生きて行く為に④
現状、とにかく戦争から戻ってきたのだから、まぁ、何とかなると思ってた。とは言え、自分の理想など実現出来ない。戦後の日本国民の多くは現実と夢の狭間で生きていた。
生きるだけで精一杯。3食すらまともにとれない。そんな環境下にあっても、小学生は青空教室で希望を持って学習し、大人達は懸命に働いた。
戦後の日本は、人々との繋がりを重視して、和を持って尊しと成す、と言う文化を忘れなかった。占領されても、大和魂まで売り渡す事など無く、日本人は厳しく辛い戦後黎明期を乗りきっていく。
とは言え、日本の戦後は、その多くを米国に依存していた。特に安全保障の面では、大日本帝国陸海軍が解体され、警察予備隊(自衛隊の前身)が発足するまでは、米国陸海軍の世話になった。それでも、日本人は、その悠久の歴史と文化と美徳や精神文化を大切にし、保持し続ける事を忘れなかった。日本人には、どんなに厳しく辛い時期であっても、守るべき国体と文化がある、
それは、未来永劫変わらない。ただ生きるだけなら家畜と同じだ。と、黒沢は思っている。自分達は戦争に負けたが米国のslave(奴隷)ではない。ただ一度戦争に負けたくらいで失う様なものなど、たかが知れている。大和民族は、原子爆弾を投下されようとも、飢餓に苦しもうとも、不死鳥の如く甦ってきたのである。
黒沢は思う。生きて虜囚の辱しめを受けずの精神やら理不尽な暴力には、そもそも反対だった。腐敗した日本陸軍は、滅ぶべくして滅んだのかも知れない。まぁ、軍隊何てそんなものかと、諦めていたが、どうやら兵士の命をゴミクズの様に扱っていたのは、日本だけではないだろう。じゃあ共産圏の国は兵士に手厚いのかと言えば、そうとも言えない。所詮兵士は紙切れのようなものでしかない。その点で言えば、戦後日本の師匠の米国は、兵士を大切にする。だから米国は世界最大の国になれているのだろう、と黒沢は思っている。とは言え日本がその様な大国志向を目指すべきかと言えばそうとも言えない。日本が目指すのは日和見的な国ではなく、あくまで自分の国は自分で守り、他国の内政には関与しない現実的な国である。もちろん、大日本帝国の犯した過ちに対する反省の元身の丈にあった安全保障政策を取るべきであり、まだ残存する日本兵の積極的活用(自衛隊員への登用)など幅広い分野での元日本兵の社会復帰を円滑に進めながら、独立を回復したあかつきにはどうすべきかを考える時間。それが戦後黎明期と言う時代であったと思う。




