新たな試練
僕たちはオーリス王国に戻ってきた。
しょっちゅう、この国に戻ってきているけど、何かのことが終わって戻ってくると本当に、戻ってきたぞーと言う感じになる。
本当に今までいろいろな魔法を研究したり、開発したり、学んだりしてきたが、魔法といっても万能なものはなく、いつかは魔力が尽きる時もある。
そのためには、もっともっと自分の能力を高めておく必要がある。
最近は特に、自分の屋敷をマラソンしたりすることや体を鍛えることもやっている。
魔法を使えば使うほど体力を消耗してしまう。
魔法を使う上でも、体力や運動力と言うのは大切なものだ。
どこかのヒーローのように魔法力は、無限大にあるわけではない。
そのために今度は、本業の冒険者として活動しようと思う。
今の俺は最高ランクのSSSランクの冒険者だ。
しかしSSSランクを持っていても、剣術で取ったわけではない。
魔法でもらったわけでもない。
全てが切っ掛けでしかない。
と言う事は実力を伴っていない。
偏ったSSSランクの者もいるだろうけど、人物的にも、及ばなければ意味は無い。
メンバーもそう思っているから、朝のトレーニングは欠かさない子時間があれば走り込みをしている。
普通は、魔法か剣かのどちらかだけど、俺たちは両方を鍛錬している。
基礎魔法を展開して、刀で斬りつけられても大丈夫なように訓練は積んでいる。
しかし、それは、基礎魔法を展開している場合だけだ。
さらに鍛えるためには、やはり冒険者が一番だと思う。
パーティーメンバーを集めて、「3日後から冒険者ギルドに行って依頼を受けようと思う」と言った。
どんな依頼があるか冒険者ギルドに行ってみないとわからない。
最近は本当に冒険者ギルドに行く機会がなくて、依頼表を見ることさえなかった。
もちろんパーティーメンバーだって行かないと言う可能性だってあるので、全員の顔を見ながらお伺いを立てると、反対するものはいなかった。
そして全員に爆弾発言をする。
「 全員に聞いて欲しいんだけど、実は、前世の記憶があるんだ。」
アリシア以外は、驚いたような顔をしている。
「 それは今から約300年前なんだけど、その時の名前が今、使っているアルベルトなんだ 」
全員が黙って聞いている。
「その時の僕は、国王直属の魔法使いだったんだけど、その国にある時、他国から侵略を受けて戦争になったんだ。」
「侵略してきた奴らを、高名な魔法使いだった僕は、知らない人なのに多くの人を殺してしまったんだ。
殺しても、殺しても、減ることがないくらい殺戮を繰り返して、そんな生活をしていって僕の心は疲弊してきたんだ。
心が疲れてしまって、もう殺したくないと思うようになってしまった。
そう思ってしまうと、魔法の力も発揮することができなくなって、目の前にいる知らない人に胸に剣を刺されてしまったんだ。
さらに数人が僕の近くに寄ってきて、切り付けてきたんだ。
僕がこのまま死んじゃうって一瞬だけ思って相手の顔を見たら、相手も凄い怖い顔をしていたんだ。
僕は薄れゆく意識の中、どこかが暗闇に引きずり込まれそうになって意識が消えたんだ。
そして僕の意識が戻ったときには、クリスと言う少年の中だったんだ。
だから今でもアルベルトと言う名前を使ったり、クリスと言う名前を使っている。
二度と同じ過ちを犯さない…、いや犯したくはない
1人で暗闇に引きずり込もういるのは、嫌だ 」
僕は、自然と涙が落ちてきた。
次から、次から涙がこぼれ落ちてくる。
そんな時に、アリシアが僕の体を優しく抱きしめてきた。
さらに他のメンバーも、次々と僕を抱きしめてくれたり、手を握ったり、暖めてくれた。
全員が涙を流してくれた。
僕は、このパーティーメンバーを守りたいと思う。
そのために努力をするし、能力を向上させていかなければいけない。
それが、僕に与えられた試練だ。
今の公爵としての地位も、結果的についてきているだけだ。
しかし、いつも張りつめた心では、持たない。
翌日、僕たち、パーティーメンバー全員で冒険者ギルドに向かっている。




