力を持つ者6
娘自慢も良い光景だな、その娘の反応は違うが。
セラフィーナは恥ずかしそうにして顔を赤くしているけど、シャーロットは、なぜか反対にドヤ顔。
自慢そうに腰に手を当てているのがシャーロット。
しかし、その恰好が似合っていない………。
メンバー全員が、セラフィーナとシャーロットをみているけど、対照的な二人に、ほほえましくもあり、笑いたくなるような人もいる。
そんな我々をシャーロットは見て「もう、なんですか?」と言うと全員が大爆笑。
その良い方も、おかしかった。
「話は、それましたが‥‥‥今、現在の国の数でまとまるよりも、俺は、できるだけ他の国も、まとまっている方が良いと思います。
加盟していない国では、俺たちが行くと、国のトップを訪ねて了解をもらったりすることをしなくて、済みます。
しかも、普通であれば、王族に会うだけでも数日かかることもあります。そんな時間、待っていられません。
そして、その国の騎士、兵士たちと揉めなくて良いと思います。
幸いに俺たちのことを勇者物語で知っている国は多いと思います」と俺が言うと、ここにいる全員が頷いた。
そう、いつのまにか、勇者物語は、増刷して、世界中に出回っている。
最近、出版された本には、この本に書いてあることは事実で、実際に現存する人物の物語であると書かれていいる。
しかし、住所などは、教える訳にはいかないので出版社の住所しか書いていない。
それでも来ている手紙が、無茶苦茶、増えている。
しかし、それを選別しているのが、王城の文官の人だと言うことだ。
この時代には、手紙を出しても、行方不明になることもあったり、相手先までいく冒険者に頼んだり数か月かかるのが、普通なんだけど、それでも多くに手紙が出版社あてに届くらしい。
緊急の依頼は、城の文官さんが、念話ができる通信機器(陶器のリンゴ)に話しかけて教えてくれる。
その意味もあって、城の文官さんがかかわっている。
増刷されるたびに、新しい情報を後半に入れている。
「勇者物語のおかげで、俺たちを知っている国が増えて、敵に対処しやすくなっていますが、それでも、どこに敵が出現するのか、わかりません。
そのため、トラブルになりやすい国は加盟していない国です。
以前もあったことですが、城に行って責任者に会うだけで早くて数時間、長くて数日待つようなことがありました」
「やつらは、そんなに待っちゃくれんぞ」とオーリス王
「はい、その通りです。敵は待ってくれません」
「皆さんは一国の王であり、その国を守る責任があります。国を守るためには、敵を排除する必要があります。あちらこちらで魔物が湧いて出たり、地震が頻発している状況では、かなり整えていないと、すぐに対象することはできません。
それなりの冒険者をそろえても、周りを囲まれて疲弊をしていけば、動くこともできなくなります。
騎士や兵士、そして冒険者を数千人単位で揃ても、魔物は数十万です。
しかも、急に沸いたようにでてきます。
魔物は時間的な余裕がありますが、悪魔や魔族は、我々と同じ考える頭を持っていますので、時間的な余裕はありません」
「そんなに悪魔と魔族は、厄介なのかね?」とサイラス王。
「はい、たぶん、魔物みたいに数で出ることはありませんが、強いですね」
「うむ、魔物は数で襲ってくる、悪魔と魔族は強いか」
「今のところ、魔物と悪魔と魔族ですが、今回、この国で呼びさだれた奴は、異常でした」
「異常とは?」
「そうですね、どう表現したらいいか、迷いますが」
「実際の感想でいいぞ」とサイラス王
「そうですね、なんだか、人にはあらず、ということが実際に戦った感想でした」
「人にはあらず?」
「はい、そうです」
「人にはあらずとは?」
「人の形、姿をしていますが、中身が人ではない、と言うことですが、なんだか試作品みたいな感じです」
「つまり、出来損ない?」
「はい、そうだと言えますが、それは、わかりません。と言うのは言葉を返す事が出来なくて、主には「ギッ」と言うことしか言えませんが、それが言葉になっているのか、どうかは、異世界から来ていれば、到底、わかるはずはありません」
「その人ならずの者が口にしたのが、ギッ、と言う言葉だと?」
「はい、そうです、ここで召喚された勇者は、異質と言うか、変な奴でしたから、鑑定しても勇者としか表示されません。
使える魔法は、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、闇属性魔法などですが、そのレベルが低くて、まさに試作品を急遽、だしてきたと言う感じです。
変な奴が現れたので、警戒しましたが、大したことはありませんでした」
「そ、それは、君だからだろう?」
「まぁ、そうですね。奴が現れた時、近くに魔物反応がありましたので、メンバーには急遽、行ってもらい奴の対処は、俺だけしかしていません。
しかも初めて奴と戦う訳ですから、緊張しましたが、いざ、戦ってみると、変な奴と言う感じです
! あっ、そういえばどこかの文献にありましたが、ホモンクルスと言うことも言えますね。」
「ホムンクルス?」
「ホムンクルスってなんだ?」
「人の手によって人工的に培養液の中で作り出された人?」
俺は一応、疑問符を付けた。
アレが人と言えるのか?
「なに、人工的に作られた人?」
「はい、そうです」
「そんな奴が、どこで作られているのか、わかるかい?」とサイラス皇帝
そんなことを俺たちが話していると、アレクが一瞬、消えて、数秒後に現れた時には、サイラス皇帝の娘のミーアと姿を現した。
俺はチラッと見ていたが、サイラス皇帝からは後ろになり、ミーアの出現は予期していなかった。
そこに後ろから、皇帝の首に巻きつく手があった。
「お父様、私も連れてってくださいよ」と耳元で言われていた。
皇帝はビクッと体を震わせた。
「ど、どうして?」
アレクが「はい」と手を挙げた。
「なんだ、アレク君が連れてきたのか?」
「うん、なんだか、寂しいって思っていたから」
「そういえば、ミーアは、以前から、ずいぶん、魔力が上がったみたいだけど?」
「うん、あれから一生懸命、練習した」
「何ができる?」
「えーと、火魔法? 水魔法、土魔法、光属性魔法くらいかな~」
俺はみんなの方を向き直り、この子はミーアと言いますが、サイラス皇帝の娘さんです。以前は、魔法の魔の字も使うことができませんでした。
でも、お聞きのように、4属性の魔法を使うことができます。
それも以前から適性があったからだと言えますが、適性があっても、それを伸ばす機会が無ければ、たぶん、今でも使えることは無かったでしょう。」
「ミーアちゃんと言ったかな? 君は、どうやって魔法を使えるようになったの?」とステラ王女。
「えっとね、それはクリス様と会って、もっとアレクちゃんやクリス様と会いたいって思って練習したからだと思う」
「!、そうですね、それは仲間内からも言われることです。確かに俺に置いていかれないように頑張るって言うことを、良く聞きます。
俺のレベルの魔法を使いたいんでしょうね」
「クリス君、ちょっと違うと思うぞ」
「そうですか?、でも、まぁ、魔法が使えた方が自分を守れますからね。そういえばミーア、結界魔法を使えるんじゃないの?」
「えっ、結界ですか? 練習しているんですけど、どうしても上手くいかなくて………飛行魔法と転移も使えたらなって思うんですけど」
「ちょっと結界を張ってみて?」
「はい………」と言ってミーアは魔力を練っていく。
ミーアが魔力を発動すると、不安定だけど、結界の膜が消えたり現れたりしているし、安定していない。
ミーアの結界に俺の魔力を合わせるように張ってみる。
一瞬、ミーアは集中するために目を閉じていたが、体をビクッと震わせると、何かがわかったように力を抜いて、俺が魔力を解除しても、結界を張り続けることができ、安定した結界を作ることに成功した。
結界を解いて「できました。クリス様のおかげです。」と嬉しそうに俺に顔を見せるミーア。
そこに近づいてきたアレクト手を取り合って喜んでいるが、気が気でない皇帝がいた。
「ミーア、良かったな」とサイラス皇帝。
「ミーアの例は特例かも知れませんが、魔法は特別なことではなく、ちょっとコツをつかむと使うことができます」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってよ、そんなに簡単な事であれば、もう
全員が魔法を習得していると思うぞ」
オーリス王が「わしなんか、やっと、このように火魔法を使えるようになったところじゃ」と言って掌に火を出現させる。
「すばらしい」と俺。
「オーリス王も魔法を使うことができなかった一人です」
俺は、ここにいる王が魔法が使えることが良いと思っている。
特に結界魔法と転移魔法。




