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防人(さきもり)の戦後  作者: 佐久間五十六


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日本の海軍力の素地②

 工業力と言う点において、日本が特筆して優れていた訳ではない。明治元年の段階では日本の工業力など大したものでは無かったからだ。強大な海軍力を保有する為には、工業力は必須だ。工業力が無ければ、航空機も艦船も戦車も作れない。

 百々のつまりが、海軍力と言うのは国家の工業力の指標でもある。それは決して昔話ではない。今も同じ事が言える。世界最高の工業力を持っている米国だからこそ、原子力空母や原子力潜水艦と言った強大な兵器を運用、実戦配備出来るのである。

日清・日露戦争に勝った時も、大日本帝国陸海軍は最新の工業力を用いて、富国強兵の名の元に背伸びをして大国と渡り合った。最も、敵の実力を侮った日米決戦では、無理が効かなかった。

 日本が近代化を始めたのは明治時代以降の事であるが、その政策が花開かなければ、列強にいいようにされていた事であろう。その下地が350年続いた江戸時代であり、その前からの積み重ねがあったからである。それらが日本の海軍力の素地になったと思われる。

 世界最高水準の工業力が、小さな島国日本のポテンシャルになった。勤勉で愚直な真面目さがある国民性も日本の海軍力の素地になったとも言える。憲法9条がなくても、日本は暴走しない統率力とモラルはある。最も日本は枢軸国側の立場にあるのだが、ヒトラーやムッソリーニの率いたドイツやイタリアとは全く異なる人種である。そもそも歴史的に見て日本人は防衛戦争しか戦っておらず、専らナチスドイツが世界的に非難を浴びたホロコーストの様なある一定の人種に対する虐殺は行っていない。


戦線拡大をし過ぎて亜細亜の同盟国を巻き込んでしまったのは反省すべき点であるが、米英を敵に回した時点で壊滅的な敗北の道しか無い事は、旧日本軍の幹部は重々承知していた。それでも日米は戦後肩を取り合い冷戦下を共に戦い抜いてきた。普通はあり得ない。核使用国と被爆国が手を取り合えたのはある意味奇跡だ。誠米国に都合の良い日米同盟であったし、それは今も変わらない。だが日米同盟が無ければロシア(ソビエト)や中国に日本本土を侵略されていたかもしれない。米国は陸海空各自衛隊を育て上げ、日米は不都合な戦後を歩んで来た。


だがそれは今は昔。被爆国日本の事実を見ればガザ地区やウクライナで起きている現実はただ繰り返されているだけなのだ。弱き民衆は声を上げられない。犠牲になるのは確実に民衆である。そうならない為の自衛隊であるはずだ。

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