滅亡する世界に逆らう者10
オリビア王女を強引に手を引っ張って魔法陣に近づく。
オリビアをともに手を引っ張って魔法陣の中にはいると、やはり魔法陣が光りだした。
「全員、近くに」と言うと、魔法陣の中に入りメンバーは俺の周りに集まった。
魔法陣の輝きとともに、俺たちの姿は、残されたメンバーと王妃の目から消えた。
イザベラ「行ったわね」
アイリス「でも、行きたかったですね」
ソフィア「うん、そうだね、でも何があるか、わかったもんじゃないよ」
アイリスが「うん、危険なことはあるでしょうが、ご主人さんと一緒にいることができないのが」
ソフィア「うん、そうだね」とアイリスの頭をなでなでする。
アイリスが気持ちよさそうに目を細めている。
そうしたら、背後から「あの」って声がかかる。
行けなかった3人は同時に後ろを振り向いて「「「はい、なんですか?」」」と声をそろえる。
3人で同時に同じことを言われた王妃は、少したじろぎながら「娘は大丈夫なんでしょうか?」
「はい、しばらくは危険なことは無いと思いますが、それは、罠が張っていない場合ですが」とソフィア。
「罠ですか?」
「はい、専用になっている場合は罠を張る必要はありませんが、敵が侵入する場合がありますので用心のためと、それ以外にも王族が入る場合も、罠を解除する必要があります。
これは、かなり昔のものでしょ?
そのため、余計に用心が必要になります。」
「それは、どういうことでしょう?」
「それはですね、クリスが、なんだか、変な魔力を感じると言っているからです」
「それは古い魔法陣だと言うことですか?」
「いいえ、古かろうが、新しかろうが、魔力の種類は同じはずです」
「それが違うと?」
「はい、その通りです」
「だからクリスは、何かのときに私たちを残したのよ」とイザベラ
「そうなんですか?」
ソフィア「もし全員が行って帰還できないと言うこともありますので、魔法陣ほど厄介なものはありません。
しかも、先に行った王様たちのもとに行けるとも限りません」
「そうですよね、私ども依頼したことの重大さが、改めてわまりました」
ソフィア「クリスは危険なときほど、慎重にな勇者です。魔法陣に入るのに、あれほど躊躇することは珍しいです。
クリスも自分で転移する魔法を使っていますので、転移のことは良く知っています。しかし、自分で起動する転移魔法は知っていても、他人が作った魔法陣は、調べようがありません。
魔法陣を調べる為には、それ相当の時間がかかりますから。
でも、今は、そんな余裕はありません」
「………」
「そして帰って来れると言う保証もありませんので、もしかしたらオリビア王女をお返しすることはできないかもしれません」
「………」それを聞いて、それ以上何も言うことができない王妃
すべては危険なことをやろうとしている自分の夫である王に責任がある。
娘が帰って来れないこともあると聞いた王妃は改めて、国のトップとしての責任であると感じる。
そこにアイリスが王妃に近づいて「まぁ、ご主人さまなら大丈夫ですよ」
「うん、そうだね、今までも修羅場を潜り抜けてきたからね」とイザベラ
「そうですね、クリスなら王女を生還させることができるしょうね」とソフィア
「あの、あなたたちを疑うわけではありませんが、それほど勇者様を信用しているのですか?」
ソフィアが「そうですね、今の私たちがあるのもクリスのおかげだし、もしクリスと出会うことが無ければ、今でも冒険者をしていただろうし、それも、うだつの上がらない冒険者だったでしょうね」
イザベラ「うん、そうだね、確かに、そう。私たちは村からでてきて、しばらくたっていたけど、そんなに稼ぐことができなかった。あの時、クリスが私たちに話しかけてくれなければ、たぶん、私たちは、どこかで魔物にやられていたと思う………」とイザベラが、珍しく小声で告げる。
「うん、そうだね、あの時、冒険者ギルドで私たちに話かけてくれた時のことを、今でも鮮明に覚えているよ。
イザベラの後ろから、声をかけられて、ほんとうは、声をかけられたから初めからわかっていた………でも、さも、初心者のような男の子で私は、たぶん、メンバーに入れて欲しいって言うのが、わかっていた、だから無視していたの、経験がない人は早く死ぬから、そんな目に合わせるのも嫌だし」
イザベラ「あっ、それは、振り向いた時に、私も思った」
ソフィア「でもクリスは、一生懸命、私たちに話しかけてきたの」
「うん、そうだね」とイザベラ
ソフィア「それで、しょうがなく、メンバーに入れることにしたのだけど、本当に、この子、大丈夫なの? つて思っていた、しかも私たちのパーティって女性3人だった、その中に入りたいって言うから、こいつヤバいのかなって思ったんだ。
でも、魔物の依頼を受けて、行く途中にクリスは私たちに話かけることもなく、そばに寄ろうともしないで、後ろから一人で歩いているだけなのよね。
もしかしたら、女性のお尻ばかり見て歩いているのかと思ったわ」
「あっ、それ私も感じたから、時々、後ろを振り返ったのよ、そしたら一度も、私たちの方を見ていなかった。
前は向いているんだけど、もっと遠くを見ているような顔をしていたわ」
そんな話をアイリスは、熱心に黙って聞いている。
ソフィア「うん、そうだね、たぶん、あの時も魔物を探知していたんじゃないかな?想像だけど。
村に行くまで、一度も魔物に遭遇しなかったから………
今でもクリスは成長して、体は大きくなったけど、性格は変わらないね」とイザベラをチラッと見る。
見られたイザベラは「うん、そうだね」としんみり言う。
イザベラが、「そんなクリスが今では、公爵よ、信じられる?しかも王族にタメで話すのよ」
ソフィアが嬉しそうに「うん、そうだね」
「あっ、でもセラフィーナもシャーロットも王族じゃない」
「あっ、そうか、すっかり忘れていたわ、あははっ」イザベラ
「そうだね、あの二人は、王族って感じしないよね」
「うん、もう、私たち、仲良しだもんね」
「でも、村を出て、あのクリスのせいで、貴族になって、村では英雄扱いだもんね」
「普通なら、平民から貴族になんて、なれるわけないよ」ソフィア
イザベラ「うん、そうだね、私たちって領地を持たないから、領地経営でわずらわしいことしなくて済むし、というか、そんな時間ないし」
ソフィア「うん、そうだね、忙しいし、あっちらこちら飛び回るし」
そんな中アイリスが「でもご主人様って、過保護ですよね」
イザベラが「うん、それは言えてるわね」
ソフィアも「うん、言えてる、もっと前面に私たちを出しても良いと思うけど、たぶん、それは、以前、クリスが言っていたことに起因しているんじゃないかな」
「えっ、なんですか?」とアイリス
ソフィアが「クリスが村にいたころ、魔物が襲って来たんだって。そのときに、アリシアが魔物が持っているこん棒で殴られて血がダラダラでたことがあったんだって。しかもアリシアはこん棒で殴られて吹っ飛んだって」
「へ~、そんなことが」とアイリス
「それでね、アリシアはかなり危険な状態になってみたい、それとクリスが冒険者になるために村を出ておてんばなアリシアは木に登っていたんだって、その時に木から落ちてお腹のあたりを強打したらしいんだよ」
イザベラ「あっ、それ知っている、それがもとでアリシアは傷が化膿して死にそうだって、手紙がきたんだよね。それで私たちもクリスの村について行ったんだよね」
「でもね今になってわかってるけど、当時は、クリスが何をしたのか、わからなかったよ」
「うん、そうだよね、クリスが来て、アリシアったらすぐに回復したんだから」
「そのときにも治癒魔法が使えたってことですか?」とアイリス
「うん、たぶんね、ハッキリ言わないから、正確なところはわからないけど」
アイリス「そんあ昔から、色々なことができたんですね」
「うん、たぶんね、でもクリスは、先生がいて教えてくれたわけじゃないから、迷ったみたいだよ」
「うん、そうだね、普通なら魔法学校とか行って、教えてもらうことも、自分で考える必要があるからね。
学校に行かなくても、どこかの有名な先生の弟子になるとか?」
「うん、普通なら、そうすることが良いと思うけど、でも、当時のクリスを指導できるよな魔法師なんて、いたのかな?」
「いないよね~」とイザベラ
そこに、すべてを聞いていた、王妃が「そんなに幼少のころから、魔法の才能が?」
ソフィア「いいえ、違うと思いますよ、たぶん、クリスが一一番、戸惑っていたんじゃないでしょうか?」
イザベラ「うん、私も、そう思う、何ができて、何ができないのか? たぶん、なにもわかっていなかったと思うから」
ソフィアが「うん、そうだよね、私たちもメンバーになる前には、魔法のことは全然、わかっていませんでしたから。
だって、冒険者になっても、メンバーの女性3人は剣士でしたから。
クリスと出会ってからですかね、魔法が使えるようになったのは」
イザベラ「うん、そうだね、クリスって本当に博識っていうか、研究をしているよね、今では、剣の修行もしているけど、魔法は特にね自分を守る結界魔法や、転移魔法、飛行魔法なんて、本当に便利だよね」
ソフィア「うん、そうだね、勇者の仲間なんだから隠す必要もないし、と言うか、本のせいで、すべてばれているし」
そこで王妃が「では、勇者物語の内容は、本当にあったことなのですか?」
ソフィア「えっ、そうですよ、魔法陣の中に転移したコリンが書いていますから」
イザベラ「そうですよ、すべて、大げさにも書いていないし、嘘もありません」
「………あなたたちは、本当に世界中のために頑張ってくれているのですね」
「いいえ、王妃様、頑張ってくれているのは、勇者クリスです、私たちはクリスについていっているだけですから」
「いいえ、でもみなさんが、彼をサポートしているからでしょう」と王妃
「いいえ、本当に彼には、こちらの方が世話をかけてばかりで」
「彼のことがすきなんですね」
それを聞いてイザベラは顔を赤くしながら、「………そういうことはいいです」
ソフィアは「そうですね、メンバーは全員、彼のことが好きですね、でも、今は、っみんな抜け駆けしないで、そんなことをしている場合じゃないですから」
王妃が「何かが起きてるの?」
「はい、たぶん、クリスはいいませんが………」




