力を持つ者8
会議は、良い方向に向かっている………それは、俺が思っている方向ではなく、俺の負担が多くなる方向へ。
つまり、加盟国が増える方向へだ。
と言うことは、11か国になる訳だけど、新しく加盟する国は、離れている。
あまりメリットが無いような気がするが、加盟したいと言うので、それ以上、何も言えないが、俺と懇意になることで、メリットを探そうとしているのか?
まぁ、加盟するって、こう言う機会が無いと、この先にも切っ掛けはない。
そして、それぞれの国でも、動きやすいと言う名目と貢献で貴族位をもらう話になる。
イーノック王国のイアンは、俺には助けてもらった恩があるから公爵位を言うけど、俺に恩をあだで返すのか?って、ちょっと思った。
もう貴族なんか、いらないのに………
普通なら、一つの国にだけ所属する貴族が、俺だけは複数、所属するなんて、変な話だ。
それは、俺が勇者と言うスキルがあるからであり、俺自身ではないと思う。
もし、平民の俺が勇者の称号が無かったら、貴族なんかなれるわけないし、たぶん、オーリス王国の始めの事件でも、騎士爵が精いっぱいだろう。
良くて子爵か男爵どまり、かな?
普通なら、なる事ができない公爵と言う立場は、王族の親戚と同じと言う意味もある。
それも、いくら国家、王族を害するものを助けたからと言って、公爵は無いと思う。
まぁ、一代限りの貴族だと思うから、その点は、あとくされない、と思えるが、詳しくは聞いていないから、永代ってことはないよね。
貴族のことを良く知るまえに、しなければならないことが多かったし、研究もする必要があったから、時間が無くて、忘れていた。
盟主と言ったって、有事の際は、軍の最高司令官を任命されて、事務仕事なしで、現場では、指揮をとることになっている。
複数の軍隊を統制下において、動かす事になるが、多くの場合、俺自身が出陣することになるので、軍を動かすのは、そこの将軍に任せて、俺は、臨機応変に対象する。
そして、それはメンバーの女性たちも、俺の指揮下に入ることを意味する。
戦いの場では、王よりも俺の指揮の方が優先される。
ある程度、加盟の話が進んで、俺たちへの資金の援助、そして城の部屋を借りて、転移できるようにしたりすることを話した。
俺は、もう、いらないっていったんだけど、管理は国の方でするからと言って、新規加盟国に俺たちの屋敷が与えられた。
たぶん、それは、自分の国に勇者が住んでいると言う名目が欲しいじゃないかな?と思う。
城の一角に部屋があっても、住んでいるとは言えないから、大義名分かな?
最近は、オーリス王国の屋敷にも帰る事ができていない。
休養は必要なので、ブラッドフォート大公国の山荘にいくことが多い、山にあるので、周りに迷惑をかけにくい為だ。
あとの場所は街に近かったり、人がいるし、人がいるところは、騒がれてしまう。
特にオーリス王国は、貴族街にあるから城に近すぎる。
食料は、時々、どこかに街に全員で買いにいくことをして大量に購入している。
最近はスタンピードが多かったので、買い物もできないので、できるときに大量買いしている。
俺が必要な会議も終わり、久しぶりに街に出ることになった。
それぞれの国の王たちは非公式のためと、まだまだ話すことが必要なため、相変わらず会議をしている。
まだまだ話さなければならないことがある。
俺に用事があれば、念話通信を使うように指示している。
新規加盟国には、陶器のリンゴの形をしているのを用意して、練習もしてきた。
*
「………」俺は、後方にいる人を見ている。
街に出てきたが、なぜか、アリシアの横にステラ王女がいる。
まぁ、案内役をかってくれたは良いが、あまり自分の住んでいる街を知らないみたいだから案内役にはならない。
ちょっと、おとっりタイプみたいだから、城を脱走みたいなことはしないのかな?
それでも視察くらいはあると思うけどな~
馬車の中にいれば、気が付かれることは無いだろううから仕方ない。
視察の目的の場所に着いたら、カーテンを開けるか、扉を開ければ、こと足りるのか?
俺たちは全員で歩きながら、店に入り、服を見たり、買い物をしていく。
食料をかったり、できたものを大量に注文して熱いうちに異空間に入れていく。
だいたい、メンバーと歩いていると、大人組は、前列にいて、見た目の子供組は後方にいる。
アリシアは、王女が腕に捕まっているので、歩きにくそうに最後尾にいる。
王女は、あきらかに貴族だとわかる服装でドレスを着ている。
そんな王女が横にいる為、アリシアは迷惑そう。
露骨に嫌な顔ができないみたいで、遅れ気味に最後尾を歩いている。
そんな二人に、目を付けた奴らがいた。
5人組の男たちが、建物の角から俺たちを見て、ニヤニヤしている。
その男たちの横を俺たちが通り過ぎていく。
俺が威嚇のため、男たちをチラッと見たが、俺の方を気にする様子もなくアリシアとステラ王女の方を見ている。
二人を眺めている段階では、どうしようもない。
行動に移す事はできない。
そのとき、全員の行動を確認してみると、全員が気が付いている。
もちろんアリシアも気が付いているけど、気が付いていない人が横にいるので、アリシアは、男たちから少しでも遠ざけるようにステラ王女を反対側にした。
そして、アリシアは目に見えないような結界を張った。
俺は頭の中で、へ~、アリシア、こんなこともできるんだ、と思った。
昔の俺が初めて結界を使った時には、夜にトイレに起きたイザベラに見られたけど、結界を透明にすることができるなんて、素晴らしい。
と俺は緊張感を少し緩めた。
俺たちが通り過ぎて、アリシアが真横に来た時に、やはり、男5人は、頭らしき奴が、顎で合図して全員が動き出す。
こんな大通りでことを成そうとするとは、よっぽど経験があるんだろう。
男たちが、アリシアと王女を連れ揃うとして近づいたが、アリシアの腕を取ろうとした男の手が、はじかれる。
手をはじかれた男は、痛かったみたいで、反対の手で手をさすっている。
そんなことも知らずに違う男が、アリシア、王女に手が伸びるが、結果は同じこと。
「「「いてっ」」」
「お前ら、なにやってんだ?」と凄む男が一人。
初めにアリシアに手を出した時点で、俺たちは男たちを囲んでいる。
ボスらしき男が、周りに気が付く。
男5人は、囲っているのが女性と少女だったので、それでも突破できると考えたらしく、俺たちに剣で切り込んでくる。
あの~俺もいるんだけど………と思ってしまった。と言うのは、俺が緊張感を解いたので、他のメンバーの動きの方が早かった。
俺はアリシアが結界を張ったことで安心してしまったが、他の皆は、そうではなかったみたいだ。
剣を抜いた男たちは、焦って俺たちに切り込んでくる。
しかし全員が結界を張っているのと、剣を使うことなく、素手で対象する。
素手で構えているが、全身に張り巡らせた結界と、拳にも強化魔法が施されている。
拳を構えているだけで、剣を持っていないので、男たちは突破できると考えたんだろう。
相手は女性だし。
男が一人、ジャネットに突っ込んでいく。
しかし、ジャネットは拳を動かす事もなく、結界で防ぐが、その結界に電撃の魔法を付与していたみたいで、一撃で男を動けなくした。
幸いに男が燃え上がることは無かった。
しびれて動けない男が地面に転がる。
次の男が目的であるアリシアと王女に襲い掛かる。
ジャネットの結界を見て、アリシアも同じように電撃の魔法を付与を追加していたので、その男もしびれて動けなくなり、地面に崩れ落ちた。
それを見た他の男は、ボスともう一人が地面に倒れたことで観念した。
そこに騒ぎを聞きつけた警備員の兵士が駆けつけてきた。
3人が武器をすてて、頭に両手を置いて、膝をついている。
襲ってきた2人が、目を開けているが、しびれて地面に寝転がっている。
「おい、お前ら、何をしていたんだ?」と兵士の第一声。
アレクが「こいつらが、私たちを襲ってきました」と説明する。
「なんだって?」とウソを言うなと言う感じで兵士は言う。
ここで、もめるとステラ王女の王都の散歩ができなくなる。
兵士の詰め所に連れていかれると厄介だ。
これ以上、時間をかけたくないので、俺は、しょうがなく貴族の証明を出すことにした。
下手にでると、疑われる場合があり、おどおどしているとみられるから「おまえら、どこの所属だ? 俺は新興だけど貴族だ」と言うと、露骨に怪しそうな顔をして、貴族の証明であるカードを差し出した。
しかし、差し出した貴族カードを表をマジマジ見たり、裏返したりしている。
兵士が「こんな色のカードは知らんから、偽物だな」と決めつけた。
でも、俺は、どう言うことかわからない。
俺は、兵士がいうことを聞いて、チラッとステラの方を見た。
それを聞いていたステラ王女が、突然、兵士が言うことを理解したと言う感じで左の掌の上に、右の拳を打ち付けた。
「あっ、わかりました。それは、仮の貴族カードです。私はステラ……第一王女です。こちらの方は、昨日、貴族になったばかりで貴族の証明カードは仮のものです」
「えっ」と兵士が言う間にステラ王女は、身分を証明するカードを出した。
差し出されたカードを見て、確認したみたいで顔が青ざめている。
カードを確認した兵士たちは地面に膝を下ろした。
「王女様とは、つゆ知らず失礼したしました」
「はい、大丈夫です、職務に忠実なだけですから、それよりも、私たちを襲った者どもをとらえて下さい」
「ははっ、おい、貴様ら、捕らえろ」と他の兵士に指示する。
その間、俺は仮の貴族カードを見ていた。
いくら急になったからと言って、しっかり説明して普通は、くれるんじゃない?
まぁ、それほど、急いでいたと言うことだろう。
兵士が、男たちを連れていく光景を見ていたが、周りに人が集まりだした。
一部の人から、「おい、あれって?」とか、「王女様だ」とか言う声が聞こえだした。
「さっ、王女、行きましょうか?」と言ってアリシアの横でいる王女の腕を引っ張って歩き始める。
そして反対側ではアリシアの手を引っ張った。
「いくよ」
二人を引き連れ、後方ではメンバーが足早に、あとを追ってきている。
集まってきている人たちの輪をかいくぐりながら、なんとか、抜け出すことに成功かと、思いきや、俺たちの後ろを子供3人があとをつけている。




