破滅へ向かう瞬間まで5
俺たちは異次元の扉と言う鑑定結果に戸惑いを覚える。
異次元にいくことはたやすいことだけど、あの、中を通っていくだけだ。
たぶん、歩いて中に入れば、そのまま、向こう側に行けるということだろう。
しかし、それだけなら、ここまで戸惑うことは無い。
もしかしたら、異次元の扉の向こうには、5万の軍勢、または10万の軍勢がいるかも知れない。
しかしそれは稀有で、全然、いないかもしれない。
俺の索敵魔法でも、あの先はわからない。
わからない中に、ぞろぞろ全員を引き連れていく訳にはいかない、危なくなっても、戻れないこともある。
どうする?
まずは最大戦力の俺とジャネットだけで行くべきか?
いや、向こうの人数がわからないから、全員で言った方が良いのか?
洞窟にいる魔族の奴は酒を飲んで焚火の横で寝ている。
なんだか、寝ているのが誘い込む感じに見えてくるから不思議だ。
実際に鑑定魔法を使っても泥酔と出るから嘘ではないんだろう。
「みんなあらゆる検討をしたけど、俺だけが、まず通ってみようと思う」
「クリス、危険だわ」とアリシア
「もし、俺が向こうで殺されても短期間で、また、復活することができる……」
「それを前提でいくの?」ソフィア
「うん、あんな次元の扉なんて、初めてだし誰が作ったのかもわからない物だからね。ジャネットを連れて行こうかと考えたけど、俺だけの方が良いような気がする」
ジャネット「……判断はご主人様に従いますが…危険です」
「クリス、危険だわ、やめて」とアリシア
「うん、俺も、危険だと思うけど、行ってみなくちゃならない、もう時間が無いんだ」
「そ、そんな、クリスだけが怖い思いをしたり、苦しい思いをしなくちゃいけないの?」アリシアが涙声になっている。
「うん、俺って世界でただ一人の勇者だからね。俺が行かないと、この星に暮らす何千万人の人は知らない間に死んでしまうかもしれない、サイラス皇帝のミーアや、今まで出会った人が苦しんだり死ぬようなことが起きちゃ、ダメなんだ、俺が行かないと、俺には、その能力があるから…」
「そんな、もしクリスが戻って来れなかったりしたら、どうするのよ」
「うん、そうだね、戻って来れると言う保証はない。でも、この星を、メンバーの住まう星を助けることが、俺の役目だから.
勇者なんて、もてはやされることもあるけど、その反面の方が大きすぎるよ」
「そうだね、屋敷なんかもらったって一人しかいないんだから、一軒で良いのにね」とイザベラ
「俺が危険なことを承知でやっていかないと、この星は終わってしまうから、俺でも、あの次元の扉の向こうのことはわからない。
ということは、俺が、あの中に入ったら、念話もできないかもしれない。
だから一切の通信がどうなるか、わからない」
「あっ、でも魔族は、どうして通信しているんでしょう?」とシャーロット
「うん、そうだね、何かの方法があるかも知れない」と言って俺は考えている。
そうだな、なにか方法があるのか?
初めに5人の魔族がいて、あとから一人がタイミングが良く出てきて、なにも言わずに食事を始めた……
念話とは違う手段があるかも…
そうだ、やってみよう。
泥酔して寝ている魔族の所持品を探ってみる。
しかし魔族は何も持っていない。
じゃ、洞窟の部屋の中を探ってみるが、服、ベット、毛布、枕いがいにはない。
じゃ、さっきは次元の扉の方に目が行ったけど、この部屋は、どうだろう?
と意識を切り替えて部屋の中に入った途端、毛布の下に、なんだか光っている物に目がいった。
さっきは気が付かなかったが、光っていなかったと思う。
俺は毛布の中を透視する。
そうすると、今まで見たこともない箱の形をしている物がある。
なんだ? あれ
なんだか、固そうな金属みたいな色をしている。
四角形の形で銀色に光っている。
魔族のいる世界には、こんな文明が進んだものがあるのか?
あっ、そういえば、過去に行った時に、1000年前と、俺たちがいる世界が、変わったように思えなかったのは、どうしてだ?
1000年もたっていれば、少しは進化していても、おかしくない。
どうして1000年の長い歴史の間に進化しないのか?
そこにも誰かの悪意が影響しているのか?
誰かが、悪意を持って進化を止めている気がする。
1000年も時間が流れていれば、何かが変わっていてもおかしくない。
しかし通貨の形が変わっているだけと洋服が違うだけで、ほとんど進化していない。
街並みも1000年前と同じままだなんて、どう考えてもおかしいだろう。
そんなことができるのは、神クラスしかいない。
やはり創造神ナサニエルが関与しているのか?
どうして文明を遅らせる必要がある?
それは、考えてもわからない。
洞窟で見つけた金属で四角形の箱のようなものが、一部、光っているので、毛布をかけられても見つけることができた。
しかし、この箱のものが何をするのか、わからない。
鑑定魔法でも、反応はなかった。
俺も、こんなもの初めてみるから、意味もわからないから推測しようがない。
もし、これが俺が作った通信装置の魔法のリンゴと同じ役目を追うものなら‥‥‥しかし、俺の魔法のリンゴと、この四角い金属の箱ではかけ離れている。
仕方がなく、監視を続行することにした。
魔族の奴が起き出して、操作することになればいいんだけど。
まだ魔族の奴は、グーグー寝ている寝ている。
これじゃ、罠を張っていても囮にもならないんじゃないのか?
ということを考えていたら、異次元の扉が揺らぎ出した。
俺は異次元の扉を注視する。
何が起きるんだ?
と異次元の扉から1人の魔族が出てきた。
いま洞窟の外で飲んだくれている魔族とは、明らかに違う感じがする。
異次元の扉から出てきた魔族の男は、すぐに通路を歩いて洞窟の入り口に腰に手を当て仁王立ちした。
「こらっ、貴様ら、なんたる姿を晒しておる」と腰に手を当てながら大声で言う。
でも、誰も起きない。
仁王立ちで立っていた魔族の男は、寝ている六人の魔族たちの脇腹を蹴飛ばしていく。
「おいっ、起きろ」
蹴飛ばされてやっと起き上がってきた魔族の六人。
「んっ、あっ、隊長」と1人の魔族が声を出す。
この男が、隊長なのか。
「お前たち、見張りはどうしたんだ?」
「いえね、隊長、少しぐらいはいいかと思いましてね、いい酒が手に入ったんですよ、隊長もどうですか?」
「お前らな、気が緩みすぎているぞ」と言って剣に手をかけた。
「ヒィ、隊長、申し訳ありません」と顔を青くして謝る魔族の男
「まぁ、今回は許してやる、これは没収するからな」と言って、まだ残っている酒瓶を持って洞窟に戻っていく。
俺は6人の男たちよりも隊長と呼ばれた男の方を検索魔法で追っていく。
魔族の隊長は、また、きた時と同じように異次元の扉に入っていく。
入る時に中が見えるかと思ったけど、そうはいかなかった。
俺は隊長が中に入っていくのを見ながら、あるヒントを思いついた。
俺が昆虫を操ってみようと思う、昆虫を操る事ができれば、昆虫の目を通して異次元の扉の中を見ることができる。
そこでみんなに「昆虫を操ってみようかとおもうけど、どんな昆虫が良いと思う」
イザベラが「え~昆虫なんて、気色悪い」
シャーロットが「私も無理」
ソフィアが「そうだね、昆虫なら良いと思うけど、できるの?」
「いや、まだ、わからない」
「じゃ、やってみようよ」と言って部屋からでて、皆でベランダに出てきた。
ベランダから見る景色は少し小高い丘に立っているせいで、街にも近いんだけど山ほど空気は良くないけど新鮮な感じだ。
「う~ん、どこかに昆虫いないかな?」と探している。
アレクが「あっ、いた」と指さした先には蜂が飛んでいる。
俺はイスに座って、蜂に意識を集中すると俺がイスに座っている光景が見えた。
やった成功だ
しかし、操るのが難しい。
今まで羽で飛んだことが無いから、背中の羽の動かし方がうまくいかない。
なんとかジタバタしながら羽を動かいてベランダの手すりにたどり着いた。
はぁ~、ヤバかった。落ちるところだった。
「えっ、俺がクリスなの?」とアリシア
「なんだか、この蜂なら、かわいいかも」とイザベラ
とイザベラが俺(蜂)を手すりから取り上げて手の平に乗せる。
みんなで俺が憑依した蜂を見ている。
しかし、俺の憑依することは初めてしたので、気疲れして蜂から離れた。
イスから座って、前にいるメンバーを見ているけど「その蜂は、もう普通の蜂だよ」と俺が後ろから声をかけると一瞬、俺の方を振り返って……
「ギャ~」と言う大声を出して、蜂を乗せた手を振って蜂を落とそうとしている。
蜂も大声に驚いて飛び立った。
イザベラが半べそをかきながら「もう、クリス、早く言ってよ」と詰め寄られた。
他のメンバーは、それをみて笑っている。




