空襲警報
ソウルが陥落したのが1950年6月28日の事であったが、翌29日には福岡県板付では空襲警報まで発令されている。終戦直後とは言え無いが、5年も経ってからの警報に、さぞ人々は驚いた事であろう。
ここまで来ると最早対岸の火事とも言っていられない。破竹の勢いの北朝鮮軍の動きに対応する為、1950年6月29日、米軍は重い腰を上げた。米国陸軍の投入を決めたのである。主力は在日米軍の第8軍の4個師団中3個師団が、1950年7月中頃までに、朝鮮半島に出動した。しかし、日本に残っていた第7師団から兵士を抽出したので、北方の警備が手薄になったと言う。米国陸軍の投入によって、南朝鮮(韓国)は何とか北朝鮮軍を38度線まで押し戻し、戦況は落ち着きを見せた。
だが、それは対立構造を根本的に解決するものではなかった。現在の北朝鮮問題の根本的問題は、この朝鮮戦争に起因する部分が大きい。そして、この戦争を戦った中国、韓国、米国に影響を与えたのみならず、日本の再軍備を加速させる為の要因にもなっただろう。遅かれ早かれ日本の再軍備は、時間の問題ではあったが、この対岸の火事により火事の備えを、きちんとしなければならないと言う認識が目覚えて、日本も最低限の備えをしなければならないと言う方向に、政策を転換しなければならないと言う方向に、変わって行ったのは確かである。
朝鮮戦争は未だ未解決の休戦状態である。北朝鮮の挑発はエスカレートする一方で、日米韓の足並みは完全には揃ってはいない。戦争の終わりは見えず最後の冷戦地帯とも言われる朝鮮半島。最大のキープレイヤーである米国はいくつもの難題を抱えており、中国の台頭もあり、北朝鮮問題に積極的ではなかった。しかし、北朝鮮が核兵器を保有し、米国に届くICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発など、米国の安全保障に影響を及ぼす存在になった事で、泳がせておいても大丈夫な金魚ではなくなった。
ベトナム、イラク、アフガニスタンでやった様な失敗はしたくはない。朝鮮半島の平和的統一を最大の目標としながらも、叩く必要があれば叩く。あくまで日米韓のトライアングルを基本とし、それを壊そうとするかもしれないか、そうなる前に何らかの実効性のある行動が必要になるかもしれない。とにかく北朝鮮には未解決の拉致問題と言う人道問題や核・ミサイル開発と言った軍事的な諸問題が未だ未解決である。戦争を米韓で仕掛けるのも無茶があるし、日本は戦争に関してはリード出来ない。拉致問題を皮切りに日朝国交正常化を目指し韓国と北朝鮮の橋渡し役をする。それが現実的な青天井である。




