表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
防人(さきもり)の戦後  作者: 佐久間五十六


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/300

ゆずれない想い①

 朝鮮戦争時、米軍の要請で日本海軍の掃海部隊が出動した事は、既に触れたがその特別掃海部隊の指揮官だった男について話をしたい。

 名前が分からぬ為、"M中佐"という事にしておく。"M中佐"は、帝国海軍出身で終戦時の階級は海軍中佐である。掃海部隊を率いた後、防衛大学校訓練部長、横須賀地方総監部副総監等を歴任している。46隻の艦艇約1200人を動員した戦後初の戦争参加で指揮を採った男のプライドを見せたストーリーがある。

 事の発端は一隻の哨戒船が、仁川沖掃海作業中に触雷。後沈没して、1名の日本海軍軍人が亡くなったという事だった。1200人の内の1人等仕方無いと思われるだろうが、部隊を率いている指揮官にとっては、100人だろうが1000人だろうが、部下を死なせた想いは1人でも変わらない。

 M中佐は、掃海任務を中断させ、米軍の意向に反して残りの全船艇を引き連れ、日本に帰投。指揮官を解任されたが、それでもM中佐は自分の行動に対して後悔した事はなかった。M中佐が主張したのは、いくら掃海作業が可能でも、隊員(部下)の動揺はあった。その様な状況の中で掃海作業を実施するのは、合理的見地から考察しても良好ではない。と言う事であった。

 しかし、米軍としては、折角後ろ向きだった日本のケツをひっぱたいて漕ぎ着かせた「掃海」という汚れ仕事をやっていて欲しかった。朝鮮戦争中断後の韓国(南朝鮮)強いては朝鮮半島にとって機雷は、無い方が良い。だから米軍は、日本の特別掃海部隊には、任務の継続を求めた。それが米軍の偽らざる本音だったからだ。

 これを聞いたM中佐は激怒した。自分達は所属先も不確定な上に、何の為に命を掛けて良いのかも分からず、その様な状況で、米軍に命を預けて使い走りをしているのだ。日本の国益がそこに繋がっているのは分かるが、そもそも、海軍も存在しない日本から、技能のある旧軍人を投入している事に、腹の底から沸いてくる怒りを抑えられずに、日本の特別掃海部隊の撤収を命じた。

 アメリカの言いなりになった敗戦後の日本人からすれば、M中佐は「異端」にあたるのかもしれないが、帝国海軍無き後の帝国海軍軍人としてのプライドを見せつけた反骨の帰投であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ