救世主への道8
第548話 救世主への道8
アリシアを昔の村にいてもらって、魔物を倒してもらうが、一度は痛い目に会うことになる。その痛さが覚醒の切っ掛けだから。
アリシアには申し訳ないが、俺が覚醒することが条件に入っているが、もしかしたら、ああならなくても覚醒手段はあったかもしれない。
俺の両親を先に殺しても、俺が生まれることは無くなるわけだし、しかし、どこかに俺が生まれていると思う。クリスという名前じゃなくて‥‥‥。
たぶん特異点の俺は、時代が生み出す子供だと思うし、神クリスティアナが関与している可能性もある。
特異点がクリスという名前ではなく、それだけの能力を持ったものという意味合いもある。
じゃ、なかったら世界を変えられるわけない。
俺は今、時間に関与しようとしているわけだから、アリシアの親を生き返らせるということは歴史に関与してしまうことになり、その瞬間から何かが変わることだってある。
過去を変えるということは、存在しない人間がいて、消えたりすることもあり得る。
死んでいる人が、本当は死んでいないことになり、生きているわけだから、影響があるのは、当然だと思うが、アリシアの親が殺人をする訳でもないから、多分、影響は小さいと思う。
しかし、親が生きていてアリシアに兄弟ができると、また違ってくる。
その兄弟が、生きていくことで、変化が起きるのは、ごく小さいことだと思うから、俺みたいな特異点じゃないかぎり大丈夫だ。
たぶん、修正されると思われる、それよりも俺はアリシアの記憶も心配だ。
アリシアが俺たちのメンバーになっていないことも考えられるからだ。
俺が15歳の時に村を出て、約1年後にアリシアがメンバーに加わることが変化してしまう可能性の方が問題だ。
もう俺は救世主として動くことを決めたので、変えることはできない。
親を生き返らせると聞いた時のアリシアの笑顔といったらないくらいによかった。
アリシアの親が生きていると俺の家で過ごしたアリシアとの思い出は無くなってしまうだろう。
それでも、アリシアの笑顔には勝てない‥‥‥
俺は寂しく思う‥‥‥
*
俺はアリシアと別れてウルフの気配を探る。
今、残っているメンバーは、ジャネット、ロゼッタ、パトリシアの神獣たち、そしてソフィア、イザベラ、コリン、シャーロット、セラフィーナになる。
この8人でウルフを追うことになった。
「ジャネット、時代を超えて気配を追うことは可能?」
「難しいことを言いますね。やってみたいとはっきりとしたことは言えません」
「じゃ、みんなアリシアたちが、どこにいて何をしているか、わかる?」
俺は全員に聞いてみた。
ジャネット「無理です」といってきた。
「じゃ、みんな、聞いて、基礎魔法を纏って‥‥‥
そして感覚を研ぎ澄ましていくんだ、全方位に、これが検索魔法だよ」
イザベラ「難しいことを平気で言うわね」
「イザベラ、集中」
イザベラ「‥‥‥」
神獣たちは大丈夫みたいだけど、他のメンバーは難しいみたい。
「基礎魔法を広範囲に展開することができたら、それを遠くではなく過去に戻っていくんだ」
「あっ、なんとなくわかってきました。過去に戻るって言うことでいいんですね」
「そう、難しく考える必要はないんだよ、俺の魔力を込めた指輪をしている訳だからね」
「あっ、私も掴めてきたかも」とパトリシア
「わしもじゃ」とロゼッタ
「広範囲に広げることと、過去に遡っていくイメージでいいと思うよ」
「はい」とジャネットが手をあげた。
「ジャネット、どうした?」
「はい、アリシアが見えました」
「うん、アリシアは何をしている?」
「アリシアは木の影で身を潜めているみたいですね」
「そう、その通り、やったね、ジャネット」
「はい、ありがとうございます」
「はい、わしもじゃ」とロゼッタ
「ロゼッタ、アレクとアデルは何をしている?」
「アリシアの後ろでお菓子を食べているのじゃ」
「そうだね」
これでジャネットとロゼッタは大丈夫。
あとはパトリシアができるようになれば、かなりの戦力になる。
「あっ、私、できたかも」と手を挙げたのはソフィアだった。
「えっ、ソフィア、できたの?」とイザベラ
「うん、まだ、朧げだけどアリシアたちが見えた」
「あっ、私も」といって手を挙げたのはコリン
「私も見えました」とやっとパトリシアが手をあげた。
あとはイザベラだけ。
「難しいわね」とイザベラ
イザベラが何回も挑戦しているけど、難しいみたいだ。
俺がイザベラの横に近づくとイザベラは顔を上にむけ「なによ」といってきたけど、今は、大切なことだ。
俺は嫌がるイザベラの横に立ち鑑定魔法で確認してみる。
イザベラのできない原因を探るために。
鑑定魔法でイザベラが、どうしてできないか確認してみた。
そうするとイザベラが、どうしてできないのか、わかった。
「イザベラ、イメージができていないみたいだよ」
「えっ、やっているんだけど‥‥‥」
「じゃ、イメージをもっと明確になるようにアリシアに持っていってごらん」
「えっ、アリシアをイメージすればいいの?」
「そう、アリシアは、今、3年前の俺たちが行った村にいるから、その村の景色とか、または、そこにアリシアがいることをイメージしてみて」
「うん、わかった、やってみる」
イザベラはアリシアのイメージをすることで、うまくいきそうな感じだ。
「あっ、アリシアが見えた」
「うん、よかったね」といったらよっぽど嬉しかったのか、俺に腕を回して抱きついてきた。
「ありがとう、クリス」
それをみていたシャーロットが「イザベラ、ずるい」
「そうですよ、イザベラ、ずるいです」とセラフィーナ
「まぁまぁ、イザベラも努力しているんだから」と言ったところでイザベラが離れた。
「クリス様、顔が赤いですよ」とシャーロット
「えっ、そう?」
「もう、勇者だって、男ですね」とセラフィーナ
「そ、それよりもみんなができてよかったよ、あとは練習だよ」
「でも、どうして、こんなことがすぐにできるのよ」とイザベラ
「えっ、俺にもわからないよ」
「まぁ、それは、ご主人さまは勇者だからかな?」とロゼッタ
「何よ、それ、答えになっていないわよ」とイザベラがむくれる。
頬を膨らませたイザベラが笑いをそそる。
「さぁ、みんな、世界を監視してみようか」
俺はアリシアと共にいる分身体を確認して、異常がないか見てみたが、まだ大丈夫だ。
9人で世界を監視すると言ったが、世界じゃなく今現在の幾重にも経過してきている時間。
無茶苦茶、膨大な量になると思える。
でも、こんなことをやっていても、らちが明かない。
う~ん、どうしようかな。 なにか良い方法がないかな?
9人で全ての時間を監視するのは難しい。
「………」
!っ、あっそうだ。
「みんな、ちょっと聞いて」
「たった9人で時間の監視をするのは、難しいから良いことを思いついた」
「なに?」とソフィア
「みんなはウルフのことを知っているよね?」
「うん、知っているけど」
「あっ、その気配をみつけるんですね」とジャネット
「さすが、ジャネットだね」
「えっと、あまりイメージしないくない相手だけど、ウルフの気配というか、魔力といったらいいか、それを探すんだ」
「了解」
ジャネットが「さぁ、やってみましょう、あまりイメージしたくないですが‥‥‥」




