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防人(さきもり)の戦後  作者: 佐久間五十六


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日本国民の想い④

 日本人としても、危機意識が全く0であった訳ではない。国防と言う国家の根幹的な事柄に対して無関心でいられるような、国際情勢でもなかったであろうし、現に戦後の日本周辺の安全保障環境は決して安定したものでは無かった。

 ただ、国防と目の前の生活を天秤にかけた場合、どちらをとるかと言われた時に、日本人の多くが、生活の向上や経済の復活を優先させたのは歴史が証明している。戦後と言っても一概には括れない。そんな複雑な環境にあって、結果として"エコノミックアニマル"と呼ばれたのは、ある種仕方の無い事なのだ。

 日本人は良くも悪くも、一つの事柄に注力するとそれ一辺倒になるのは、日本人の国民性である。良くも悪くも。戦時中が悪い例だとすると、戦後の日本は良い例と言える。米英と言う敵を作り上げて、そこへ国民の全てを向かわせた。勿論、初めから勝てる戦でないことを知りつつも。そう思っても、走り出したバスを止める方法を知らなかった為、そのバスに乗るしかなかった。乗り方は良く知っていても、降り方を知らなかったり、下手くそだった。

 もう少し上手にバスの乗り降りをしたり、見分ける力があれば、もう少しまともな戦争になっていたかもしれない。歴史にIFは禁忌だが、どうして米英と戦わなければならなかったのか、戦いは不可避なものであったのだろうか?

 いずれにしても、遅かれ早かれ海軍を増強し続ける米国海軍と旧日本海軍は、太平洋の覇権を争う事は、充分に分かっている事であった。日本国民も、世論としては戦争に賛同していたのも事実である。仮想敵国として旧日本海軍は、米国海軍を主敵としていたのも間違っているとは言い難い。戦争を避けようと最後まで画策していた旧海軍良識派の軍人達は皆有能で名将なのだが、いかんせん旧海軍の中では少数派であった。

 日本国民には、軍部を押さえる力は無かったし、彼等の意見を批判するのは大罪であった。嘘つきの大本営発表により、日本国民は嘘を信じ続けた。でたらめの情報しかない状況は、最前線の兵士も同じであった。正しい選択が出来たのは結果として大元帥であられた昭和天皇様だった。軍部の激甘な先見性と見通しに、日本国民は心中する形となって行ったのである。戦争で何もかも失った日本国民ではあったが、ものの10年で経済的には復興した。焼け野原の東京や原子爆弾の落とされたヒロシマ・ナガサキも復興した。それは一重に防人が旧日本陸海軍から陸海空各自衛隊に変わる変換期であった。

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