第646話 世界滅亡へ(幕開け)10
戦場で多くの魔物がいる中、気になる一体の魔物を鑑定魔法で見てみることにした。
たぶん、上空からしか確認することができない大きさ………
戦っていたら、わからなかっただろう。
上から観察することで、判断できる大きさで、魔物の間をちょろちょろしている。
あきらかに他の魔物とは違い、しっかりとした意思があるように思える奴。
こいつは、以前、どこかで見たことがある。
たしか以前の戦いの場でもみた………
小さい奴で戦場をウロウロしていた………
同じ個体なのか、どうかは見てわかるものではないが、一体は倒したはずだ。
今回も、あの小さい奴が、魔物を操っているのか?
俺は上空から観察を続けながら、メンバーたちの動向にも気を配っているけど、さらに小さい魔物の動きを見ている。
小さい魔物は、大きな魔物たちの間をウロチョロしている。
小さい魔物の動きはあきらかに、魔物になにか、悪態をつくような感じもしているし、魔物を蹴飛ばしているように見える。
早くいけ……と言う感じに見えるが………
やはり奴が、命令しているのか?
俺は、何か違和感を感じて、鑑定魔法の能力を上げてみることにした。
鑑定魔法の能力を上げる方法は、いつの間にか知っているように思えて、実際に行使してみる。
鑑定魔法の能力を上げて、さらに集中力をえがていく。
目が輝き始めたような感じがするが眩しくはない。
鑑定魔法でみるのは、系統外の魔法の存在。
俺は今まで、数回に及ぶ、奴の対決に反応がないことが、多々あり、それを疑問に思っていた。
どこかに、なにかがあるんじゃないだろうかといつも考えていた。
実際に、そんなものが存在するのか、わからないが、まずは、どうやって、その存在も分からない物を見つけることができるのか?
そのための方法を考えて編み出さなければならないと常々考えていた………。
考えていたけど、実際に使うことがなかったた。
しかし、今回は上空に滞空しながら、見ることができる。
しかし、系統外魔法を使っているのか? それはわからないが。
魔力鑑定と言うよりも、系統外鑑定をしてみる。実際に、そんなことができるのか、わからないが。
下でウロチョロしている奴にターゲットを絞って系統外魔法鑑定を試みる。
魔物の周りをウロウロしながら、奴の指から見える糸みたいなもの………
あれは………?
しかも無数に色々なところに伸びている。
指から伸びる糸は魔物の周りを歩き回っても絡むこともなく、動いている。
ということは、本当の糸ではないと言うことか。
全部の魔物につながるには、数が足りない。
今の魔物の数は、10万を超えている、しかし、メンバーが少しずつ数を減らしている。
しかし、その下の数を切るまでには、いっていない。
奴の指先の一本をたどっていくと、かなり離れた位置にいる大型の魔物に行き当たる。
それもオークだ、オークの大型みたいで、装備も充実している。
もしかして、これがオークキングとかだろうか?
周りにもオークがいるが、この個体ほど大きくはない。
と言うことは、リーダーっぽい奴に指の糸はつながっているのか?
そのリーダーを、あの糸で操っていると言うことか?
もう一度、目を奴に移動させ、あの糸を探ってみる。
それで、鑑定をしてみると出た表示は、念糸と表示されて(アーティファクトによる)と出る。
アーティファクト?
たしか以前、調べた時に、出てきた言葉だ。
アーティファクト………人工的に作られたもの………だったか?
人工的に作られたもの? 誰が作ったのか? 現代の者であれば、ウルフか?
または、ウルフがどこかで見つけたのか?
もしかして、ウルフが、あちらの世界を乗っ取ったのは、それが目的か?
アーティファクトの発掘?
能力的には、俺たちに敵わないから、物に頼ってきた?
アーティファクトか? 俺は、そちらの方面には詳しくはない。
異世界のものであるアーティファクトの能力。
奴は、どこかに、持っているのか?
もう一度、同じ鑑定魔法を使ってみると、動き回っているから、わかりずらいが、体内に異物がある………これがアーティファクトか?
体内の構造は、こちらの世界の魔物と同じみたいだ。
まさか、体内も、こちらの世界と違えば厄介だけど。
だから、その体内に異物が埋まっているのがわかる。
奴のアーティファクトの能力が、どれほどのものなのか? わからない………う~ん、どうしよう?
しかし、あの指から出ている糸みたいなものって、面白そうだ。
奴と戦って、アーティファクトを奪うか?
しかし、アーティファクトが、どういう物なのか、さっぱり情報がない。
俺が、アーティファクトのことを考えていると、遠くから悪い予感がしてくる。
この感覚は魔物の出現………
南の方角………ライオネル公国の方からだ。
『セラフィーナ、ちょっと、こっちに来て』と念話を飛ばした。
数秒で転移する気配。
すぐに実体化したセラフィーナが俺の横に現れる。
「はい、どうしました?」
「セラフィーナ、君のライオネル公国に、魔物の気配だ」
「えっ、私の国にですか?」
「うん、そうみたいなんだ」
「では、この現場は、どうしましょう?」
「この現場は、他のメンバーに任せるから急遽、ジャネットと二人で行って欲しい」
『ジャネット………』と念話で呼ぶ。
「はい、ご主人様、セラフィーナ様と、ライオネル公国ですね」
「うん、話が早くて助かる」と俺が言うと、ジャネットはすぐにセラフィーナに向かって、「では、行きましょうか」と言うと転移して消えていった。
この現場も早めに片づける必要がでてきた………
俺は、すぐに指揮官のもとに転移して、これから大規模魔法を使って、掃討することを説明した。
そして、それを使ったあと、すぐに他の現場にいくことを告げた。
慌ただしくなってきた………
指揮官から、了承をもらい、うち漏らした魔物は、兵士や騎士や冒険者が協力して倒す事になるので、あとをお願いした。
指揮官に、あとのことを頼んで念話で『全員、引き上げて、ライオネル公国に救援にいくよ』
『クリス、もうちょっと待って………いま、魔物に囲まれて………集中することができないから転移できない』とアリシア
『私も、同じようなことが起きて転移できない………」とソフィア
この二人が転移をすぐにできないと言ってきて、他のメンバーは全員、転移した。
もちろんエマも………転移した。
あとは俺とソフィアとアリシアだけ。
俺は、今まで使ったことがない魔法を、いつも使っているような感じで行使してみた。
俺は、一緒に転移する時の要領で、アリシアとソフィアを、俺の横に転移させた。
転移したアリシアとソフィアは、焦りから汗をかいている。
急に転移させたものだから、剣を構えたままだ。
「あれっ? はぁ、はぁ………」
「えっ? はぁ、はぁ………」
二人は急に転移してきたものだから、キョロキョロしている。
「二人とも大丈夫?」と俺が声をかける。
「あっ、クリスが助けてくれたんだ」
「驚いた……」
全員がいなくなったせいか、魔物の動きが活発になった。
その時に俺はあることを思いついた。
先ほど確認した魔物の中にあるアーティファクトを俺の手の平の上に転移させる………
転移で飛んできたアーティファクトは、すごく汚れている。
なので俺は水魔法で水を出して洗い流す。
キレイになってきたので、やっとマジマジとみることができた。
アーティファクトは球体で赤い色をしている。
へ~、これがアーティファクトか?
「クリス、それなに?」とアリシアが聞いてきた。
「俺も初めてみるけど、アーティファクト」
「えっ、アーティファクト? それなに?」
「うん、今は急ぐから、二人はライオネル公国まで転移して、状況確認をお願い」
「あっ、変わったわ」とソフィア
「うん、了解」と言って転移した。
この現場にはメンバーでは俺、一人だけ………
しかし、後方には大勢の人がいる。
目の前には、うごめく魔物の黒い影………
その数、少し減っても10万はくだらない……




