー。
「私はご主人さまが、入れ替わったのはわかりませんでしたけど、一瞬、ぶれたのが見えました」
「あっ、そうか、俺もまだまだだな」
「あっ、いえ、ぶれたのはわかりましたけど、まさか、転移を一瞬でやって、そこに分身体を作っておくなんて、しかも、ちゃんと言葉まで話せるし」
「おっ、そこに、気が付いたんだ」
「はい」
「えらいぞ、そこまで気が付いているなんて」
「一瞬でもぶれたことも分からないようにしていきたいんだ」
「そこまで、する必要があるの?」とアリシア
「うん、なにごとも万全を尽くすこはしていたいんだ」
話を聞いていたステラが「さすが、本当に本の通りの方ですのね」
えっ、前から、本は、誇大にも書いていないし、事実しか書いていないって説明しているのに、いまさら?
「みんなが努力しているのに、俺だけが、置いていかれることがないようにね」
アレクが嬉しそうに「うん、そうだね、みんなで競争だね」
「そうだね」とアリシア
「みんな、いい、早くクリスを勇者の座から引き下ろすわよ」とイザベラが飛んでもないことを言いだした。
でも、俺は君たちが血を流すのも見たくはないから、当分は、俺が勇者を引き受けるけど………
しかし、久しぶりに鑑定魔法をメンバーに使うと、大変なことが判明した。




