救世主への道24(レジーナ王国編)
3人の神獣たちが元の姿に戻っても、カメには勝てないだろう。
カメの方が全体的に大きいからだ。
それじゃ意味がない‥‥‥何か他にはないのか?
なんて、ことを考えていたら、アデルが横にきた。
「ご主人さま、私が攻撃してみようか?」
「えっ、ビームも打てないから無理だよ、すばしっこいだけじゃだめだよ」
「そうですよ、隠密行動に特化した、あなたでは無理です」とジャネット
「でも、やってみる」と俺の静止を聞かずにカメに向かって降りていく。
俺は焦って、すぐにアデルを追いかけていく。
アデルの横に転移して、止めようとするが、隠密行動に特化しているだけあって、俺の手をするりと抜けた。
「えっ」
「アデル〜」と叫ぶ。
アデルは隠密行動に特化したキツネの神獣だ。
俺の静止と手をすり抜けて、カメの魔物の前に近づいていく。
「やめろ、アデル」とさらに大声を出す。
「ご主人さま、任せてください」と言って俺の方を振り向いた。
その時、亀の口が赤く光る。
俺はさらにアデルを捕まえようとブレスの前に転移したが、アデルは、またもやすり抜けてしまう。
そこにカメが口からブレスを吹いた。
俺はアデルに向かって手を伸ばした。
「あぶな‥い‥‥‥」と言って、俺の手も焼きながらアデルの姿が消えた。
「なぜだ、アデル」と手の痛みを忘れて声を限りに叫んだ。
「‥‥‥」
そこに全員が駆けつけてきた。
「アデル‥‥‥」
全員が駆けつけてきたが、俺はみんなが来る前に、カメに向かって動いていた。
「‥‥‥」 俺は無性に怒りが抑えきれない。
その時、またカメがファイヤーブレスを吐いた。
「くそっ、こんなカメに大事なアレクが‥‥‥」
「くっそ〜」と大声で叫んだ俺は怒りを抑えきれないところか逆に冷静に落ち着いてきた。
そしてカメを見た。
「こいつが、こいつが‥‥‥」と冷静だが燃え上がる心がある。
俺の体が黄色に輝き始める。黄色を通り越して金色になっていく。
全身を金色に輝かせながら、俺はカメを見据えて、初めて使う技を発動する。
俺が初めて使ったのは神の力「重圧」だ。
カメ周辺にだけ、すごい圧力をかけていく。
重圧を使った途端、カメは立っていられなくなり、それでも逆らおうとして手や足が折れた。
「バキバキッ」といろんな所で骨が大きな音を立てる。
カメが立っていられなくなり、地面に平伏す。
なおも俺は、止めることなくカメに向けて重圧を強めていくと、甲羅にヒビが入って広がっていく。
そこ甲羅がカメの中身ごと潰してしまう。潰されたのは甲羅だけじゃなく、頭も足も手も潰れて巨大カメは息だえた。
「‥‥‥」俺は息を大きく吸って吐く
重圧は消えてしまい、俺の体の輝きも無くなっていく。
俺は、そこで意識を失って落ちていく。
落下しながら、考えることはアデルのこと、目を開けながら自分では、どうしようもなく落下していく。
そして俺は意識を失った。
*
どれくらい時間が経ったか、わからないが、俺が意識を取り戻して目を開けた。
どこに寝ているか、わからなかったが、徐々に明確に頭が働き出した。
「はっ、アデルは?」と飛び起きた。
目の前にはアデルの姿があった。
「ほら、謝りなさい」とジャネット
「ごめんなさい、ご主人さま」と言って頭を下げるアデルがいる。
俺が、また地面に寝てしまった‥‥‥いや、地面じゃないや、上をみるとアリシアが心配そうに見ていた。
俺は一度、起きたのに、もう起きれなくなっていた。
俺の手は誰かが治してくれていた。
「クリス、大丈夫?」
「うん、ちょっと大丈夫じゃない」というとロゼッタがアデルの頭を叩いていた。
「痛あ〜い」とアデル
「本当に、ご主人さま、ごめんなさい」
「アデル、もう2度とごめんだよ」
「‥‥‥はい」とアデルは下を向いた。
後で話を聞いたらカメのファイヤーブレスがくる直前に転移したそうだ‥‥‥
アデルが叱られているのを聞いていると眠くなって目を閉じてしまった。
アリシアが小声で「ちょっと、クリスが寝てしまったから、しーっ」と指を唇に立てた。
リアムとエマもネコの姿にもどって俺の横に二人して丸くなって寝ている。
*
「‥‥‥‥‥‥っ」俺がハッと目を覚ましたのはアリシアの膝枕の上。
どれくらい時間が経ったか、わからないが、俺は立ち上がることができた。
「アリシア、ありがとう」
「ううん、いいのよ、クリス」と言って俺はアリシアに手を貸して立ち上がってもらった。
みんなの方に向かって歩きながら、考える。
今まで使ったことがない力ちから‥‥‥
魔法というのもじゃない、魔法レベルじゃない。
神の力を発動させてしまった、その反動は大きい。
体が異常にだるい‥‥‥また、今にも眠りそうだ。
俺がフラフラしながら歩いていると「クリス、大丈夫?」とイザベラが横に来てくれた。
「ああ、なんとか」と答えるのが精一杯
反対側にはアリシアが来てくれて両方で支えてくれる。
そこに司令官がやってきて、俺の様子を見て、何も言わずに「あとは、任せろ」と言ってくれたので、俺は頷くだけ
そして空間は俺が開くことしかできないが、やってみると空間が開いたので、全員で中に入る。
俺は両脇から支えられ、自分の部屋まで連れて行ってもらった。
開けられた扉から全員が心配そうに見ているけど、俺は喋る元気もない‥‥‥
魔法が渇望したという現象ではく、多分、神の力を初めて使った後遺症だろう。
それを全員に念話で伝えて心配しないように伝えた。
俺をベットに寝かせて、心配そうな顔をしていたが、みんな出て行った。
俺1人になって、あの力のことを考えてみたが、次第に眠くなり、いつの間にか寝ていた。
*
目を開けて時計をみたが、1時になっていた、夜の1時? 昼の1時? ここには日がささないので、わからない。
まだ、だるさがあるが、寝る前よりはいい感じだ。
俺が部屋から出ていくと、全員がテーブルに座っていた。
心配そうな目を向けられ、俺の方が、病人みたいな気分になってしまう。
「みんな、もう大丈夫だから」と言った。
アデルが立ち上がって「ご主人さま、本当にごめんなさい」と言った
「アデル、俺は君たちの1人もいなくなることを怖がっている面がある、その結果だろう」
「そんな、ご主人さま」とジャネット
「いや、その通りだと思う、今回のことでよくわかったと思う。
君たち神獣の力を見誤っていたと。
もっと信用するよ」
「ご主人さま、ありがとうございます。私たちを大切に思ってくださって」
と言って神獣たちが一斉に立ち上がって頭を下げた。
「でも俺の命令は絶対だよ」
「はあい、ごめんなさい」
「それでクリス、本当に大丈夫なの?」
「ああ、まだ後遺症はあるけど、寝る前とは違うよ」
俺が椅子に座るとソフィアが俺の前に紅茶を用意してくれた。
「ありがとう、ソフィア」と言って紅茶を飲み始める。
「でも、昨日のクリス、すごかったね」
「えっ、昨日っていうことは、今日は、やっぱり昼過ぎ?」
「そうだよ、お寝坊さん」とアリシア
昨日は、確か終わって頃は昼すぎだったはず。
ということは丸一日、寝ていたのか?
「昨日のあれは、神の力だよ」
「えっ、神の力?」
「そう、あのパワーに体がついていかなかったんだ」
「やはり、そうですか」とジャネット
ジャネットが「あの時のご主人さまは、異常な状態でした」
「うん、自分でもわかるよ、そんな気がしたから」
「あんな強い奴をご主人さまが1発で倒しましたからね」
「でも、これからは、あんな奴が出てくるかもしれない」
「えっ」
「そんな‥‥‥」
「たぶん、ウルフの奴は生きている‥‥‥」
「でも過去に行ってレイチェル様に頼んだんでしょう?」とアリシア
「そうよ、レイチェル様が裏切るなんて思えない‥‥‥」とイザベラ
「そうですよ」とシャーロット
「いや、たぶん、レイチェルじゃない、正確にはわからないけど、レイチェルじゃない」
「それじゃ、誰なの、生命を与えることができるのは生命の神クリスティアナ様だよ」
「それじゃ生命の神クリスティアナ様なの?」
「いいや、それも違うと思う」
「じゃ、誰なの?」
「創造神ナサニエルだと思う」
「でも命を与えられるのは生命の神クリスティアナ様だけでしょ」
「なんらかの方法でウルフを再生したんだと思う」
「でも、生まれていないのを、どうやって?」
「そこが問題なんだ」
「どこかに、何かの方法があるんだと思う」
「その理由は?」とアリシア
「今回の巨大カメの出現だよ」




