指輪と戦い
「おはよう、みんな、早いね」
「クリスが、遅いんだよ」とアリシア
「そうですよ、もう7時ですよ」とパトリシア
「さぁ、早く食事を済ませて」とソフィアからも言われた、なんだか今日は全員が張り切っている。
「あっ、そうだ、昨日、預かっていた指輪を返すね」と言って指輪をテーブルの上に置いた。
全員の指輪には昨日と違って、花びらがあしらわれている。
指輪を1つ取り「この花びらの指輪はコリンだね」と言ってコリンに渡そうとして手を伸ばしたけどコリンが立ち上がって俺の前まで歩いてきて手を差し出した。
そして指を立てて「んっ」と一言。
指に、はめろと言う意味だな。
俺はコリンの指に指輪をはめてあげた。昨日はシンプルだった指輪と違い、今回は、デザインされているので、コリンはデザインが気に入ったのか嬉しそうに指輪をじっと見ている。
それを見ていた全員がジャネットやロゼッタやパトリシアも入れて、俺の前に並んだ。
「うわっ、昨日と違うんだね」アリシア
「うん、昨日は試作品だけど、今回のはバージョンアップ品だよ」
「えっ、昨日と違うの?」
「うん、違うのはデザインだけじゃないよ」
「どう違うの?」
「昨日の指輪とは数段、魔法が使いやすくて、威力も増しているんだ。朝食を済ませたら使ってみるといいよ」
「じゃ、私たちは朝食を済ませたから、先に行っていい?」とアリシアが使いたくてウズウズしている。
俺が空間の入り口を、昨日と同じところにつなげて開く。
空間から女性たちが全員、出て行ってしまうと、一気に静けさが残る。
俺の食事を済ませて、出ることにした。
みんなが指輪の魔法を使っているところを確認する必要がある。
俺は、素早く食べ終えると片付けを済ませて、空間から出てきた。
空間から出ると威力があるファイヤーボールが俺に向かってくるところだった。
「おっと、危ない」と行って避けたけど。
「あっ、ご主人さま、ごめんなさい」とアレク
「あっ、うん、大丈夫だよ、続けて‥‥‥」
俺が確認もせずに練習場所に出てきたんだから。
でも、威力がかなり高かったから、危なかった。
あっちこっちで地形が変わっているところがあったり、木が立っているところが、木がなかったりしている。
流石に他人がこれだけ大規模な魔法を行使しているところを初めて見たけど、すごいな。
魔法を使うことが楽しいみたいで、地形の変化なんか気にしていない。
俺の魔法が入っているから、俺と同程度のことができるんだけど、凄すぎる。
俺も魔法を使っているときは、他の人がみると、こうなのか?
すごい、凄すぎる。
こんなものを見せられたんでは、俺にも火がついてしまう。
「みんな、練習は、それくらいにして、次の現場に行くよ」
普通なら走ってくるところを、全員が瞬間転移して俺の元にきた。
転移しても、同じところに転移しないように配慮しているから安全だけど。
「クリス、今回のは昨日よりもいいね」とアリシア
「うん、私も、そう思う」とソフィア
「あっ、私も」とジャネットも言い出した。
「みんなも、思うよね」とアリシア
「うん、全然、違う」
「バージョンアップされて良くなったみたい」
という意見が多かった。
「これで指輪をしばらく使っていくけど、何か使いにくかったらすぐに言うんだよ」
「うん」
「はい」
「わかった」‥‥‥
「じゃ、次の現場だよ」と行って俺が補助しなくても空中に浮かんでいくけど、すぐに高速になっていくが、しっかりと結界魔法が同時に働いているみたいで寒さも息苦しさも風も直に当たることはない。
もうレリックはないはずだ。しかし、前線にいる魔物や魔族には、伝わっていないんだろう。
まだ多数の場所で魔物や魔族が出現している。
魔物や魔族がいる限り向かわなければならない。
俺たちは高速で飛行しながら、次の目的地に飛んでいる。
俺はメンバーの命の方が大切だから無理はさせない。
休養と寝る時間、そして食べる時間は必ず確保する。
俺たちは便利屋じゃない。 加盟国以外には本来なら出向く必要もない。
*
俺たちは高速で飛行して魔族と魔物が多数、いる場所に出てきた。
いつもと同じように指揮官がいると思われる場所を探すけど、見当たらない。
それじゃ、兵士や騎士に聞けばいいかと思って、上官を探してみたけど、それらしい人もいない。
なんだ、この現場は?
誰かが指揮していたり、命令をすることもなく、戦っているような気がする。
誰かが指揮している方が、話がしやすいんだけど、どうしようかな?
仕方ない、個別に参加させてもらおう。
俺たちは目立たない木の木陰に降りて、そこから地上を徒歩で歩いていく。
歩きながら「みんな、指揮官は、どこにいるかわからないから、とにかく魔物と魔族を倒して行こう」
「うん」
「わかった」
「了解」という声が聞こえて行動開始する。
俺は「危ない時は転移を思い出すんだよ」と小声で言う。
「うん、わかっているよ」とアレク
レリックの指輪を使っての初戦闘だから、どうなることやら‥‥‥。
前線の後方から俺たちは歩いていく。
前の方では騎士の人が戦っているけど、あんな思い鎧をつけたままで、よく動けるよな、鎧をつけている方が疲れを生むんじゃないかな?
鎧は剣が自分に刺さらないようにしているわけだけど、それ相応の重さがあるからいくら体を鍛えているといっても、必ずどこかで疲れが出てくる。
だから戦えば戦うほど時間の経過とともに動きが悪くなってしまう。
騎士の人がマントまでつけて戦っているけど、馬鹿じゃないのか?
つけているマントで剣を防ぐことができればいいけど、いいとこ、目眩ししかならない。
俺たちなんか、今まで鎧を使ったこともないしマントなんて羽織ったこともない。
俺たちは以前、お揃いで作った服を着ている。
女性たちは短パンだったり、長いのもあれば、膝くらいまでのパンツを履いているけど、動きを重視して作ってもらった。
俺のだけはデザインはちょっとだけ違うけど色は揃えている。
全員のデザインが同じではないけど色が統一されていると戦いの場でも見分けやすい。
短パンを履いているのは、エイミーとアイリスとアデルとアレクだ。
残念ながらミニスカートはない。
第一の空を飛ぶことがあるからね。
しかし、指揮官が来ていないのか、どうなっているのかわからない現場だ。
俺たちの前方では、兵士、騎士、そして冒険者がいる。
俺たちは、最前線で戦っている人たちの横を過ぎて行こうとする。
「おいっ、前へ出ると危険だぞ」
「俺たち、援軍に来たんで、下がってもらえますか?」
「お前たちみたいなのが参戦したって、勝てるわけないだろう? 見たら子供が多くて大人の女性は5人かよ」
「そうだぞ、お姉ちゃん、みんなを連れて下がれよ」とジャネットに向かって行っている。
「えっ、私?」
「えっ、君がボスじゃないの」
「違いますよ、こちらのご主人さまです」と俺をあ示す。
「ええっ、君が率いているの?」
「あっ、はい」
「あのね、君、ここはお遊びの場じゃないの」
「そうだぞ、貴族だろうけど、僕みたいな人がメイドを連れてきたって勝てないぞ」
「えっ、私たち、メイド?」
みんなが顔を合わせて唖然としている。
と途端に笑が沸き上がった。
「ハァ〜、面白い」
「ホントだよ、初めてだね、そんなこと言われたの」
「ほんと、ほんと、面白いね」
どこかの貴族のボンボンが女性たちを率いて戦場に来たと思われているみたいだ。




