救世主への道11
第551話 救世主への道11
俺はレイチェルに確認して創造神ナサニエルが生命を生み出すことはできないということを確認した。
ということは、ウルフを過去から連れてくることしかない。
*
神が、そのことに気がつくのか?
しかし、どうしてウルフを、あの時、殺したのか?
疑問が残るが、わからないことは、考えない方がいいだろう。
今は俺の故郷の村にいて、それは3年前。
ウルフたちが襲ってきた無茶苦茶になってしまった。
しかしアリシアたちは、魔物が襲ってきたのを防いでいた。
全ての魔物を倒しているので村の家の結界魔法を解除した。
村に入ることはできないので、透明になりながら様子を伺う。
俺たちは全員で村の中に入っていく。
俺たちは、まだ何も変わっていないように思える。
アリシアの方を確認してみるが、いつものアリシアに見える。
村の門を入り、、俺たちの家に近づいていく。
アリシアを先頭に歩いていくが、徐々にアリシアの足取りがゆっくりになる。
俺の家を過ぎてアリシアの家に近づいていく、しかしドアを開けることはできないためアリシアは窓を覗き込んだ。
窓を覗き込んでいたら、小さいアリシアが家に帰ってきた。
「ただいま〜、お父さん、お母さん」
「もう、アリシア、洋服が、泥だらけね」とお母さん
「また、川の近くでクリス君と遊んでいたのかい」とお父さん
「うん、もうクリスったらね、走るのは遅いし、木には登れないし、ほんと、嫌になっちゃう」
「ははっ、アリシアの方がお転婆だからだろう、クリス君もかわいそうに」
「えっ、そんなことないよ」
「ほら、着替えていらっしゃい」
「は〜い」と言って小さいアリシアは部屋に入っていった。
アリシアが窓から離れた。
「もう、いいのかい」
「うん、ありがとう、クリス」アリシアは目に涙を溢れんばかり溜めている。
「よかった‥‥‥、お父さん、お母さん、こんな日が来るなんて‥‥‥グスン」
目から涙がこぼれ落ちる。
「みんな、ありがとう、私の両親を守ってくれて」
「よかったね、アリシア」とソフィア
「うん、ありがとう、ソフィア」
「本当ね、クリスに感謝しなさいよ」とイザベラ
「うん、わかっている」
「アリシア、よかったね」とコリン
「うん、ありがとう、コリン」
俺の方にアリシアが歩いてきて「クリス、あり‥‥‥」というとアリシアが消えた。
「‥‥‥」俺は、このことを予感していた‥‥‥
「えっ、アリシア、どこに行ったの?」
「アリシアは?」
「アリシア、どこよ」
「アリシア〜」と呼んでくれたが、どこからもアリシアの声は聞こえてこない。
「みんな、聞いてほしい、これが過去を変えた代償だよ」
「えっ、クリス、こうなること知っていたの?」とイザベラ
「知っていたというより、予想していた‥‥‥」
「ご主人さま‥‥‥」ジャネット
「過去を変えるということは、何かが変わってしまうんだ、アリシアが村を出なかったのかもしれない‥‥‥」
「そ、そんな‥‥‥」とソフィア
「いや、事実、アリシアがいなくなったのが真実だよ。
アリシアは3年前に魔物に襲われることはなかったということだね。」
「それじゃ、ご主人さまも覚醒は?」
「いや、多分、今じゃなく、俺は、どこかで覚醒したと思うけど、ここじゃなかったということだね。
俺には変化がないから‥‥‥」
「それじゃ‥‥‥」
「そう、アリシアと冒険した記憶もなくなる可能性があるよ」
「えっ、そ、そんな」とシャーロット
「うん、シャーロットとの出会いもなかったことになる」
「それじゃ」とイザベラ
「そうだね、俺が3人に合わなかったということも起きるし、もし3人にギルドで俺が声をかけなかったということもあり得るんだ。
それが今から起きること‥‥‥」
「クリス、そんな悲しいこと予想していたの?」
「うん‥‥‥」
「ごめんね、全員の記憶の中のアリシアはいなくなるかも‥‥‥」
「クリス、ひどい」とソフィア
「ごめんよ」
「みんな、ご主人さまが一番、辛つらいんだよ。そのことをわかってあげようよ」とジャネット
メンバーの中からアリシアの記憶が徐々に消えていくことだろう。
アリシアは村で平和に過ごせて親と共に暮らすことができてよかった。
俺はアリシアの両親が魔物に殺された日のことを今でも鮮明に覚えている。
俺にとっても悲しい記憶だけど、アリシアの悲しい顔を見たくないんだ。
明日になったら全員の記憶から、消えていることだろう。
‥‥‥
アリシア、よかったね。
*
しかしアリシアが村で暮らせるのは、あと6年、
俺たちの時代から、3年後には世界が終わってしまう。
「じゃ、みんな、帰ろうか」
「‥‥‥」
1人も何も言わない‥‥‥
みんな顔を下に向けている。
時間を変えるということは、初めてだけど、これほど辛いのか?
時間を変えて、アリシアが両親と共に暮らせることを選んでしまった。
俺も足が遅くなり、振り返るが、そこには暖かそうな家があり、煙突から煙が出ている。
アデルが叫んでいる「アリシア〜」と言って戻ろうとしているがアレクとエイミーから手を引かれて抑えられている。
全員が泣きながら、トボトボと歩いて門を出る。
俺たちは透明になっているので、村人からは見えることはない。
魔物が襲ってくることもない村は平和で、夕飯の支度が始まってきた。
俺たちは全員で村の門の前に向かい涙する。
「グズッ、アリシア」とイザベラ
今は俺たちの記憶にはアリシアは住んでいる。
しかし戻って明日になれば、どうなるか、それはわからない‥‥‥
俺たちは悲しみの中、現世に戻ってきた。
何も話すこともなく、それぞれの部屋に帰っていく‥‥‥
俺も自分の部屋にいき、ベットに倒れ込むようにして顔を下に向けた。
枕を引き寄せて、顔を埋めて‥‥‥
いつの間にか、俺は寝ていた。目を真っ赤に腫らしながら‥‥‥
時計を見ると、もう夜中の3時だった。
あの時、ウルフと魔族さえいなかったら、うまくいっていただろう。
もちろん、うまくというのは、アリシアが魔物に棍棒で撃たれて瀕死の重傷を負い、俺も死ぬ目に遭うのが条件だが。
俺は何も考えもせず、アリシアの部屋にいく‥‥‥もうみんなは寝入っている頃なので、静かにアリシアの部屋のドアを開ける‥‥‥一瞬、アリシアがいるような気がしたが、そこには姿はない。
部屋の片隅にベットが置いてあるだけ。
そこに座って、俺はしばらくぼーっとしていた。
心にでっかい穴が空いたような感じだ‥‥‥静かに時が流れていく‥‥‥
俺は、いつの間にかアリシアの部屋のベットで寝ていた‥‥‥
そして夢を見ていた。
村でアリシアと木に登ったりしたこと、かけっこをしてアリシアに文句ばかり言われたこと、小さい頃はアリシアと一緒にお風呂に入ったこと‥‥‥走馬灯のように、こんな時に限って思い出す。
楽しい記憶‥‥‥アリシア‥‥‥アリシア‥‥アリ‥シ‥ア




