エノラ・ゲイ
日本の敗戦を駄目押ししたのは、間違いなく原爆投下であった事は、日本人ならば誰もが感じるところであろう。しかし、この当時日本人の多くは誰の命令によって、そして何者がこの地獄を生み出したのか理解している者はいなかった。
原爆投下を指示したのは米合衆国大統領のトルーマン。原爆投下作戦には当時の米軍の新型爆撃機、通称エノラ・ゲイにより、人類史上初の核兵器使用は行われた。民間人がなるべく多く、軍需工場も近い。その様な場所を米軍は敢えて狙った。
しかも一度足らず二度も。当時米軍は二種類(現在はもっと多い)の原爆を保有していた。ウラン型とプルトニウム型だ。ヒロシマ・ナガサキにそれぞれ一発ずつ投下し数多の犠牲をだした。これを人体実験と呼ばず、何と呼べば良いのであろうか?そして、本当に原爆投下は太平洋戦争を終息させる事に貢献したのだろうか?
市田島準平はそうは思わない。日本の敗戦は既に秒読み状態であったし、何よりも日本は原爆投下時点では、米国に反撃する力など微塵も残っていなかった。イタリアでもなくドイツてもなく、日本だけに二度も原爆を投下した米国の人道上の罪は永久に消える事はないだろう。
戦争が起きれば人は死ぬ。しかし、何をしても良いと言った事にはならない。米国軍人にとって見れば、原爆を使用する事等雑作もない事なのかもしれない。被爆したことによる放射能の被害は死ぬまで被爆者を苦しめる。米国は一円たりとも原爆投下の賠償をした試しがない。
日本政府も、原爆被害者に対する救済には長年消極的であった。結局、損をしているのは日本人である。果たして、世界史上一度の攻撃で、数万人単位の人間が死亡し、生き残った者の大多数が後遺症に悩まされる。と言う様な惨劇を経験した国などあっただろうか?こんな横暴がまかり通る事は許されない。と、市田島準平は思いつつも、何も出来ない無力な自分に腹立たしくもあった。世の中は理不尽な事で溢れている。市田島準平がそう思うのも無理はない。
「リトルボーイにファットマン…ふざけた名前の爆弾だぜ。」
「確かに原爆投下は米国の汚点かもな。」
「米国の教科書には原爆投下は正統性がある。泥沼の第二次世界大戦を終わらせるのに一役かったと。」
「核拡散の起点を作ったのはそもそも、米国だぜ?日本も核の傘に入ってるのは、何も日本が望んだ事ではない。米国が核兵器を日本政府の了承も無しに、勝手に核兵器を持ち込んでいるからに過ぎないのだ。」
そう言う考えも一理あると銀次は思った。




