戦友との再会④
市田島準平が大親友であった龍山丈の戦死を知ったのは、市田島準平が家族の元に戻ってから、約半年程経過した頃の事であった。龍山丈の妻菜々子と偶然町で出会ったのが、きっかけだった。
菜々子の話によると、龍山丈は海軍に志願し、海軍兵学校を優秀な成績で卒業し、その後南方戦線に配置され、零戦で特攻出撃して行方不明になり戦死扱いとなったと言う。
ちなみに龍山丈は出来の良いエリートではなかった。素行不良で少年時代には、市田島準平と二人して悪戯をしたものだ。転機は海軍兵学校受験の時だった。進路を担当した教師に面白半分で言われた事を真に受けた龍山丈は、天と地がひっくり返っても合格出来ないと言われた、海軍兵学校を一年間浪人し見事合格してみせた。
ここで諦めたら一生後悔する。龍山丈はそう思った。ろくすっぽ勉強などしてこなかったが、合格を信じ机にしがみついたと言う。その成果もあり、海軍兵学校に晴れて合格し、赤レンガへの数少ない切符を手に入れたのである。当然の事ながら周囲はとても驚いた。あの龍山丈が当時最難関と言われた、海軍兵学校に合格したのだから。それからと言うもの龍山丈は、将来の日本海軍を担う幹部として、海軍兵学校を順調に卒業し、晴れて海軍士官として任官した。
市田島準平が龍山丈について知っているのはここまで。菜々子の話によると遺骨も戻っていないそうである。それどころか、海上で敵機に突入したのであれば、龍山丈の骨は二度と戻っては来ないだろう。それでも菜々子は、龍山丈の骨が戻って来ても良いように、墓と仏壇の準備は怠らなかった。戦争では、親しい友人もそうでない人間も、容赦なく奪って行く。龍山丈もその一人に過ぎなかった。
「菜々子さん。丈の奴は大した奴ですよ。遺骨は戻って来ないかも知れませんが、大日本帝国海軍軍人としての本懐はやり遂げました。」
「そうですね。御国の為に名誉の戦死をしたのですから。でも残された家族は辛いですよ?」
「丈の奴は確かに罪深い奴です。こんなに美しい女房を未亡人にしてしまったのですから。」
「市田島曹長?本当に主人の遺骨は戻って来ないのですか?」
「直掩機、つまり丈の奴の最期を見届けた航空機は確かに特攻の成功を確認し、米国艦船に甚大なる被害を与えています。」
「特攻に成功?」
「そりゃあ特攻に失敗してるのと成功しているとじゃ、遺骨の状態も変わりますよ。もちろん、特攻に成功している方が遺骨の状態も悪くなりますし、捜索も難しくなります。当然陸海軍総出で捜しますがね。捜索は中止命令が出て帰還しました。」
「名誉の戦死と言う事ですね?」
「はい。その通りです。力及ばず申し訳ない。」
「市田島曹長が全力で探されて駄目だったのなら仕方ないですね。」




