第649話 世界滅亡へ(幕開け)13
加盟国の、ここを含めて3か所、それ以外の国の魔物大軍が出現しているのが五カ所、そして他にも兆しがあるのが数か所
どうするか?
ジャネットが近寄ってきて「ご主人さま、どうしますか?」と聞いてきた。
「うん、今は、魔物たちが動かないように結界で覆うことをしているけど、他にも反応が増えてきているから、どうしようか、考えている」
エマが近寄ってきて「ご主人様、申し訳ありません」
「えっ、急にどうしたの?」
「いえ、私は、ご主人さまの剣なのに、その剣に戻ることができないんです」
「………それは、どうして?、もしかして俺の魔力のせい?」
「はい、実は、そうです」
「やっぱりか、言わないからおかしいと思っていたんだけど、攻撃のため、魔力を集めることをしてみたら、いつもの感じじゃなかったんだ」
「………」
「俺の魔力が大きくなったせいで、耐えられなかったんだね」
「………はい、申し訳ありません」
「いや、いいよ、今まで不安にさせたね、ありがとう、これからはメンバーの一員として頑張ってね」
「はい、よろしくお願いします」とエマが言うとマントになっているリアムもネコじゃなく人型になってエマと寄り添う。
「ところで君たちはネコの姿が本当なの? それとも人の姿?」
「どちらも私たちですよ、ご主人さま」とリアムが答えた。
と言うことはリアムも、もうマントに戻らないのかな?
俺は、短い間だったけど、心に穴が開いたような気がした。
喋る機会は多くないけど、装備することで、一緒に戦っているように思っていたから。
二人は、メンバーに囲まれて俺から少し離れていく。
しかし離れたのは、俺が魔法を使っているせいだ。
俺の邪魔にならないようにするため………
「………」
俺が下を向いていると、当然、背中にバシッと痛みが走る。
後ろを振り向くと、そこにはアリシアがいた。
「クリス、元気だして」
「う、うん」
と言ったが、元気になれない俺を心配してアリシアが俺の手をとり握つてきた。
なにも言わずに俺の手を取って握ってくれる。
手から伝わる暖かさが、俺の全身をめぐっていくような気がする。
アリシアの方を見ていたら、反対の肩に触れる温かいものが感じられて、そっちの方を見てみると、そこには、先ほど、俺から離れたエマがいた。
エマを先頭に、俺の周りにはメンバー全員が集まってきて、俺の背中や肩や腕に手で触れてくれる。
「みんな………」
リアムだけは、手を触れることなく、近くに立っている。
皆の手が俺に触れると、さらに全身に温かさが巡り、それがエネルギーになっていくような気がした。
皆の手の温かさを感じたせいか、わからないけど、俺の魔力量があがった感じがして、しかし、集めた魔力でも、いつも使っているものとも違う魔力を感じる。
それがなんなのか、うすうすわかっている………
みんなが俺に寄せる信頼と………
メンバーからの、信頼と………のエネルギーをもらって、俺の魔力が、今までとは違う上がり方をしている。
すごい………
体は魔力で満ち溢れていく。
みんなの熱意が伝わる。
メンバーの熱い思いを体に充満させて、俺は、今、目の前の魔法結界で覆った魔物を倒すことを考えた。
今ならできる………
結界で覆った魔物、その数、8万、まだまだ、増えつつある。
しかし、俺が結界で覆っているせいか、わからないが、異空間から出る魔物が減っている。
俺は、中でウロチョロしている奴がいるが、その動く奴の持っているアーティファクトの反応を追って俺の手元に転移させる。
以前も同じことができたので、今回も簡単なことだった。
今回は俺の足元にアーティファクトが転がっている。
その数、6個。
そして、結界魔法で覆っている全部の箇所に俺は爆炎を発動した。
もうアーティファクトはいらない………
他にも魔物出現の気配がしているから、急ぐ必要がある。
他の現場は目でみることはできないが、検索魔法で確認することができる。
遠く離れた所でも、今なら正確に確認することができるし、魔法の発動もたやすい。
しかも、同時発動なので、覆っている結界の大きさが違うけど今の俺なら大したことではない。
目の前に結界の一部が見えるが、結界の中は、すごい状況だ。
すごい魔物の喚き声が、ここまで響いてきている。
あまり聞きたくないような声だ。
俺は消音魔法を発動させ、メンバーや、ここにいる兵士や騎士や、冒険者に聞こえないようにした。
魔物だって生きている。
しかし、人を襲うような魔物は、悪でしかない。
魔物だから感情があるのか?
いや、動物と同じなのか? それとも仲間内で会話でもしているのか?
でも今は目から見ても錯乱状態になっていることがうかがえる。
目が赤くなって、口からはよだれがあふれている。
錯乱状態と言うことは、誰かに操られていると言うこと。
それが、間違いなく、あのアーティファクトを持つ小さい奴だろう。
しかし、こいつら、どこからきているのか?
以前も考えたが、あの小さくて、うろちょろしている奴がウルフの世界の四天王じゃないだろうな。
そうだとしても、そいつらが何人いるのか?
今まで倒した奴を入れても4人どころじゃない。
と言うことは四天王の一角だと言えなくもない。
もし、奴らが四天王の一角だとしたら、あと、、もう3人も幹部クラスがいることになる、そして王であるウルフ………
さらに、その後ろに暗躍する奴もいる。
俺は、現実世界に意識を、戻して遠くにある光景を見る。
遮音結界で魔物の悲鳴は聞こえ無くなったが、今もメンバーのチカラを借りながら、爆炎の魔法を結界の中に展開して、まさに地獄の光景。
俺に力を貸してくれているメンバーは、それぞれが魔力欠乏になることもなく、周りから魔力を集めている。
しかし、仲間から魔力を借りるだけじゃ、なんだか、むなしい。
もう、発動してしまったので魔力は、あまりいらなくなったが、結界魔法を維持する魔力はいる。
なので、みんなからもらった魔力を逆に全員に還元する。
俺も全員から魔力をもらいながら、別にルートを作って、魔力を還元していく。
そうすると全員の姿勢がみるみるうちに良くなり、俺にもらう魔力が変化してきた。
なんだか今までも、感じていたけど、温かい魔力………そんなものがあるのか、わからないけど、俺の体を温かさで満たしてくれる。
ああ………なんだか、いいな、この感じ。
今までは戦いや研究に明け暮れていたが、最近はメンバーのことを思ってやれる時間も暇もなかった。
いや、そうじゃないだろう、そうしなかっただけじゃないのか?
もっとメンバーに気を配ることも必要だ。
と思うと、俺の体が急に光を帯びて輝きだした。
「えっ?」
メンバーの皆は俺に魔力を送るので目を閉じて集中している。
俺の黄金色に輝く光が、収まっていくと、今度は俺に触れている手を通して、やはり黄金色に輝き始める。
今度は俺の輝きは治まったが、いまだに黄金色を帯びながら、メンバーの体が輝きだして、それが収まると、やはり、俺と同じように金色の魔力を帯びている。
そこに体に異変が感じたイザベラが目を開ける。
「うわっ、なにこれ」と言う声につられて全員が目を開ける。
「えっ」
「体が光っている」
「えっ、なにこれ?」
「えっ、どうして?」
「クリスの体が光っている」
「光っているのはクリスだけじゃない、皆の体も光っている」
「そう言う、あなただって光っているわよ」
「えっ、私も………?」
「どうして?」
「でも、この光、なんだか温かい」
「うん、そうだね、いやな感じどころか、気持ちいい」
「これがご主人さまの魔力?………」とジャネット
ロゼッタ「この魔力は、浄化の最高位の魔力?」
パトリシア「いえ、それどころじゃない、これは人の領域ではないような気がします」
アレク「うん、そうだね、いよいよご主人さまが、いよいよ近づいてきたのと、本領発揮なのかな?」




