父親
怪物を倒して、俺はみんながいる山荘に戻ることができたが、問題が一つある。
ほんとうに久しぶりに親父に会うことだ。
前にあったのは、いつだったか、たぶん、アリシアが具合が悪いと手紙で俺を呼んだ時だと思う。
今は俺は20歳になったけど、忙しすぎて誕生日会なんて、誰もやっていない。
村を15歳の時に出てきて、1年後くらいにアリシアの怪我で村に帰って以来だと思う。
その時に父親から、里心がつくから村には帰ってくるなと、言われたから、俺は、その通りにしてきた。
本当はアリシアの両親は死んでいるはずだったけど、俺が歴史を変えてしまったので生存している。
アリシアは、手紙や、時々は、帰っているみたいだけど、もちろん歩いてではなく転移してだけど。
俺は手紙もやりとりしていない。
多分、父親が巻き込まれることがなければ、当分、会うことはないだろうと思っていた。
俺が山荘に帰ると、親父の周りに全員が集まって話をしていた。
「あっ、クリス、おかえり」と全員が言ってくれたが、俺には問題が控えているから、すぐにでも行く必要がある。
「お、親父、久しぶり」
「ああ、お前も、元気そうで成り寄りだ」
「俺は急遽、オーリス王に合わなければならないから‥‥‥」
「そ、そうなのか、大変だな」
「じゃ、みんな、親父を頼む」と言って転移しようとしたが、
「あっ、そうだ」
「一緒に転移した人たちは?」と答えを持っている人に聞いてみた。
アレクとアデルが手を上げて「もう、村に帰したよ」と言ってくれた。
「ありがとう、アレク、アデル」と言って転移した。
俺が転移した後、親父が「あいつは、忙しいな」
アリシアが「うん、仕方ないよ、おじさん、だって世界にただ1人の勇者だもの」
「そうだったな、息子が王にも気軽に会える勇者だなんて‥‥‥」と少し涙ぐんでいた。
アリシア「うん、おじさん、あなたの息子さんは、立派な勇者だよ」
「そ、そうか、立派な勇者なのか」
「うん、間違いないよ」
「そうですよ、クリスは、誰もが認める勇者ですよ」とソフィア
「うん、そうだね、間違いない」とイザベラ
「そうですね、今からお父様にあんな気軽な感じで会いに行けるなんて、普通はできませんよ」
「そうですな、シャーロット姫」
「でも、オーリス王の件は、ちょっと厄介ですから、私も行きます」とジャネット
「うん、そうだね、私も行こう」とパトリシア
「そうじゃな、わしも行こうか?」とロゼッタ
ジャネットが「みんな、ここは頼むわね」と言って三人が頷いて転移していった。
「クリスは、みんなに慕われているみたいだね」
「うん、おじさん、そうだよ、みんなはクリスが好きだからね」アリシア
「そうか、みんなが息子を好きなのか?」
「うん、そうだよ」とアリシア
「なんだかハーレムみたいだな」
「そうだね、ハーレムだね」とアリシア
「ということはシャーロット姫もですか?」
「ええ、お父様には許しをもらっているわ」
「そうなんですか?」
「はい、だから、これを機会によろしくお願いしますね」
「ええ、こちらこそ」
俺は久しぶりに会う父親とは、なんだか恥ずかしい気がして、さっさと転移してしまったが、女性陣は、結構、いろいろな話をしてくれているみたいだ。
「そうかぁ、クリスの奴が結婚ということもあり得るのか」
「ええ、そうですね」とシャーロット
「えっ、ということは、シャーロットと結婚ということになると、我が息子は王族?」
「それは、そうなりますが、お父様、知っておられるんですか?」
「えっ、何を?」
「クリス様は、勇者であり、盟主ですよ」
「えっ、盟主?」
「はい、そうです、やっぱり家族には話していないんですね」
「あの、もう少し詳しく‥‥‥」
「あのですね盟主っていうのは、国の王よりも上の立場ですよ」
「なんと、そうなのですか?」
「それとですね、クリス様は、オーリス王国だけの盟主ではありません」
「えっ、と言うと?」
「オーリス王国は、もちろんですが、そちらにおられるセラフィーナ姫様のライオネル公国、そしてダイラス連邦、サイラス帝国、オズワルド王国、リッチェスト国、ブラッドフォード大公国の国の盟主なんです」
「えっ、それぞれが大国じゃないですか?」
「はい、そうです」
「そんな国の盟主? 息子が?」
「信じられないと思うけど、本当だよ、おじさん」とアリシア
「今でも、加盟したいという国が数カ国あるそうですよ」
「7カ国の盟主ということになるんですね、なんだか腰が抜けそうです」と言って親父は床に座ったそうだ。
「まさか、息子が、そんなに偉くなっているなんて‥‥‥」
「クリス様は貴族にもなられていますけど、知っていますか?」
「はい、オーリス王国の貴族ですよね」
「いいえ、7カ国の貴族で公爵の位を持っています」
「えっ、7カ国?」
「はい、そうです、全て事件を解決した恩賞です」
イザベラが「今でもオーリス王国の屋敷には、見物する人が跡を立たないみたいです」
「えっ、そんなに、初めて聞いた話で、なんだか信じられない‥‥‥けど、、本当なんですね」
「はい、そうです」
アリシアが「おじさんが、ここに転移してきたもの、クリスの魔法だよ」
「あっ、思い出した、畑にいたんだけど、急に揺らぎが起きて、知らないところに現れたのが魔法?」
アリシアが「うん、そうだよ、多分、怪物の生贄にしようとしたんじゃないかな?」
「えっ、そうなのかい? なんだか驚くようなことばかりで頭がパンクしそうだよ。しかも、こんな美人に囲まれて」
「今、クリス様はお父様と会っておいでみたいですね」とシャーロット
「うん、そうみたい」とアリシア
アリシアが「でも、おじさんにクリスは何も言っていないでしょう」
「ああ、そうだな、でも、私が、それでいいと言ったからな」
「そうだったんですか?」
「クリスは、昔から甘えん坊だっただろう?」
アリシアが「あっ、そうですね、そんな感じだから、私、クリスを鍛えなきゃって思ってしました」
ソフィアが「それで、いじめていたと‥‥‥」
「えっ、そんなことないわよ」とアリシア
「まぁ、それはクリスに聞けば、すぐわかるわよ」
アリシアが「そんなことないって‥‥‥」
イザベラ「あ〜語尾が怪しくなってきた」
アリシア「そ、そんなことないって、ね、おじさん」
「う、うん、まあ、そうだね」
「もう、おじさんも口籠らないでくださいよ」
「あははっ、ごめん、ごめん。でも、そんな我が息子が、こんな素晴らしい皆さんに囲まれて勇者をやっていられるなんて、すごいことだね」
アリシア「ええ、本当に‥‥‥」アリシアも感慨深げな様子。
アリシア「でも、15歳の時に出て、たった5年ですから」
「ああ、そうだったな。今では、奴は貴族か?」
シャーロットが「そうですね、クリス様は、本来なら、オーリス王国の王族を助けたことで爵位を与えるってなった時に、領地はどうするかって話になったんですよ」
「それで?」
シャーロット「その時に、この国に縛られることなく、自由に動いてほしいということもあり、領地ではなく、最高位の公爵に任命されたんです。それ以上の爵位はなかったものですから、でも一部からは、公爵の上の爵位を作っては、どうかとまで話があったそうですよ」
「へ〜、そうなんですか、それは、すごいな」
シャーロット「本当に今、考えたら、クリス様がすごいことばかりしていますね」
「どんなことですか?」
シャーロット「それは、たくさんありますが、先程申し上げた加盟国の7カ国全てがクリス様に助けられていますから」
「へ〜」
「ダイラス連邦に旅に行った時も、首長の子供さんを助けていますし、サイラス帝国の時も、皇帝の娘さんの誘拐事件が起きて、ブラッドフォード大公国と戦争になろうとしたところを阻止しています」
「そんなことを、あいつが」
「7カ国すべての国がクリス様に助けられて自分達よりも上の位にするために話あったのが盟主という立場ですから」
「そうなんですか」
シャーロット「クリス様のお父様、知っておられますか?」
「何をです?」
「クリス様が、7カ国の全軍の最高司令官ですよ」
「えっ」
「有事の際ですが、現場にクリス様がいらっしゃる時に、誰であろうと、クリス様の指揮下に入ることが決まっています」
「そんな重要なポストに‥‥‥今までの話は、突拍子もなくわかりませんでしたが、それが一番、わかりやすいですね」
シャーロット「加盟7カ国のクリス様の最高司令官としては、まだありませんが、いつくかの現場では、指揮をとっていらっしゃいますよ」
「そうなんですか?」
「はい、魔物が大量に湧いて出てきた時には、国家の重大事でしたが、それを指揮官のクリス様がいたからこそ、素早く収めてくださいました」
「‥‥‥」
セラフィーナ「はい、うちの国はライオネル公国ですが、私が危険な時も、救出してくださいましたのは、クリス様です」
「そうなんですか?」
「しかもライオネル公国の父王が暗殺されようとしたところを、助けていただきました。あの時は、本当にクリス様にはお世話になりました」
「そうですか、でも、お礼なら息子に‥‥‥」
「あら、その息子さんを育てたのがお父様ですよ」とセラフィーナ
「いや〜、そこまで息子を褒めてもらえて、私も嬉しいやら、恥ずかしいやら」
セラフィーナ「でも、本当にできた息子さんですね。欲に溺れるでもなく、謙遜信も持っておられる。そしていざという時には、自分から動いて解決してしまう」
「あっ、本当だね、いつもは私たちの後ろを歩いているのに‥‥‥」とアリシア
イザベラが「本当に、いざとなったら、自分から危険に飛び込んでいくなんて、もう、本当に心配で、心配でたまらない‥わ‥‥‥よ」と涙声
イザベラのところにアリシアがいき、イザベラを慰める。
「そうじゃないと、私たちに危険が及ぶからだよ。クリスわね、何よりも、私たちが傷つくことを恐れているの」
ソフィア「うん、そんな気がする」
アレクが酸化してきて「そうだね、ご主人さまは、ここにいるみんなのことが大切なんだね。でも自分が動くことで、多くの敵を倒してきて、自分で何もかも背負っているのは、間違いないね」
アデル「うん、私も、そう思う。勇者だからって、ご主人さまは初めから何もかもできるわけじゃないし、できないことの方が多いかも」
エイミーも参加してきて「うん、そうですね、いつも悩んで、悩んで研して教えてくれる人なんていないのに、全て自分で考えているんですよ」
アイリスも参加してきて「私も、ご主人さまのことを考えると、いつも悩んでいるなと思うけど、代わりになる人はいない‥‥‥それはジャネットだって、変われない」
アリシアが「そうだね、私でもわかるよ、クリスの偉大なる力? そんな力をクリスが持っているなんて、いまだに信じられない」
シャーロット「そうですね、私がクリス様と初めてあった時も、クリス様は最後尾の荷物をのしている馬車にいましたね」
アリシア「あっ、そうだった。荷物を乗せた馬車でも、文句、一つ言わないで乗っていたよね、シャーロット」
「はい、その時に盗賊が乱入してきたんですが警備の者より、クリス様が多くの盗賊をやっつけてしまったんですよ」とシャーロットが嬉しそうに話す。
アリシアが「そうだね、あの時には初めて驚きだよ。でも王都についた時も、すごかったね」
ソフィア「その依頼の時は、私たちもいたんですが、本当にクリス1人が解決してしまって、独断専行でしたよ」
アリシア「でも私たちがいても何もできなかったよ」
ソフィア「うん‥‥‥それはわかっている」と沈んだ表情。
イザベラが「でも、今は違うわ、みんながクリスに追いつけ、追い越せって頑張ったじゃない」
「うん、そうだね、追い越せていないけど‥‥‥」とソフィア
「まぁ、そこは置いといてよ」とイザベラ
その時に急にコリンが「クリスはね、本当に、この星に、ただ1人の勇者なのよ。信じられいことばかりやらかすけど、神にも会っているし」
「えっ、神」
アリシアが「そうだよ、おじさん、クリスは神とも話をするんだよ」
クリスの父親は、神が出てきた話からは、思考が追いついていかなかった。
「クリスのおかげで、私の書いた本が売れる」とコリン
「えっ、君、小説家なの?」
「うん、そう、聞いたことがない? 勇者物語って」
「勇者物語?」
「うちには送っているんだけどな」とアリシア
「あっ、そういえば、アリシアの家の暖炉の上に数冊の本が置いてあるのを覚えているけど‥‥‥その本を書いたのが君なのか?」
「うん、多分、そう」とコリンが得意げにない胸をはる。
「ごめんよ、あまりに大事そうに置いてあるから、借りて読むなんてできなかったんだ」
「今度、その本を読んでみてください」
「えっ、いいのかい?」
「はい、私たちの真実の物語ですから」
「うん、今度、アリシアの家に行った時に借りるよ」
「はい、どうぞ、うちの両親にあったら、元気だって伝えてくださいね」
「うん、了解」
「本には、ここにいる皆んなが載っていますし、クリスが主人公ですから」
「そうなのか、あいつもアリシアちゃんみたいに、うちに本が出たんなら、送ってくるくらいすればいいのに」
アリシア「きっと照れ臭かったんでしょうね」
「そうかな?」
「ええ、きっとそうですよ。だって勇者物語は、私たちのヒーロー、つまりクリスの活躍する物語ですから」
「うん、そうだね、今度、読んでみるよ。そして母親にも言っておくよ」嬉しそうに。
アレクが前に来て「じゃ、おじさん、送っていきますね」とアレクが手を差し出すと、何か、わからない間に手を取った瞬間に、消えていた。
しばらくは誰も話す人はいない‥‥‥
皆んなが、皆が知っている勇者のことを誇らしく、そして温かくなる気持ちを大切に思っている。
しばらくして、アリシアが「………じゃ、私たちのクリスのところに行こうか?」
「うん、そうだね」
「はい、行きましょうか」
「そろそろ行かなきゃね」




