救世主への道38
亀を退治して戻ってきたことで、俺たちは帰って早々に、いつも屋敷を守ってくれているセバスチャンに挨拶した。
そしてポーションの仕事も聞いてみると、今、いるスタッフでは手が足りなくなって人員を増やしたと聞いた。
やっとホームに戻ることができて、ほっとしている。
しかし、この部屋も人が住んでいる感じがしない部屋だ。というのも旅が多いため、荷物は異空間に入れているからだ。
必要なものは入れていかないと取りに戻れない。
だから俺の異空間には、大量のものが入ったままになっている。
物資を奪ったものがかなり大量にあるし‥‥‥あっ、そうだ、エイダン帝国で倉庫にあった武器や弾薬、食料は、どうしようかな?
少しは返したほうがいいだろうか?
そのうちに行ってみようか?
まぁ、今日は休養しよう。
メンバーも王都で買い物とかしたいみたいだから、フリーにした。
俺も久しぶりに研究をすることもなくベッドの上で寝転がっている。
そのうちにウトウトしてきて、眠りについてしまった。
寝ていると、またもや邪魔する奴がいた、リアムたちも、メンバーと一緒に出かけているはずだ。
リアムたちは王都が初めてになるので楽しみにしていたから、誰もいないはずなんだけど。
夢の中で話しかけてきたのは女性の声‥‥‥
「えっ、誰、俺、眠いんだけど」
「そんなことを言ってられませんよ」
「えっ、なに?」
「急ぎなさい、もう破滅が迫っています」
「えっ、破滅?」
「猶予は無くなりました」
「どうして、まだ2年くらいはあったはずだけど」
「それが変化してしまいました」
「どうして?」
「ウルフがさらに凶暴になって、進めているからです」
「えっ、ウルフが? でも最近は検索しても姿を見せないし」
「ウルフは、以前のウルフではありませんよ、今のウルフは姿、形も変えて変化しました。」
「ウルフが、ウルフじゃないということ?」
「その通りです」
「じゃ、何に変わったの?」
「魔族の王も倒して、王になり代わりました」
「えっ、でも魔族って、そんなに強くないんじゃ?」
「それが違うんです、ウルフが魔王になり配下のものに魔力を与え、より強い魔族が生まれました」
「ウルフが魔王になって?」
「特に魔族の四天王がより、厄介な存在になっています」
「魔族の四天王?」
話が、どんどん進んでいく。
「ウルフは魔王になることで配下の者まで持ち、巧妙に動きを進めています」
「でも、ウルフの気配はしていませんが」
「以前のウルフの気配とは違うからです」
「えっ、気配が違う?」
普通であれば気配が変わることはない。どういうことだ?
「どうして気配が変わったのですか?」
「ウルフの顔は知っていますね」
「はい、もちろん」
「ウルフと言うのはオオカミですが、オオカミではなくなったということです」
「えっ」俺は驚いた。
俺「では、何に変化したのですか?」
「魔族です。ウルフは、そのまま、魔族の王になった訳ではなく魔王を生きている状態で吸収したんです」
「吸収‥‥‥」
「そうです」
「つまりウルフと魔王が合体したということですか?」
「そうなります。合体することで、より強力な力を手に入れました」
「だから気配が変化したと?」
「その通りです」
「その気配を察知することはできますか?」
「今は大変、難しい状況ですね」
「えっ、わからないんですか?」
「今は姿を隠していますので、私もわからないんですよ」
「あの巨大すぎる亀も‥‥‥」
「はい、ウルフの合体した魔族の仕業ですね。四天王が動いていました」
「あの、俺たちは‥‥‥勝てますか?」
「今のままじゃ危ういでしょう」
「では、どうすれば‥‥‥」
「あなたが神として、もっと目覚めることが前提になります」
「神の力でしか、勝てないと?‥‥‥」
「そうです、ウルフと魔王の合体ですから、ウルフ魔王と言いましょうか、奴は神の力で消滅させるしかありません」
ウルフ魔王ってあまり略していないけど‥‥‥
「神の力で消滅させることができるんですか?」
「はい、できます」
「それを、どうやって使うんですか?」
「ウルフに効果があったのは?‥‥‥」
「えっ、聖属性魔法です」
「では神の力で聖属性魔法を行使しなさい‥‥‥‥‥‥」と言って言葉が小さく聞こえなくなった。
俺は飛び起きた‥‥‥
周りをキョロキョロしても誰も、いないのはわかっているが‥‥‥それでも見渡さないわけにはいかない。
あの女性の声は生命の神クリスティアナだ。
もう神クリスティアナは夢の中ばかりに出てくる。
もう時間がない‥‥‥かぁ
それにしても聞いたことは、驚きだ、あのウルフが魔王になっているなんて、しかも配下のものまでいるなんて予想もしない展開だ。
神クリスティアナがウルフ魔王と言っていたから、俺も、そう呼ぶことにしたけど、厄介な相手だ。
これじゃ、当分、ゆっくり過ごすことなんてできやしない。
俺も本格的に動かなければならない。
俺は盟主として、緊急会議を7カ国に申し込んだ。
念話で全員と連絡をとって帰ってきてもらう。
俺は会議で話す内容をまとめているところにコリンがやってきた。
「あっ、コリン、おかえり、緊急事態が起きてね、内容は、書いておいたから、まとめてくれる?」
「うん、わかった」と言って俺が座っていた椅子に座り読み始める。
コリンが「今度の相手はウルフ魔王かぁ、大はつかないんだね」と呟いた。
そこに全員が帰ってきて俺の部屋に入ってきた。
「クリス、緊急事態ってなんなの?」
「うん、みんな買い物途中で悪いけどウルフの奴の気配が見つからない理由がわかった」
「うん、そうだねジャネットでも、見つからないし‥‥‥」
「ウルフは魔族の王を吸収して魔王になったから、気配が違っていたみたいなんだ」
「えっ、吸収?」
「そう吸収というか、合体というかだけど」
「とにかく魔王を倒して吸収したみたいなんだ、だからウルフ魔王って呼んでいるけど、以前より数段強くなっているみたいなんだ。
しかも配下までいるみたいだ、それも4人」
「へー、ウルフ1人でも厄介なのに配下まで入れて4人?」
「そう四天王っていうらしいんだけど、ウルフの巨大な魔力を配下に分けて強化されたみたいなんだ」
「つまりは私たち並みに強くなったということ?」
「そういうことだね、比べるものじゃないけど」
「そうだね、比べられないね」とアリシアが顎に手を置いて考えながら言う。
「うん、確かに巨大な敵だね」とソフィア
「それで、みんなに訓練をするよ」
「えっ」
「訓練?」
「そう、訓練、いつもの野原に転移するよ」と言うと何も言わせず転移してきた。
コリンだけは後で訓練する。
「いいかい、飛行魔法も慣れてきたと思うから、俺と戦う訓練するよ」
「‥‥‥もしかして、クリスの目に叶わなければ外されると言うことも‥‥‥」とアリシア
「うん、そうだね、よくわかったね、いいかい、これからの戦いはよりシビアになってくる、その時に戦闘技術がなければ死んでしまう可能性もあるんだよ」
「‥‥‥」
「だから足手まといな人はメンバーから外されることはないけど、バックアップにまわってもらう」
「バックアップ?」
「そう、つまり屋敷にお留守番だよ」
「それって外すことと同じじゃない?」
「これも一つの試練だよ」
「俺も死に物狂いで戦うしかないんだ。
自分の身も守れない人は、俺がカバーしきれないほど過酷な戦いになる。
そうすると死しかないんだ」
「‥‥‥」みんなシーンとなって聞いている。
俺が、どんなに過酷なことを言っているか、それを全員が実感している。
「だから、この戦いに全力を出して欲しい」
「たぶん、俺はウルフ魔王と戦うことになる、四天王は、君たちが倒すしかなくなる。
もしかしたら、今いる君たちの数人は、次に、ここに立っていられないかもしれない。
そう言うことがないようにしたいんだ。
もちろん全員が合格点をもらえれば、今のままだよ。
でもね、世界が破滅の道に向かっていると警告があったんだ。
だから止めないと世界が滅んでしまう。
それを止めるためにはウルフ魔王と四天王を倒すしかないんだ」
「クリス‥‥‥神の啓示があったんだね」とアリシア
「そうなんだ。もうあとがないって」
「そう言われたんだ」とイザベラ
世界破滅への道が動き出した‥‥‥




