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現実

恐ろしい黒い虚無の空間に魂を引きずりこまれた俺は、クリスの死ぬ時になって、やっと覚醒することができた。

今の俺はクリスでありアルベルトでもある同一人物だ。

両方の記憶がある。


多分、以前死んだときに、生きたい、と思ったからだと思う。自分が生まれてきた価値というか、足跡を残したいと思ったんだよね。


でも以前は、そんなこともわからずに偉そうに振る舞ったり、見下したり、いろいろな悪いことをしたと思うんだよね。


だから王国で戦争があった時に、命令だったから仕方がないんだけど、戦争に参加して人と人が殺し合うことが、どういうことか初めてわかったんだ。


本当に今考えても、あれはすごい悲惨だったね。


みんなが戦争をしたいわけじゃない。人を殺したいと思う人もいるかもわからないけど、大半はそうじゃないと思う。


家族を守りたいとか、恋人を守るためだとか。国を守るため、土地を守るため、いろいろな考えで戦争をしていたと思うんだけど、死にたいと思って戦争する奴はいないよね。


人だって家族を守るために、恋人を守るために、命令で戦争に行かなければいけないし、戦争に行けば自分を生かすために他の人を殺すことになるし、自分もいつかは力尽きて相手に殺されてしまう。


でもそういうことを考えながら、自分の力がどれほどのものかと、思うこともあったけど。


極限まで自分を追い詰めてみたいと思うこともあったけど、実際に参戦してみて思った事は、「こんなことをしたいと思ったんじゃない」という強い思いだ。


実際に平和な王国で暮らしていて、ある時突然に戦争になって、命令が降って現地に赴いて、見ることで初めて実感したことだってあるんだよ。


明日になったら、自分と言う存在がこの世の中にいないと考えただけで背筋がぞっとする。


虚しさであり、虚無感というか、何もない存在で、ちっぽけで.それがすごく嫌で嫌でしょうがなかった。


この村でクリスとして生まれて、その村にゴブリンが襲ってきて死ぬ目にあって、アルベルトとして目を覚ますことができた。


でも生まれた家は、裕福とは言えないレベルで、逆に貧しいような経済状況だったので、自分がどうすればいいのかと言うことを、昼間でも、夜でも、寝ても覚めても考え続けた。


家族もだけど、アリシアを守りたい。けどその能力と力がなければ守ることもできない。


前世が前世であり、魔法剣士として生きてきたので、畑仕事を手伝うことぐらいはできるかもわからないけど、それでいいのかと考えてしまう自分がいる。


魔法剣士と言うのは、魔法も使えるけど剣も使えるんだ。前世では、かなり得意中の得意だったから余計に考えることがある。


そしてこの世界では、15歳と言う年齢が成人であり、自分はもう大人になっている年齢に達しているので、選ばなければいけない。


自分の道は自分で決めなければいけないのが15歳。


以前にアリシアに聞いてみたんだけど、このまま、ここで暮らして畑を耕していきたいなと言っていた。


自分はどうだろうと考えてみると、やはり畑を耕したりするよりも魔物を討伐する冒険者になりたいと思う。


冒険者になろうと思う。この村にいてケインのようなことをやっていれば、お金を稼ぐにはいいかもしれないけど、自分の力を試してみたいし、どこまで能力があるのか知りたい欲求がある。


このままクリスとして、この村で生きていくのか。


それもいいかもしれないけど。


俺は心の奥底で、クリスとして初めてゴブリンに対したときのドキドキ感というか、興奮と言おうか、緊張と言うか、人として初めて「殺す」と言う行為をしたことを忘れていた。





俺が能力を隠すには理由がある。

魔法は使える人もいるけど、魔法が使えない人もいる。


そして魔法を使える人も、それぞれで魔法力が違う。


強い魔法を使える人もいれば、そうではない人もいるが、そういつ人は王族や貴族から利用されることが多くある。


俺は、利用されることを良く思わない。


能力が大きくあると、誰でも自分の欲望のために利用しようとすることもあるし、メンバーに危害を加えようとすることも考えられるし、村に住んでいる両親に影響があることもでてくる。


前世でも俺の能力の異常な強さに両親は、俺を置いて出て行っている。俺としては両親を魔物から守るために使った魔法だけど、バケモノあつかいされてしまい、今でも苦い思いがある。


それ以上に、俺の一番嫌っている戦争に、加担させることが起きるからだ。


戦争する奴は強力な力を得てしまえば、のぼせ上がってしまうこともある。


魔法を兵器として利用される。


俺が信頼している人から、漏れる事だってある。

その時には、信頼している人を、信頼を失うことだつてあり得る。。

何かの話をしている時には、誰だって失言をすることはあるから。

「他人に話すなよ」と約束しても、失言はあるから。


知らない方が良ければ、知らないで済ます事ができるし、そうすれば情報が洩れることはない。


俺の知らない所で、失言した人をさらって口を割らせることも考えられる。


普段、一緒にいるメンバーでも、アリシアでも、俺の能力を知ってしまえば奇異に思うこともないとは言えない。


たぶん大丈夫だと思うけど、絶対はないから。


前世の家族のように、俺のことを化け物と呼んだ両親の、いまでも目が忘れられない。


あの人のことを見る目が、今でも俺の心を蝕む。

一度言われたことに、俺は今でも、寂しい思いを感じることがある。


寂しい心は恐怖を生み、俺の体を縛るには十分だ。

もう、あんな思いは嫌なんだ。


挿絵(By みてみん)



感想、ブックマーク、評価ありがとうございます。


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誤字脱字がありましたら申し訳ありませんがお知らせ下さい


読んでいただきありがとうございます。


これから、どんどん面白くなりますのでよろしくお願いします

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