馬車の中の男
第51話 馬車の中の男
俺は怪我をした女の子の手当てをして「もう、大丈夫だから」と安心させた。
俺たちが怪我をした女の子の家を出ようとした時に女の子は目を覚ましてベッドから立ち上がった。
「お兄さんたち誰？」
「 あなた大丈夫なの？」
「ん、なにが？」
「 あなた馬車に、ひかれて怪我をしたのよ」
「えっ」
「 どこも痛くない？」
「 うん、大丈夫みたい」
女の子は体を、動かしたり飛び跳ねたりしている。
「 大丈夫みたいだね」
「 元気になって良かったね」
「じゃぁ俺たちは行くから」
俺は怪我をした子供のお母さんから、お礼を言われながら全員で家を出た。
しばらくは何も話さないで歩いていたけど。
「 クリス、あの女の子ひどかったみたいだけど」アリシア
「うん」
「 クリス、治癒魔法を使ったでしょ」イザベラ
「うん」
「ほらね〜」イザベラ
「 よくわかったね」
「 だって女の子のお母さんは気づかなかったけど扉の隙間が金色に光っていたもの」アリシア
「でも、女の子が元気になって良かったね」ソフィア
ほんとに、ひどい奴がいたもんだ。
でも、なんか見たことがあるんだよね。
どこだったかなぁ、うーん？
なんだかすっきりしないと気持ち悪い！
俺たちは、宿に戻ってきて、早めのお風呂をもらって、自分の部屋で1人でベッドに横になって考える。
その時ドアをノックする音が聞こえた。
「はーい」
「私、アリシアだけど入っていい」
と言ってきたので、「どうぞ〜」と言ったらアリシアが入ってきた。
「さっきのは、本当にひどかったね」
「うん」とだけ言った。
そこに他の3人も、ゾロゾロと入ってきた。
そして、いろいろ先ほどあったことを話し合った。
でも話しても、 いろいろなことをワイワイガヤガヤ話しながら時間が経過して、夕食の時間になった。
俺たちは食堂に向かった。
今日の夕食もおいしかった。
ここの店主の女将さんは料理がうまい。
味付けもちょうどいいし。
と考えながら食事を終えた5人は、それぞれの部屋に戻った。
俺は、また自分の部屋でベッドの上で寝転がりながら、先ほど馬車に轢かれて重症を負った子供に意識を集中してみた。
寝ているみたいだけど、呼吸も安定しているし頭の状態も足の状態も良好だと言う事を確認した。
今日しっかり寝て、明日、早く目覚めるだろうと思った。
そこで、また意識を変えて、馬車の中の人物のことを考える。
どこかで見た記憶があるんだけどなぁ
どこでだったかなぁ
と思いながら、眠気に襲われてきたので布団の中に入って寝ることにした。
次の日、顔のところに朝日が当たってまぶしい感じがしたので目を覚ました。
ベッドから立ち上がって、朝日が入ってくる窓に近づいていく。
そして窓を開けてみた。
そこには、まだ朝が早いのに、結構な人数が歩いていた。
そして、気持ちが良い風が吹いてきた。
あまりにも気持ちが良い風が吹いてきたので、寝起きで少しだけ頭がぼーっとした感じで街を見ていた。
街の向こうから朝日が上がろうとしていて、本当に気持ちが良い朝だった。
窓の内側に立っていても、気持ちが良い風が髪の毛を動かしていく。
きれいな朝日が登ろうとしている、気持ちが良い風が吹いているのを自分が感じていた。
街並みや昇る朝日を見ていると、通りの向こうから女性が歩いてきた。
誰だろうと思っていると、昨日の怪我をした子供の母親だった。
なんだろうと思っていると、宿の主が呼びに来た。
そういえば俺は言わなかったんだけど、アリシアが宿の名前を言っていたような気がした。
食堂に降りていくと、子供の母親が座っていたが、俺を見つけると立って頭を下げた。
宿の主に飲み物を2つ頼んだ。
そこに他のメンバーも階段から降りてきた。
食堂に俺がいることを見つけて、反対側に座っている母親を見てテーブルの周りに座った。
「昨日は本当にありがとうございました。」
アリシアが「お子さんはどうですか」と聞いていた。
あれから、また、すぐに寝たようだけど心配していたが、朝になったら目を覚まして昨日のように元気に動き出したそうだ。
しかし動いたら包帯が取れて、怪我も何もないことにびっくりしていたそうだ。
母親と父親も驚いたが、理解もできないまま、こちらに来たそうだ。
宿の主に全員分の飲み物を注文した。
2つはもう来ている。
そしていろいろ話したが、再度、本当にありがとうございましたと言って笑顔で涙ぐみながら帰っていった。
母親が帰った後に、自分たちは飲み物を飲みながら、何も話さないで、しばらくは黙っていた。
誰かがポツリ、「本当によかったね」と言った。
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