第642話 世界滅亡へ(幕開け)6
城に着いたみたいで馬車が止まって、扉が開いた。
扉の目には騎士数人が並んでいる。
ここでは俺は、どういう扱いなんだろう。
貴族なのか? 勇者としてなのか?
でも、今は、どちらでも良いんだが、悪魔の奴らの動向が気になる。
俺は、いますぐにでもすることがあるが、こんなところにいて時間をつぶしている暇はない。
しかし、俺は一人しかいない、分身に任せることはできない。
俺と他のメンバーたちでは、対応も違うだろう。
イヤな思いをさせてしまうこともあると思う。
それならば、俺が対応した方が良いだろうと思うが、俺も偵察するのに時間が足りない。
俺はテイマーじゃないから昆虫や動物を操る事なんて、今までやったことがないが、この際、やってみるか?
しかし操るためには、操れるものが必要だ。
悪魔の世界には、昆虫も、動物もいると思うが、あの環境で一番、良そうなのは、ネズミだろうな。
又はゴキブリみたいな奴がいる可能性はあるが、なりたくはない。
まぁ、なんとかネズミなら………
でも、ドブがつくネズミは嫌だな。
蜂は経験があるからできると思うけど、あの時も俺の意思のまま、飛ばすことができたんだった。
と言うことは改めて思うけど、俺にはテイマー能力があると言うことか?
あの時は、必死でやっていたから、うっかりしていたけど、アレがテイマーだったのか?
じゃ、魔物も操れるのか?
誰かに教えてもらえるわけじゃなく、自分ですべてやらなければならないから大変だ。
ある程度はできるってわかっているけど。
どこまで俺の能力があるのか?
念話『みんな、俺、ちょっと悪魔の世界にいくから、本体は、異空間に入れておくから、ここには分身体を残していくから、頼むね』と全員に念話で伝えた。
念話『了解』
念話『わかりました、ご主人さま』
念話『うん、わかった、気を付けて』
と言って、扉が開いて出ようとする時に、俺の体は異空間収納にあって、分身体と入れ替わる。
分身体が馬車のステップを降りていく。
念話『えっっ、もう入れ替わっているの』とイザベラ
俺の分身体は、馬車のステップを降りて背伸びをする。
そして、女性たちが俺の分身体の前を歩いていく。
全員が歩いた後を俺の分身体が歩いていく。
まぁ、いつものことだね。
*
異空間に転移した時に、一応、俺の分身体を確認してみたが、メンバーがしっかりとサポートしてくれている。
なので安心して、悪魔のいる世界へいく事ができる。
何かあれば、だれかがここに来て、俺の体をゆすれば良い。
俺は集中に入る前に何気なく異空間を見渡す………
俺が空間を改造しているせいで、いくつもの居住空間に隔てられているが、いつもとわかりがない白い空間。
この空間の外側は、どこにつながるのか?
俺が異空間の出口を作る時には、その場所を思い描いてつなげていた。
その出口を、他の星につなげることができうるのか?
急いでいるが、こちらの方が重要に思えて、やってみることにした。
もし、空気が無いところにつなげてしまう可能性があるため、俺は空間に柱を巨大な作って、ロープで俺を柱に固定した。
ちなみにロープは、錬金術で作れた。
俺は異空間の出口を、俺たちの星から見える、違う星につなげることをしてみる。
俺たちの星には、宇宙に太陽とは別に月が2つ浮かんでいる。
その星に異空間をつなげることができれば、そこから俺たちの住んでいる星を見ることができる………はずだ。
しかし、その為には、この中にある空気が抜ける可能性がある………
それを防止するために、柱でロープにつながりながら、俺は、透明な小さい壁を作ってみた。
小さいが透明な壁ができたので、俺は、それをずっと先に隔てる壁として設置して、空間を、月の一つにつなげてみる。
異空間であれば、どこにでも念じることでできるはずだ。
俺は集中することをやめて、恐る恐る、出口を開いてみる。
もちろん、空気が抜けないように透明な壁の内側にいる。
異空間の出口が開いてきて、見えるのは、俺たちが住んでいる大陸だ………
大陸の形は飛行魔法した時に確認している。
なるほど………
キレイな青い色をしている俺たちが住んでいる星………
また、こんど、ゆっくり見てみよう、今は時間がない。
いや、まてよ、今いる異空間から、意識だけを送るんじゃなく、俺の体ごと、持っていくことができるんじゃないか?
2度は行っているわけだし。
転移では難しいような気がするが。
この空間の出口を悪魔たちのいる世界につなげることができるんじゃないか?
しかし、つなげることができても、それから、どうする?
まぁ、まずは偵察だろうが………
俺は危険を冒す必要が無いと思うが、実際に悪魔の世界とつながるか、どうか、確認だけすることにした。
ロープで縛っていた俺の体を解放して柱を消す。
そして意識だけ、悪魔の世界に持って行こうとしていたら、ジャネットから念話が入った。
念話:ジャネット『ご主人さま、今、いいですか?』
『うん、どうしたジャネット』
『ちょっと、こちらに戻ってきて頂けますか?』
『了解』と俺は瞬間に分身体と入れ変わった。
俺が入れ替わって目の前の光景は、たぶん、城の中の広い部屋。
そして俺の目の前にいるのは、赤い絨毯の横に立ち並ぶ貴族たちと、前の前には数段の段差があり、その先にある立派な椅子に座っている人物。
左側には、大きな窓があって、日差しがまぶしいくらいに入り込んでいる。
俺を必等に、片足だけ、床について頭を下げている。
俺は、床に膝をつきながら、目を閉じているがジャネットに、どう言う状況?と念話で話をした。
念話『ご主人さま、まだ、話はこれからですが、挨拶程度の段階です』
『了解』と念話で送っておいた。
俺は床に膝をつくことをやめて立ち上がったが、回りからざわめきが起きる。
「なんと、不謹慎な」
「女王の御前なのに………」
「成り上がりの貴族が」と言う声がしている。
メンバーは床に膝をついたまま………
俺は立ち上がって、離れたところにいる女王に向かって
「女王よ、挨拶は済んだと思うが、どうでしょうか? 私は、7か国の盟主と言う立場亜もあり、これ以上は勘弁いただきたい」
「では、やはり、おぬしが勇者なのか?」
「そうです、名はクリスと言います。今は貴族ですが、平民の出です」
「では、あの物語の中の人物と言うことだな」
「はい、どの物語なのか、わかりませんが、世に出ている勇者物語であれば、私が主人公になります」と言うと周囲の貴族からざわめきが起きる。
「皆の物、静かに」と女王が貴族たちをおさえる。
「俺とメンバーたちは、いま、この国に降りかかった厄災で、民を救うために来ております」
早く、ここから退出するために、俺はぞんざいには言う。
いま、すぐにでも行かなければ、この国にいる人が危険なことになりかねない。
しかし、あまりに手荒く言うと、俺たちが悪として逮捕させることもある。
脱出は簡単だが………、手配書でも交付されると、活動がやりにくいが、俺も盟主としての立場もある。
女王にへりくだる必要はない。
まったく盟主なんて引き受けるんじゃなかった。
国難であれば、俺の命令が王や国軍の司令官よりも、上位になるから指揮権発動することができる。
しかし、いままで、そこまでやったことはないが。
しかし立場が難しい………
へりくだると、加盟国の威厳をないがしろにしてしまう。
あくまでも俺の後ろには加盟国がいるいうこと。
こんな無駄な時間を使うのがイヤだ。




