勇者のレゾンデートル(存在意義)8
俺がしばらく待たされている間、戦いの方を見てみると、結構、有意義に動いて戦っている。
全員が、自由に魔法を行使している。
自分の魔法の威力を試すことが面白そうに攻撃している。
空中に飛んでいる魔物も、攻撃されて落ちていく。
使っている魔法は、火魔法、氷魔法、風魔法、雷魔法、水魔法、土魔法まで使っている人がいる。
そして1人だけ、変わった魔法の使い方をしている。
それはアリシアだ。
アリシアは魔物を四角い結界で覆って、それを圧縮して潰している。
空間魔法の応用だと思うけど、アリシアは、もう空間魔法まで使えるようになっていたのか。
それを見た神獣たちも使い出す。
俺の横にはアイリスがいるけど、俺たちは戦闘現場から離れているので戦いたくて、うずうず状態みたい。
そこに先ほどの兵士と、あと三人くらいが走って俺のところにやってきた。
「勇者様、お連れしました、はぁはぁ」よっぽど急いで連れてきてくれたみたい。
他の三人も息を切らせている。
「大丈夫ですか?」
「はぁ、はぁ‥‥‥はい、申し訳ありません。この砦を指揮している将軍です」
「状況はわかっていますね」
「はい、もちろんです。こちらも人を集めたり武器を準備しているところです」
「俺たちも、ご覧のように参戦しますので、前に出ることは控えてください」
「それは、もう、わかっております。最高司令官殿、全てあなたの指示に従うように命令を受けています」
「では、撃ち漏らした魔物を討伐してください」
「はっ、了解しました」と言って四人は走って戻っていった。
俺は四人が戻っていくところを確認して、横を見たら、アイリスも俺を見ていた。
「行こうか?」
「はい、ご主人さま」と嬉しそうに俺と手を繋いでデートじゃなく、戦場現場まで転移した。
*
俺たちが戦いの場に参戦すると、俺はすぐに戦いには参戦せずに眷属としてののパワーを、メンバーに与えた。
その途端、攻撃の威力が増していく。
やはりいくら基礎魔法で、周りから集めているとしても消耗はある。
数に対抗する時には、この消耗することから隙が生まれることもある。
前世のアルベルトの時の教訓だ。
アイリスは、俺から少し離れたところで戦いを始めている。
なので俺も負けてはいられない。
俺は、魔物に歩いて近づいていく。
俺の攻撃が大きすぎてメンバーに当たらないようにするためだ。
前回の25万もの魔物の戦いの時に、イザベラから文句言われたし、それは俺は離れろって言ったのにイザベラが悪いんだよ。離れていても、洋服や髪が少し焦げたみたいだから。
もう一度、周りを見て、確認して、前と同じ大規模魔法を発動する。
念話『俺が攻撃するから前に出ないように、今回は俺の前面だけに集中させるよ』
『了解』と全員から簡潔に返事が返ってきた。
俺は炎系の魔法、風魔法、聖属性魔法をミックスにして放つ。
風魔法で炎の威力が増し、さらに聖属性魔法で消滅させようと考えている。
全部は倒す気はないけど、メンバーの負担を考えて、少しは減らす‥‥‥
今は、もうメンバーは参戦しているので、戦っていないわけではない。
これだけ一方的な戦いでも、実際に自分が、何の魔法を使えるのか? 威力が、どれくらいあるのか確認するにはいい機会だから。
あとは、知って欲しいのは、自分の魔力が、どこまで持続するのか?ということだ。
いくら基礎魔法を展開して魔力欠乏症になりにくいとは言っても減らないということは無い。
減るのは減っていくんだけど、減り方が全然、違う。
つまり回復させながら戦っていると言う感じだ。
今は戦闘中なので、皆は、それをしていないから減っているということもあるが、減った分だけ早く補充することが大切なんだ。
戦闘に夢中になっていると、どうしても忘れてしまう。
戦いに夢中になればなるほど、補充が遅れて、消耗してしまうと、補充も間に合わないことも起こり得る。
俺の近くには、アイリスがいるんだけど、なんか、俺のことをチラッと時々、見て
、攻撃を続行している。
今は全員が遠距離からの攻撃になっているから、これが、もっと接近戦になれば、また違ってくる。
念話『全員、聞いて、戦いに夢中で魔力の補充をしていないよ』
『あっ、そうだった、忘れていた』とイザベラ
『そうでしたね、忘れていました』とジェネット
ベテランのジャネットでさえ、この魔物の数で、いつもしていることができなくなる。
焦りが生まれて余裕が無くなる。
これが数の怖さになる。
どりらかと言うと俺も、こんな数で戦うことには慣れていない。
しかしなんだかよくわからないけど、頭がすごくクリーンになっているというか、魔法を打つ時にも集中して打つことがなくなり余裕がある。
全員が基礎魔法を展開するチカラを上げたので、俺の眷属としての流れる魔力が上がった。
これで、安心だ……
俺は、特別に、アリシアを背後から攻撃した奴に注視している。
さっきから攻撃を受けないように、魔物を盾として使っている。
魔物数体を自分の前に集めて盾として自分への攻撃を回避している。
やっぱり、こいつが操っているのか?
じゃ、なければ、前に集まることなんてないだろうから。
14人で30万を相手にするのは、骨が折れる作業だけど、それでもメンバーの活躍で、少しずつ魔物が減ってきている。
しかし操られているせいなのか、魔物の動きが遅い、もう飛んでいる魔物はいなくなり、あとは飛べない魔物ばかりになる。
俺の攻撃で減らしたエリアに、また、多くの魔物が侵入してくるから減った感じがしない。
しかし徐々に魔物の密集が崩れて隙間が多くなっている。
俺が注意したからメンバーの消耗はない。
どうするか、これじゃ、時間がかかるばかりだ。
というもの、次の戦いが控えているからだ。さっきから胸騒ぎがしていると思ったら、ライオネル公国に魔物出現の兆候がある。
俺は、ここでの戦いをしながら、ライオネル公国の王に念話を送って先に知らせていた。
念話『セラフィーナのチーム、ちょっと戦いをやめて集合』というと数秒でセラフィーナとアレクが現れた。
「アレク、理解しているだろう?」
「うん」
「じゃ、セラフィーナに説明と一緒にライオネル公国に行ってくれる」
「了解」と言ってアレクは、セラフィーナの手をとり瞬間転移して消えた。
セラフィーナは、なにもわかっていなかったみたいで、戸惑っていたけど…
俺たちも、ここを片付けて早めに応援にいかないと……でも、いよいよ始まったみたいだ。世界の終焉が……俺たちが動く前に始まってしまった。
ウルフの気配を追ってみたが、まだ、こちらの世界にはきていない。
ということは、今回は四天王の仕業なのか?
あっ、そういえば前回、行った時には四天王はいなかった……
もしかして四天王って、魔物に隠れる奴じゃないだろうな?、まさかね。
俺はオーリス王国の魔物の討伐を早く済ませるために、もう一度、大規模魔法を使うことにした。
「みんな急ぐから、もう一度、あの魔法を使うから、下がってもらえる?」というと実際に見たから威力を知っているメンバーは、一斉に後方に下がった。
もちろん、今回は、魔物の影に隠れる奴もターゲットにして、攻撃する。
2度と、攻撃をさせないために。
下がったことを確認して「じゃ、いくよ」と言いながら攻撃を開始する。
右から左に攻撃魔法を位置を変えながら発動していく。
魔物をあらかた討伐できて、あの魔物に隠れる小さい奴、2匹も倒したことを確認して『みんな、ここからは、任せてもいい?』と念話で聞いてみた。
『ご主人さま、向こうの応援に早く駆けつけてください、私たちは後で行きますから』
『うん、じゃ、ここは任せた、でも油断しないように』
『はい、わかりました』という言葉を聞いてセラフィーナとアレクの元に転移した。




