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防人(さきもり)の戦後  作者: 佐久間五十六


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生きて行く為に②

 時代のせいにするつもりは、サラサラない。戦争の激しかった時代に、たまたま生まれて来てしまった事を半ば諦めるしか、方法は無かった。いくら悔やんでも、日本が米国を始めとする連合国に敗れたと言う事実は、覆らないであろう。

 そんな事よりも、一歩でも前に進み続ける事でしか、道は開かれない。黒沢にはそれが良く分かっていた。今の(戦後の)日本人は、米1㎏手に入れるのだって、命懸けである。GHQの兵士から貰ったチョコレートで命を繋ぐ人もいる。そんな状況では、とてもではないが、米国に対抗するのは難しい。

 今はこの待遇に甘んじていても、いつかあいつら(米国人)を見返してやる。そういうモチベーションで生きている人間も多くいた。事実、日本の戦後経済が奇跡的に成長した理由は、米国の占領が無くても、解放されても消える事の無かった"首輪"を、取り外す為のもがきであった事は事実である。生きて行く為には、必死であると共に、米国にいつまでたっても、従順で居ることの苦痛からの脱却。それが戦後レジームからの脱却であった事は言うまでもない。

 しかし、戦後何年経った現代でも、未だに戦後レジームからの脱却は完全ではない。ただそれは、先人の努力を否定するものではない。あくまで日本の現行体制が、戦後GHQにより形づくられたものである事であり、長年タブー視されていた憲法改正の動きも少しずつではあるが、ある。それを否定する人間もリベラルな人間も多くいるが、現行憲法の日本人による日本人の為の憲法改正は大いに歓迎すべき事象である。

 戦後レジームの脱却の為の憲法改正は、日本の悲願である。日本人が自発的にこの様な動きに出る事は、日本人の危機感を煽り、ただ平然と生きる事に一石を投ずるものである。時代に合わないものは、変えていく。だが、その為のハードルは高い。

 話がそれてしまったが、黒沢も元大日本帝国陸軍少佐として、米国に言いなりの日本の政治・経済の現状には、大いに不満を感じていた事は、間違いない。日本政府としては目一杯の支援策で元日本兵つまり、陸軍や海軍出身の人間の生活再建をサポートしたし、未亡人になった人は遺族年金等で経済的なサポートをした。あまりにも膨大な人が戦争被害にあった為、支援が追いつかなかったのも事実である。黒沢の様に農地があり働く意欲のあった元日本兵は稀であった。特に悲惨だったのは旧満州国から引きあげて来た人達である。終戦直前の対ソ連の宣戦布告に旧満州国出身の人達は翻弄された。国内では広島・長崎の被爆地や丸焼けになった首都東京。地方でも情勢は誠に厳しかった。

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