魔法陣3
幼年組のエイミーが魔法陣に詳しいなんて、俺、知らなかったよ。
幼年組と言ってもエイミーやアイリスは、人の年齢ではないので、もっと長く生きている。
見た目が幼年組と俺が思っているだけで、実際は、俺より年上だろう。
エイミーが、本当に魔法陣に詳しいことは、あとでわかることになるけど。
魔法陣を見ていたエイミーが、顔を上げて、「ご主人さま、分かりました」と言ってニコってした時には、かわいいな、と思ってしまった。
「ご主人さま、この魔法陣は、空間の魔法陣なんですが、空間の種類が違います」
「空間の種類が違う?」
「はい、そうです」
「空間に種類が違うなんてあるの?」
「はい、ありますよ、ご主人さまも薄々、気がついていたでしょう」
「うん、少しね」
「じゃないと、このカーペットを持ってきたりしませんよ」
「あっ、なるほど、それで、何がわかったの?」
「あのですね、この魔法陣はご主人さまが、今まで作っていた空間とは違うと言うことですね」
「俺の空間とは違う‥‥?‥」
「はい、空間にも次元が違う空間があるみたいです」
「もしかしたらウルフの奴は、その中にいるし、移動している?」
「はい、だと思います。
この空間は、説明が難しいんですけど、この星には存在しないんです」
「えっ、存在しない?」
「そうです」
「えっ、それって、どう言うこと?」
「この星にウルフが見えるのは、それは幻影です。つまり幻まぼろしのような感じです」
「じゃ、本体はどこにいるの?」
「ウルフがいる世界は、この星ではなく、違う世界です。
つまり神レイチェルが支配している、この星じゃなく、違う神が支配している星です」
「それを、どうやってか、分かりませんが、この世界に影響を与えています」
「もしかして、それって大変なことじゃない?」
「はい、そうです」
「多重世界と言う言い方になります」
「多重世界‥‥‥
それじゃ、多重世界なんて、どうすればいいんだろう?」
「ご主人さま、ご主人さまならできるはずですよ」
「えっ、俺ならできるって?
不可能なことを平気で言っているような気がするけど?」
「いいえ、ご主人さまなら可能なんです。
私は、魔法陣と異世界を研究していました。
これが、やっと実を結びます」と言って嬉しそう。
「やり方はあるの?」
「はい、私が、今までご主人さまを見てきて、ほとんどご主人さまは能力を使っていません」
「えっ、俺、使っているつもりだけど‥‥‥」
「いいえ、ご主人さまの能力は、こんなものじゃありませんよ」
「えっ、わかるの?」
「はい、もちろんですよ。私の得意分野ですよ。
私は、仲間の中でも、研究をするのが、専門ですからね、誰にも負けません」
「へー、そうなんだ」
「お姉ちゃんたちよりも、能力のことや魔法陣は専門ですよ」
「それは、頼もしい」
「はい、頼ってください」
「じゃ、俺の能力についてだけど、まだ、余力があるつてこと?」
「余力があるというよりも、ほとんど、使っていないじゃないですか?」
「‥‥‥ どうやれば使えるか、分かりません‥‥」と正直に言った。
「あっ、そうだったんですか?」
「うん‥‥‥」
「じゃ、聞いてくれればよかったのに」
「エイミーが、詳しいなんて今、初めて知ったから」
「あっ、そうですね」
俺が気を取り直して「エイミー先生、教えてください」と言うと
エイミーは、「もう、しょうがない生徒ですね」と乗ってきた。
「はい、先生」
「はい、なんでしょうか?」
「能力の使い方、教えてください」
「はい、それはですね、簡単なんですよ。
ご主人さまは、魔法を使う時には、どうしていますか?」
「はい、俺は、イメージするだけで使っています」
「そうでしょうね」
「それの何がいけないんですか?」
「その魔法の使い方はクリス様の個人の使い方ですよね」
「あっ、はい、そうです、今、改めて言われると、そうです」と俺は、まだ膝の上に座ったままのエイミー先生に答えた。
「はい、クリス君、君は勇者でしょ」
「はい、今は勇者の称号は、どうしてか分かりませんけど、勇者だと思います」
「神レイチェル様は、クリス様が、勇者だとおしゃいましたよ」
「はい、聞きました」
「なのに、信じていないんですね」
「俺が勇者の称号に気が付いてから、すぐに勇者の称号が消えましたからね。なんだか自分でも勇者だと思えなくて」
「それがいけないんですよ」と言いながら、エイミーは向きを変える。
つまり、俺の目の前にエイミーの顔があるわけだ。
「ご主人さまは、今でも勇者なんです。でも勇者より上の神の称号がついたから、消えたと言うよりも、勇者の称号なんか、いらなくなったと言って方が良いと思います。
神ですから、勇者よりも上でしょ」
「はい、そうです」エイミーが捲し立てながら顔を近づけてくる。
「はい、はい、エイミー、こっち座ろうか?」とアリシアが、エイミーを抱っこして自分の膝に座らせる。
「あーん、ご主人さまの膝の上がいいのに」
「それで、エイミー、先の話をして」
「ご主人さまは、もっと、堂々としていないとダメですよ。
バカな勇者よりは断然、いいですけど。
俺は勇者なんだから、俺が一番なんだ、くらいに思ってください。
そうしたら勇者の魔法力がご主人さまに自然と何もしなくても集まってきますから」
アリシアが「クリスの性格だね、昔から、私の後をついてくるような男の子だったから。俺様って感じじゃなかったから」
「うん、まぁそうだね」と言って頭をかいている。
「でも、クリスって、変わってきたよね、本当にさっきも魔法書を読んでいたりするときなんか、後ろからだけど見ていて、ドキッとするからね、みんなも、こんなクリスだから、ついてきたわけだし」
みんなが頷いている。
特にセラフィーナとシャーロットがの二人が腕を組んで頷いている。
「でもクリス、世界を救う救世主になるんだから、そろそろ、俺様もいいんじゃない?
あの時の司書長に言ってくれたように」
「ねぇ、アリシア、何があったの」とイザベラが聞いてきた。
「あの、ちょっと急ぐから、また、後でね」と俺は言ってアリシアの膝に座っているエイミーに話しかける。
エイミーは「ご主人さま、今でも、俺は勇者だ、何回か言葉で言ってください」
「俺は勇者だ、俺は勇者だ、俺は勇者だ、俺はゆ‥‥‥」
その時に異変が起きた。俺が勇者だと言うたびに自信みたいな魔力が俺の周りに渦巻いている。
「そう、それが勇者の闘気です
それをもっと魔法力の練習みたいに濃くしてください」
こんな近くにあったんだ、俺は心の奥で、『俺は勇者だ』と何回も唱えることをしていくけど、それだけじゃないような気がして、ドラゴンと戦う勇者のシーンを思い描いたり、勇者として巨大な魔物と戦うシーンを思うことにした。
なんせ、俺は今までイメージで魔法を行使したりすることをしてきた。
勇者をイメージすると言うことは、見たこともないから難しいけど、物語に出てくる伝説の勇者という勝手なイメージを作ることにした。
エイミーが「そうです、それが勇者としてのクリス様のお力の一端です」
「すごい」クリス
「圧倒される」とイザベラ
エイミーが「今までは勇者としての力を使っても、勇者の一端の力しか使っていませんでしたから。
ご主人さま、今、ご主人さまは、目の前にあるカーペットを見ても、魔法陣なんか、使わなくたって、わかるんじゃないですか?」




