第650話 滅亡する世界(序章)
俺を中心にしてメンバーにも黄金の輝きに満たさせている。
黄金に輝く光は、優しい光で温かい。
俺が言うのも恥ずかしいが愛情に満たされた光に包まれている。
その金色に輝く光が徐々に収まってきた。
金色の光が収まっても、なおかつ、メンバーを見てみると、今までとは違う感じに見えている。
他の人から言われた、勇者と13人の悪魔だったのが、勇者と13人の天使に変化した。
又は別名、勇者と13人の精霊と言う呼び名もあるみたいだ。
色々な二つ名が存在するが、俺の二つ名は変わらない。
しかし、本当に今回は、他の人から見たらメンバーが天使だと言うことが俺も信じられる。
そして俺も自分の手を見てみるが、普通の手のようにも見えるが、言い表すことができないが、自分の手のようで、自分のものじゃないような感じだ。
後ろでメンバーが口々にお互いのことを、嬉しそうに言いあっている。
キラキラしているとか、天使みたいだとか、妖精みたいだとか、キレイだとか、
まぁ、この言葉をメンバーに言われて、迷惑な奴はいないと思う。
みんなが、他のメンバーをほめちぎっているのを聞きながら、ここの状況を判断する。
爆炎の魔法は、魔物がでてきている異空間の出口も一緒に滅している。
他の箇所でも、もう生きている奴はいない。
しかし、今、解除すると高熱で焼けた熱波があたり一帯を支配することになるので、冷えるまで、もう少し待つ必要がある。
たぶん、爆炎の炎の威力は、すごいことになるだろうが、魔物がいるエリアは、木や草も残っていないだろう。
岩も、どの辺まで残っているのか?
魔物の骨が残る可能性も少ない。
その時、サイラス皇帝の娘のミーアから、念話が入る。
「あのー、クリス様、聞こえますか?」
ミーアが念話してきたのは、加盟国に設置しているリンゴの陶器の通信機器?からだ。
魔法道具だから、何でもよかったけど、たまたまあった陶器のリンゴを持ってきた人がいたから、それが当たり前になった。
その陶器のリンゴを通して、久しぶりにミーアの声を聞く。
「あっ、ミーア、久しぶりだね、どうしたの?」
「あのですね、最近、毎日のように嫌な夢を見るんですが、クリス様や皆さんは大丈夫ですか?」
なんと、以前も、そんなことを言っていたミーアが未来予知で夢を見たのか?
「ミーアが見た夢を教えて?」
「それが……」
なんだかミーアが迷っているほどのことを夢見ているのか?
「ミーア、俺も知りたいから、夢でみたことを言ってもらえる?」
「はい、いつかはわかりませんが、どこかの都市でクリス様と知らない男の人が、戦っている光景なんです。
もちろんクリス様の周りには、いつものメンバーの方がいるんですが、その中に、私がいるんです………」
「えっ、戦場に?」
「はい、私が戦場にいる光景を夢でみるなんて、へんですけど………お父様にも相談したんですが」
「それでサイラス皇帝はなんだって?」
「はい、お父様も、なんだかわからないって言って」
「そう」
ミーアが戦場にいると言う予知夢………どう考えるべきか?
確かに以前、あったときのミーアの魔法の才能はあった。
合同訓練で、一生懸命に魔法の練習をしていたミーア。
何となく答えは出ているが、ミーアはサイラス皇帝の一人娘だ。
ゆくゆくは、サイラス帝国を継ぐことになるだろう。
ここにいるセラフィーナと同じだが。
しかし、今は魔法力が無い人を守る余地はない。
ミーアにどれほどの魔法の素質があるのか、と言うよりも戦闘力があるのか?
どうする?
子供のミーアに、こんな戦場を見せて良いのか?
殺し合いに子供を参加させることに、俺は不安を覚えるが冒険者だって、15歳で俺も魔物を討伐している。
いや、初めの魔物を倒したのは、冒険者になる前か。
村で魔物に襲われて、俺として覚醒した時だったな。
あの時のケガのあとは残っていないが。
記憶だけは、はっきりと残っている。
魔物から攻撃されて、アリシアが飛ばされたことや、俺もケガを負ったことが。
そんな危ないことをミーアにやってもらうことになるかも知れない。
しかし、現実を考えれば、そうは言っていられない。
「ミーア、皇帝に説明して、許可をもらって」
「はい、もう、もらっています」
「そうなんだ、早いね」
「いち早く、クリス様の元に行きたいですから」
「そ、そうなんだ」
そこにアレクが手を放して「私がいく」
「うん、そうだね、その方がミーアも喜ぶね」
ミーアとアレクは初めて会った時から中が良い。
暇な時にサイラス帝国に行った時に、フルーツをもらってくることもあるから。
サイラス皇帝にも可愛がってもらっている。
「じゃ、ミーアのことは頼んだよ、アレク」と俺が言うとアレクは、すぐに転移して行った。
しかし、準備が終わっていたようで、ミーアがいる場所にサイラス皇帝もいたみたいで、1分くらいでアレクは戻ってきた。
アレクがミーアを連れて戻ってきたが、アクレの手にはバックがあって、なにかがバックの中に入っているようだ。
アレクはミーアと手をつないで、転移で現れた。
「アレクちゃん、ありがとう」
「ううん、大したことないよ」
「あっ、クリス様、このたびはありがとうございます。お父様も、納得して送り出してくれましたので………」
「そう」
「はい、これからクリス様、そして皆様、お世話になります」と言って全員にあいさつした。
「うん、ミーア、よろしくね」とソフィア。
皆がミーアのもと近づいて、挨拶している。
そんな、ほほえましい光景を見ながら、俺だけは魔物の状態の確認に追われる。
相変わらず集中力を切らすことなく、魔物を結界で覆ったすべてを確認する。
それぞれの結界の中では、もう魔物は生きていない。
しかし、あまりにも炎が強すぎたみたいで、鎮火には、もう少し時間がかかりそう。
俺は結界魔法を維持しながら、あとは見る必要がないので、後ろを振り返り、皆やミーアの方を見ることした。
それに気が付いたミーアが、俺の方に近づいてくる。
俺に数メートルと近づいてきたミーア。
しかし、そこで止まることなく、さらに俺に近づいてくる。
「?」
俺に抱き着こうとしているのか?
俺はミーアが何をするのか? と一瞬、思ったが、ミーアは使えない魔法を使って、どこから取りだしたかわからないが短剣を取りだして俺に突き立てた。
俺が痛みを覚えた時には、目の前の光景も変わっていた。
体に痛みを覚えながら俺の目の前には、見知らぬ光景が広がっていた。
「馬鹿な、奴だな」とミーア
俺はミーアが刺した短剣の傷を押さえながら「お、お前、ミーアじゃないのか?」
「当たり前だろ、、お前を、ここに誘いこむために、俺が、ミーア?だっけ、そいつに成り代わっていたんだから」
「お、お前、何者だ?」
「俺様か? 俺様は、ウルフ様の配下で四天王の一人、ゾルザック様だ」
「き、貴様が、奴の四天王の一人なのか?」
「ああ、そうだ、そして、ここが貴様の墓場となる所だ」
俺はミーアに刺された傷を治すため、治療魔法を使ったが、治らない………
「その傷は簡単には治らないだろうよ」
「………」
「なんせウルフ様が研究して作った毒を混ぜているからな」
「な、なんだと?」
「もう、目がかすんできただろう?」
「………」
「もう死は、すぐそこに迫っているぞ、これで、あの星の攻略もやりやすくなるな」
「………」
「ヒャーハッハッ、邪魔な存在はいなくなる、あとはお前の仲間だけだ、その仲間が、この後、どうなるか? それは楽しみだな、あ~今、考えてもゾクゾクするな」
「く、くそ」
「勇者のお前を倒した俺にウルフ様は、何を褒美にくれるか、楽しみだ」
俺は目を開けていられなくなり、その場に倒れてしまう………
目を開けようとしても開けることができない。
消えゆく意識だけが、ゾルザックの最後の言葉を聞いていた。
「俺の勝ちだ、俺が殺したから、俺は勇者殺しだな……そうだ俺は勇者殺しのゾルザック様だ」と言い残してゾルザックは消えた。
ゾルザックの最後の言葉を聞いて、俺の意識は無くなった。
「……… 」




