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防人(さきもり)の戦後  作者: 佐久間五十六


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時代は変わった①

 時代は、変わったのかもしれない。黒沢は最近よくそう思う。徴兵制が撤廃され、自衛隊は完全な志願制に移行している上に、次第に米国に頼らずとも、国産兵器がどんどん開発されて行く。結果として日本は、米国に敗れた事で日本の運命は大きく変わったのかもしれない。

 敗戦の責任は戦犯者に押し付ける形となり、一区切りをつけた。旧日本軍の士官や下士官の多くが、自衛隊に流れて、その旧軍出身者も次から次へと定年を迎え自衛隊を去っていく。日本はその間に奇跡の経済発展をとげ、庶民の暮らしも格段に良くなって行った。

 しかし、黒沢はこれで良かったのか不安になる時がある。日本人としてのプライドも伝統も何もかもが、敗戦の日から零になってやしないか?米国と言う大国のプレッシャーに負け、ペコペコ従順な"犬"になってやしないかとも思う。自衛隊は米国の肝いりで作られた組織である事は確かだ。

 昔と今を比べるのは、二つの組織、二つの時代でに身を投じた者の性なのかも知れない。理不尽な暴力は極端に減った。だが人目につかぬ所で、悪質な暴力がある事を黒沢は知っている。それを止める事はしない。何故なら軍隊はそうしたものだと割り切って生きてきたからだ。「殴って教育出来るなら、教育ほど簡単なものはない。」防衛大学校の初代校長である槙智雄は、こう述べているが、現場で否応なく殴られて来た、黒沢にとっては、軍隊と言う特殊性を考えた場合、殴ってでもストレスを発散すると言う現場を見ていない発言だとも言えた。

 それはともかく、黒沢にとっては旧帝国陸軍も陸上自衛隊も、同じ実力組織だと言いたいのだ。時代は、変わったのかもしれない。それでも軍隊は国を守る為には、絶対に欠かせないモノである。旧帝国陸軍も陸上自衛隊も、黒沢にとっては同じ実力組織である。その認識を黒沢は、新たにしていたのである。何が良くて何が悪いか等と言う事は軍隊暮らし30年以上の黒沢でも、ちっとも分からなかった。

 陸上自衛隊と言う名前だが、野砲もあるし戦車もある。普通科と言う名前の歩兵部隊もある。それは諸外国に日本が諸外国陸軍と同等の戦力を持っている事を認めさせるには充分過ぎる戦力である。これは日本国憲法第9条第2項の戦力の不保持に抵触する現実である。海上・航空各自衛隊も同様だ。是等の現状を日本政府は戦後“必要最低限度”の自存自衛の為のものであり、当該憲法の違反には当たらないと言う憲法解釈で、ずっと茶を濁している。これは憲法改正の重大な争点であると言える。

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