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防人(さきもり)の戦後  作者: 佐久間五十六


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日本陸軍兵①

 一方の大日本帝国陸軍は、志願兵士と徴兵兵士を並行的に用いていた。陸軍士官学校や陸軍大学校を出るエリートは、皆志願兵士であり、下士官や兵士の中にも志願兵士はいた。階級のピラミッドの上位を志願兵士が、階級のピラミッドの下位を徴兵兵士が占めていたと考えれば、分かりやすい。

 志願兵士は職業軍人とも呼ばれたが、決して生きたいとか、死にたくないと言う事を言うのは、タブーとされていた。死をも覚悟で陸軍の門を叩いたのに、そんな弱音は、矛盾するからである。

徴兵と言っても、集められる年代は幅広く、18~40歳位までの男子だけが召集の対象であった。当然、高齢な兵士は若い兵士よりも体力が劣っており、必然的に後方支援に回さざるを得ない。第二次世界大戦末期には、若い兵士は次次と特攻に駆り出され、高齢な兵士で軍の体裁を保っていた。

 兵隊は消耗品、整備兵士は備品等とよく言われたものだが、徴兵されてくる兵士には、大本営は何も期待していなかった。また、徴兵されてくる兵士も、自分の役目が捨てゴマである事を悟る。しかし、それを拒絶すれば軍法会議にかけられ死刑。どう足掻いても、待つのは死だけであった。日本陸軍兵士の本当の敵は大本営であった。手柄を立てれば誉められるが、戦争が終わらぬ限り、この地獄は続く。日本陸軍の強さは徴兵兵士によりもたらされた部分は多い。

 いずれにしても、大所帯となっていた日本陸軍にあって、徴兵制と志願制の両立は、マンモスエネミーを管理する為に編み出された合理的かつ戦略的に優れたシステムではあった。とは言え、問題がなかった訳ではない。徴兵兵士の士気の問題。装備及び諸費用の問題。少年兵士の問題。徴兵制には、大きな欠陥があったのは明白だった。とは言え、戦後の今でも世界中では戦争や紛争で多くの人の血が流れている。政治的な理由から徴兵制をやめられない国はまだまだ多い。まるで、戦前の日本陸軍を見ているみたいである。

 元はと言えば富国強兵制の元で進んだ日本の徴兵制。陸軍や海軍に足りない兵隊を補う為に広く国民から兵役を憲法で義務化した。志願してくるエリート達で士官の椅子は埋まっており、一番軍隊で消耗する下士官や兵隊の補填に徴兵制で集まった兵隊をあてていた。陸上自衛隊も志願制ではあるが、大日本帝国陸軍と階級ピラミッドは似ている。充足率は約90%で自衛官の数はこれから、減っていく頭打ちの一方である。状況によっては将来的に徴兵制の復活も無いとは言い切れないのが、現状である。

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