力を持つ者5
やっとサイン会が終わった、コリンと握手する者や家宝にすると言う奴までいた。
しかも涙ぐんでいる人が多い。
そこまでしてコリンのサインが欲しいのか?
おれも、今度、サインもらっておこうかな?
*
ほんとうに話があるのなら、早くしてくれって思っているんだけど。
コリン以外の全員がしびれを切らしながら、待っている。
サインをもらって嬉しそうな人と、早くしてくれと言う人に別れている。
その中間がコリンだ。
「それで?」と俺が、同じことを言う。
「あっ、そうでしたね、大切なお話をするところでした」と王妃
王妃が「クリス様は、盟主と言う立場でしたね」
「?、はい、そうですが」
「いまも、いくつかの国が、加盟に向けて準備をしてると噂が流れていますが………」
「あっ、そうですね。イーノック王国とか、今まで行って王族と会うことができた国は、そのように聞いていますが」
「そ、それで」
なんだが言いにくそう………
「それで、我が国も加盟申請の方向に動いていこうかと」
「………」
「我が国は、王以外は、その方向で動いていたんですが、王と、王の側近が反対していたんです。その王も、側近もいなくなりましたので、せっかくの、この機会に、我が国はオーリス王国とは、離れていますが、それでも、勇者を希望の光として頂くことは国民の真意です。王都では、勇者物語を忠実に再現した劇も行われています。国民にも大変、勇者物語は浸透しています。劇が行われているだけではなく、大変な人気なんです」
王妃やステラ王女から、競うようにして説明してもらうが、どこかで忠実に描かれているか、わからない。
しかも美化されていたら、その場にいられなくなる。
そんなことはいいから、そろそろ本題に入って欲しいんだが、本題に入っても、すぐに外れてしまう。
「加盟は、未だに申請が増えています。俺たちが窮地を救った国ばかりですが」
「その一つに加えていただくことは?」と王妃
「それは可能ですが、ここは、離れていますので、メリット的には無いと思いますよ」
「いいえ、メリットどころか、勇者様の加盟国の一つになることの方が大きいと思います。王が、あのようなことをしでかして、このままでは、次代の王に即位することが不安です」
政治に利用されてもな………
「もちろん、政治に利用しようとは、思っていません」
えっ、それって、利用じゃないの?
「王である夫は、一部の国民には圧倒的に、支持がありました。その反面、大多数の国民には、非難されていました。その陰にある、私たちは、このままでは、王政が維持できません」
「それに利用したいと?」
「はい、大変、申し訳ありませんが、国がまとまるためには、どうしても神輿が必要です」
「………それに俺がなれと?」
「はい………」王妃
まぁ、王が不在となれば、この二人が継ぐしかないのだろう。
決まりが無ければ、王妃が、次の王になるが、カリスマ性がない。
こんな場合は、周りにいる人たちが、盛り立てるしかない。
しかし、ここにいる人たちでは、なんだか心細い。
そこで、俺は念話による通信を加盟国にしてみることにした。
まずは、この国の人たちを追い出して、相談してみる。
しかし、何があるか、わからないから、別室で待機してもらう。
念話会議は久しぶりだ。
用意があるため、各国で調整して3時間後にした。
3時間後でも早い方だろう。
入っていた会議や仕事を後回しにして調整してもらった。
*
3時間後、念話通信で会議をする。
今では全員が念話をすることができるから、特にシャーロットは、王である父親と暇があればしているみたい。
コリンが文書で作ったものを各国に送って、わかりやすくしている。
俺が、俺の口から、ことの顛末を説明する。
本当なら王たちを迎えに行って、話をした方が良いんだが。
そう思いついて、一斉にメンバーに王を迎えにいってもらった。
転移には、それぞれが担当して、王を、この場に集結させる。
オーリス王の王、ダイラス連邦首長、オズワルド王国の王、サイラス帝国の皇帝、ブラッドフォート大国国の王、ライオネル公国の王、リッチェスト国の首相のトップの人たちと宰相と文官。
俺たちがいるから警備の者は遠慮してもらった。
そしてオーリス王と話した時に、この機会に、加盟申請しているイーノックの王とボールドウィン王国、レジーナ王国のトップ会談を行うことにした。
加盟申請している国は、あまりに急だったため、オブザーバーで参加する。
俺が動くと、何かと不都合があることもあり、俺は、この国に待機する。
加盟国は、いつの間にか、申請中の国もあるが、10か国、プラス、この国。
あれっ、この国って名前なんだったか?
あっ、そうだ、ウィルフレッド王国だった。
一回しか聞いたことがないから、度忘れしていた。
*
全員がなんとか、集まり、久しぶりに集まった知っている国同士が、話をしているが、まだ、そんなに知らない国や初めて会う王族には、話ができないでいる。
俺は、テーブルに座るように言う。
それぞれの国のトップが、大きなテーブルに着く。
この国の王妃とステラ王女も、暫定で国の代表として着席している。
11か国の代表が一堂に会う機会なんて、まず、無いだろう。
どれくらいの国が、この星にあるか、知らないが、俺は、この星の一人の勇者として、考える必要があるが、それも加盟国中心になる。
動くためには軍資金もいる。
しかし、俺たちの国からもらう軍資金は、ほとんどが孤児たちに使っている。
勇者物語の販売利益も、国の孤児たちに使っている。
国からも援助してもらえるように働きかけることも、もちろんだが。
親が病死したり、浮気したりして離婚することや、魔物にやられたりすることで路頭に迷う子供がいる。
そんな子供たちを助けるためには、いくらあっても足りない。
コリンの本の売り上げだけじゃ、足りていない。
それでも勇者物語が売れると、俺たちが孤児たちを助けていると言うことが知れ渡れば良いと思っている。
最近は、ゆっくり街を歩いて買い物をする時間がない。
ちょっと待ちに出て買い物をするくらいはできるが、時間的な余裕はない。
今回加盟申請しているウィルフレッド王国を含めた11か国がテーブルに着いた。
盟主であり、話を一番、知っている俺が会議を進めていく。
「それでは、会議を開催したいと思います。今回の議題は、4か国の加盟申請ですが、本題に入る前に、今、現在で起きていることを話さなければなりません。今、あちらこちらで地震が頻発しているのは、知っていると思います。それと魔物や魔族、悪魔のスタンピードが起きています。その原因は、すべてウルフが関与していると思われます」
と全部の国が勇者物語を知っている上での話をする。
勇者物語には、事実しか書いていない。
最近のことは、まだ出版前だが、それでもまとまり次第、製本化することを急いでいる。
多くの人は、作り話だと思っているだろうが、ここに集まった人は違う。
本の中の内容が事実だと疑っている人はいない。
今回、新たに申請したウィルフレッド王国の王妃とステラ王女も、勇者物語を読んで詳しく知っている。
本当に、こういう時は勇者物語は頼りになる。
「勇者物語で起きていることは事実であり、非常に厄介な状況になっています。最近では、世界中に出現した魔物の数が異常に多く、進行を止めて、数を減らしている状況です。できるだけ被害が無いように処理をしておりますが」
オーリス王が「うむ、君たちが急いで駆けつけてくれることで被害は少なく、無いと言っても過言ではなく頼りにしている」
ライオネル公国の王「その通りだ、クリス君無くして、世界の平和はない」
ダイラス連邦の首長「いち早く察知する事だけでも大変なことだと思う、我々が軍を動かす前や冒険者ギルドに依頼を出す前に、討伐してくれていると聞いている」
サイラス皇帝「うむ、本当に大変な状況だと考える、本当にクリス君には感謝している」
そこでイーノック王国の王となったイアンが「私の国でも、クリス様に助けていただいて大変、助かりました」と言って俺に頭を下げた。
オーリス王が「遠く離れた国同士が、これほど強く結びつくことができるのも、すべては勇者となったクリス君のおかげだと思う、君の転移能力のおかげで大変、助かっている」
リッチェスト国の首相「我が国も、勇者様に大変な時に助けていただいて感謝している。いつ、我が国も魔物が沸いて出るのか用意はしているが、それでも、いざとなれば、国の災いとして対処するに備える用意がいる。騎士や兵士を鍛えているが、それでも、特殊な能力を持った、君たちには遠く及ばない」
オズワルド王国の王「以前、やった合同訓練をやってもらいたいんだが、それぞれの国には魔法学校、剣士学校があるが、そこを卒業したものでさえ、君たちの足元にも及ばない」
ブラッドフォード大国国の王「本当に、その通り、やはり勇者と言う称号がなせる業なのでしょうか?」
俺が「いえ、それも一つあるでしょうが、最近は特に成長が目覚ましいアリシアですが、アリシアは、俺と旅をする前には、一般の人ですよ。そこかしこにいる人と変わらない、普通の人です。以前は指導もしていましたが、最近は、なかなか、その時間が取れませんでした、しかしアリシアを必等に全員が努力して俺に迫ってきています。そのやり方は勇者物語の本に書いてある通りで、わかないことをわからないで済ますのではなく、わかろうとする努力だと思います。その点では、サイラス皇帝の娘さんは素晴らしい素質をお持ちです」と言って、今日はないけど、サイラス皇帝のミーアのことを、ほめる。
「ありがとう、クリス君、ミーアも喜ぶでしょう」
「私が勇者として覚醒する前も、普通の村人ですよ。」
「それは、知っていいるが、とても信じられん」とライオネル公国の王。
「おとうさま!」と父親である王をにらみつけるセラフィーナ。
ライオネル王が「娘と会うたびに、なんだか人ではないように思えてくる、神秘的で天使さまに会っているような気さえしている」
「もう、「お父様ったら」とセラフィーナが恥ずかしそう。
「おおっ、わしも思っておった。最近のシャーロットは、天使さまというか、妖精と言うような感じがしている」とオーリス王。
ライオネル国王が「まさに、その通り、さすがオーリス王じゃ」
バカ親子が、お互いの娘をほめだした。
メンバーの中に家族の者がいない国の人たちは羨ましそうな眼をしている。
中途半端な魔力を持っているようじゃ、敵に通用しない。
それが、普通の人から見て、天使のような感じや妖精のように感じるんだろう。
! この世界に妖精っているのか?
そういえば、この世界には、飛んでいるドラゴンも見たことがない、どこか地中深くにいるのか?
まさか、俺たちを避けている?
まぁ、それもわからないことはない、なんたって親分がロゼッタだから。




