冒険者 ケイン
お兄さんのような存在だった冒険者のケインに起きることです。
そのあとクリスが変わり始めます
俺の住んでいる村にお兄ちゃんのような存在の冒険者がいる。
その人の名前はケインだ。
「よっ、クリス」
「あっ、ケイン」
「何してんだよ」
「え〜見てわかんない?」
「まぁ、魚つりだよな」
「うん、今日はぜんぜん釣れないんだよ」
「お前な。魚だって馬鹿じゃないから、クリスみたいなのに釣られるわけないよ」
「あ〜ひどい〜」
俺はケインのことを本当に仲のいい兄弟みたいだと思っていた。
ケインは20歳くらいで、俺が見てもがっしり体系ではないが俊敏そうだ。
筋肉を鍛えると力は強くなるけど俊敏さがなくなるからと説明してくれて、ケインは、どちらかというと自分では早さを追求しているといっていた。
ケインは俺に、いろいろな話をしてくれた。
「お前の家の近くに、可愛い子が住んでいるだろ」
「えっ、アリシアのこと?」
「違うよ、アリシアはお前と同じ年だろ。そっじゃなくて!」
ケインの顔が赤くなる
「あっ、リズのこと?」
「そう、リズだよ」
「そのリズが、どうしたの?」
「お前な、俺が女のことを話したら、普通気づけよ」
「?」
「俺、リズのこと好きなんだ」
「へ〜」
「それだけかよ」
自分の片思いで、彼女のことが好きなことは隠しておきたかったけど、と言ってくれた。
時々俺はケインとリズが一緒にいるところを見たことがある。
楽しそうに話しているので前を通りすぎているだけなんだけど、ケインの方がリズに惚れているような感じに見えた。
ケインの顔が赤くなっているから。
ケインは彼女に一生懸命話そうとしているんだけど、彼女はなんだか気乗りしないみたいだった。
それでもケインは一生懸命、彼女の気を惹こうとしているみたいだったけど。
ケインはリズのことが好きみたいだけど、リズはそうでもないみたい。
ケインって、結構、俺には優しくていいと思うけど、女心はわからないよね。
俺の家の近くにも同年代の女の子が住んでいて、名前がアリシアって言うんだ。とっても可愛い子なんだけど、お転婆なのが難点なんだよね。
俺とアリシアは 隣同士だったので、よく2人して遊んでいた。
アリシアと遊ばないときには、ケインを探して剣の練習をしたり、冒険者の仕事の話をよく聞いていた。
本当にお兄ちゃんのように慕っていた。
「ケイン、剣の訓練してよ」
「お前と訓練すると、下手すぎて俺の訓練にならねえよ」
「えっ、いいじゃん、ケイン」
「もう、しょうがないな」
ケインはしかたなく訓練してくれた。
いつも僕はアザを作っていたけど。
ケインは、15歳から冒険者になって、数人とパーティーを組んで魔物を討伐していた。
そして倒した獲物を村に売ったり、村から離れた小さな町の冒険者ギルドに売りにいくと言っていた。
ときには大金を持っていることもあって、俺も大金が入った袋を見せてもらうことがあった。
「今日は、魔物も倒したんだけど、食用にできる鶏をとってきたんだ」とケインは言った。
しかし、そんな中でもケインは時々、傷を追ってしまい、包帯を巻いているような痛々しいことが何回かあった。
ケインは、ときには血を流しながら村に帰ってくることもあった。
「ケイン、その傷、どうしたの?」
「これはな、名誉の負傷だぞ」
「?」
「リーダーを助けようとして、負った傷なんだ」
「へー」
ケインの様子を見たり聞いたりしていると、冒険者になるのは大変なことだんだなと思う事はあったが、それ以外にやりたいと思うことがないので、自分はケインと同じように冒険者になりたいと思っていた。
ときには冒険者のケインと剣術の練習をしたり、アリシアと練習したりすることも欠かさず、しっかりと剣の腕を磨いて毎日、怠けることなく、遊びの中でも体を鍛えることを考えて、川で泳いだり、山を走ったり、体のトレーニングもしっかりと続けることをしていた。
ある時、ケインが村に戻ってきた。結構、擦り傷を負っていたが何やら興奮したような感じで「大金が手に入るぞ」と言って、急いで準備を整えたら、また村を出て行ってしまった。
1ヶ月が経ったけど、ケインに会っていない。
ケイン、どうしたんだろう?
ケインの家族の人に聞くと、ケインはパーティーメンバーと魔物狩りに行ったそうだ。
そのうちひょっこり帰ってくるよ、と言っていた。
でもそれから、いくら待ってもケインの姿を見てはいない。
ケインの家に行っても、まだ帰ってきていないとケインのおばさんは寂しそうに言っていた。
ケインは大金が入ると言っていたが、大金が入るほどって危険なことなのかな。
ケインは数週間経っても戻ってこなかった。
ケインは村ではなく、大きな町の冒険者ギルドという所の依頼を受けていたそうだ。
ケインは半年たっても帰って来る事はなかった。
ケインだけではなく、魔物討伐にいった人は全員が戻ってくる事はなかったそうだ。
帰ってこないケインたち冒険者のことを村人たちは、もう諦めたようなことを噂していた。
冒険者が魔物などに襲われて怪我をしたら、怪我の程度に応じて帰ってこない事は普通にあるそうだけど。
その例にもれずケイン達は、いつまでたっても戻ってくる事はなかった。
しばらく経っても戻ってくる様子は無いので、ケインの家族は諦めたようになっていた。
俺は最近は戻ってこないケインの事ばかり考えていた。
俺は仲が良かったケインがいないことがショックで、落ち込んでいた。
冒険者になるということは危険と隣り合わせだ。
俺が冒険者になっても、すぐに死んでしまうかも知れない。
ケインが帰ってこないことが、怖いことだけ、どういうことはわかるけど、自分にも起こりえることが冒険者になると言うことだと思うし、本当の意味で冒険者になることの危険性があることが、お金を稼ぐことなんだと思う。
ケインの冒険者のランクは、Eランクだったらしい。
冒険者になると言うことが、単純に戦うだけではなく殺し合いをするということがショックだったけど、なんとなくだけど意味が理解できたような気がした。
そんな時に幼なじみのアリシアが、とても励ましてくれたのは言うまでもないことだけど。
「クリス、落ち込んでいないで元気だしなよ」と言いながらアリシアが僕の横に座ってくれた。
自分1人じゃ、知った人がいなくなるということがどういうことか理解するのは大変だったと思うけど、アリシアのおかげで何とか立ち直ることができた。
アリシアには感謝したい。
しばらくはケインがいなくなったことで、少し落ち込んでいたけど、そんなことも忘れてしまうくらい一生懸命、剣の稽古と体のトレーニングを忘れずにしていたので、女の子だけど同年代のアリシアにも何とか勝つことができるようになってきた。
「クリス、剣の練習するわよ」
「えっ、またぁ。アリシアは強いから嫌だなぁ」
「なに言ってんのよ」
「ほら、クリス」と言って剣を投げる。
もう、しかたいな、と思いながら剣を拾った。
「いくよ、クリス」
「ちょっと、まだ準備ができていないよ」
「もう、早くしなさいよ」
実は今までアリシアに勝てることは全然なくて負けてばかりだったから。
しかし平和な暮らしは、長くは続かなかった。
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