どうする?
クリスが住んでいた村で事件が起こります。
俺が13歳になった時、村に災害が訪れる。
俺とアリシアは、普段通りに家の手伝いをした後に2人で遊んでいた。
「クリス、あの木まで競争よ」
「えっ、遠いよ」
「なに言ってんのよ。いい、いくわよ」
2人で木まで走り始めたけど、結局はアリシアの方が走るのが早いから先に木の根元に着いた。
「 今度は木の上まで登るわよ」
「 もう少し待ってアリシア」 俺はまだ息が上がったままだ。
「はぁはぁ‥」
「 もう、クリスったらだらしないんだから」
何も答えないでいると、勝手にアリシアが先に木の上に登りだす。
俺もしょうがないなと思って、木に登っていく。
2人は、村はずれの大きな木に登って遠くの景色を眺めていた。
この木は村で1番、大きくて太くて高い木なので遠くまで見渡す事ができ、キレイな景色を遠くまで眺めることができた。
「いつ見てもキレイね、クリス」
「うん」
いつも見ている景色だけど、木の上から見える景色は、山の自然や川が見えて、俺達のお気に入りの場所になっている。
この木に登るのは、晴れていれば毎日のことだ。
しばらく景色を見ていたら、遠くの森から、まだ小さくて見えにくいけれど、人らしき数人が歩いてきた。
「うん? 誰だろう?」
「旅人かな?」
人らしき数人は、徐々に近づいてきて、それが人じゃないとわかる位置まで近づいてきた。
「なんだ、あれは?」
近づいてきたのは、魔物だった。
「大変だ」
近づいてきているのは、数匹の魔物だった。
2人とも同時に「魔物だ」と言った。
2人は、登っていた木から急いで降りて、村の人たちに知らせに行こうと思った。
二人は一生懸命に走った。慌てていたので転びそうになりながらも、やっと村に帰って来た。
「大変だ〜」
そして、すぐに村長の家のドアをたたいた。
「村長さん、大変だ〜」ドンドンと叩いても村長はすぐには出てこなかった。
「なんじゃ」
「村長さん、魔物がいる」
「お前たち、嘘を言うんじゃないよ、まったく。遊ぶんだったら他所で遊んでくれ」
「本当だよ」
「今まで村に魔物が出たことはないんじゃ」
出てきた村長に、2人は魔物が近づいていると言ったが、村長は子供のいたずらと受け取って、まともに話を聞いてくれなかった。
村長さんに説明しようとしても、焦りを感じてうまく言葉が出てこない。
説明しているうちにも、魔物は村に近づいてきている。
時間だけが経過してしまう。
もう村長さんの家の前にいる俺たちにも魔物が見える位置に来ている。
村長も魔物を見て驚いて、腰が抜けたように座り込んでしまった。
村長はすぐに行動することができなかった。
行動した時には、魔物は村人の家を襲い始めていた。
村にある見張りのやぐらも、今は交代の時間だったので人がいなくて機能していない。
やっと誰かが見張りのやぐらに登って鐘を鳴らし始めた音がしている。
「カン、カァン」
「魔物だ~逃げろ」
それだけ鐘を鳴らすと、登った人も下りてきて逃げ始めた。
この村は大きな村じゃないので、人は100人もいない。
しかも戦える男は、今は村に数人くらいだ。
もし村に冒険者でもいれば、立ち向かってくれたかもわからない。だが、今冒険者はいない。
普通であれば田畑を荒らしている魔物が出ていれば、冒険者ギルドに依頼を出すために、お金を用意することから始める。
ギルドに依頼を出すと、依頼を受けた冒険者が討伐してくれるが、料金が安いと依頼を出しても、受ける冒険者がいないので、被害も拡大してしまう。
村人が1人、また1人と魔物が持っているこん棒で叩かれている。
叩かれた村人は、血を流しながら倒れていく。
「 ぎゃぁー」
いろいろなところで叫び声がしている。
倒れた村人を魔物は、さらに何回もこん棒で叩いている。
こんな状態では、生きている可能性は低い。
逃げ遅れた村人が殺されていくのを、2人は見る事しかできないでボー然と立ち尽くすしかない、足が動かなかった。
立ち尽くしている2人のところまで魔物が近づいてきて、村長や大人たちも2人を守ってくれていたが、大人は魔物にやられてしまった。
村長さんから血が流れている
今まで話していた村長が死んでいく。
それを見た二人はパニックになった。
もう、目の前に魔物がいる。
クリスもアリシアも魔物を見ることが初めてなので、この魔物がなんなのか、わからない。
魔物が「ゴブ、ゴブゴブ」と大きな声で威嚇してきた。
2人は足が震えてきて、動けなかった。
顔にも汗が流れてきて目に入ったが、魔物から目を離す事ができない。
汗で洋服が重たくなってくる。
魔物が2人の目の前に近づいてきて、足を動かすことさえ忘れてしまうほど恐怖が2人を襲った。
さらに震えがきて膝がガクガクして動かす事も出来ずに、そこに立ち尽くすことしかできなかった。
動かない2人に魔物が近づいてきた。
魔物は右腕を大きく上にあげる。
並んでいる2人に、こん棒を振り下ろそうとしている。
逃げたいと思うけど、足や体にチカラが入らない。
心は一目散に逃げたいと思うけど、体は動かない。矛盾した状態で立ち尽くすしかなかった。
魔物は振り上げたこん棒を、力の限り振り下ろした。
こん棒は隣に立っていたアリシアの頭にあたって、アリシアは吹っ飛ばされゴロゴロと転がっている。
俺はアリシアが倒される瞬間を、スローモーションのように見ていることしかできなかった。
アリシアが血を振り撒きながらゴロゴロと転がっていくのを見ているだけだった。
あまりに衝撃なことが目の前で起きたので、叫ぶことさえできなかった。
アリシアを棍棒で殴った魔物は、俺の方を向いてこん棒を振り上げている。
アリシアがあまりにも凄惨に殴られたのを見ていた俺は、動くことさえできずにいた。だが顔だけは動かせた。
アリシアが倒されたのが切っ掛けとなって、恐怖から回復さると、やっと声が出るようになった。
「アリシアーー」
大声で叫んだが、それを魔物がきいてさらに俺に棍棒を振り上げようとした。
アリシアが血を流しながら倒れたことが、非常にショックであり、俺を恐怖から解き放つことができた。
冷静に周りを見ることができるようになり、魔物から目を離すことはできないけれど、周りを探すと、太い棒が地面に落ちている。
普通の木の棒だったけど、普段から使っているのと比べて変わりがない状態の方だった。甘い考えかもわからないけど何とかできるかもわからない。
魔物は興奮しているような感じで荒い息を吐いて、よだれを垂らしていた。
「ゴブゴブ」
しかし棒があるのは、魔物の横の3メートルくらいの場所で簡単には手を出すことができない。
すぐ棒を拾うことができないと気がついたため、どうすればいいかクリスは考える。
棒を取るには、どうすればいいのか?
そして魔物に倒されたアリシアの状態はどうなっているのか!?
早く魔物をどうにかしないとアリシアが心配だ。
でも今の自分じゃ、どうすればいいのかわからい。アリシアのことと、地面に落ちている棒を取るにはどうすればいいのか。
その2つだけがクリスの頭の中を駆け巡っていた。
クリスはこの時、頭と体は恐怖で支配されることもなく、頭は冷静でいろいろなものを見ることができるようになっていた。
魔物の横にある棒を見てしまうと、魔物が気づいてしまう恐れがあるため見ないようにもした。
心臓がドキドキ、ドキドキして早鐘を打つような感じになっているのに、頭の中は冷静で考えることができている。
魔物と対峙すると言う事は、本当に全身から汗がジトーっと出てしまうくらいだ。
以前、村のケインが冒険者をしていたが、ケインの気持ちが少し理解できた。
でも俺もアリシアもケインのように殺されるかもしれない状況だ。
どうにかしなければ殺されると思った。
心の中で思ってしまう事は、「どうする?」
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