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防人(さきもり)の戦後  作者: 佐久間五十六


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命懸けの機雷除去

 大文字龍太は元々、軍艦「梨」の乗組員だった。それは前述の通りである。それから大文字は、掃海部隊に「梨」爆沈後、合流していた。機雷の除去などやった事はなかったが、そんな事は言っていられない状態であった事は、専ら書いてきた通りである。

 掃海部隊とは言っても、その処理は人が行う爆破処理部隊であり、現代風に言うなれば、海のハート・ロッカーとでも言えるだろう。とにかく命懸けだった。操作を誤れば乗っている駆潜特務艇ごとドカンである。そんな機雷除去には、一定の特殊技能がいる。勿論、民間人には無理で、そのノウハウは日本海軍にしかなかった。

 大文字は、作業のサポートに回り、他の隊員が処理し易い環境作りに努めた。それくらいの事しか出来なかった。それでも、仕事があるだけリスクはあってもマシだった。復員して来た内外地の大日本帝国陸海軍人は、戦場よりも遥かに困難な戦後と言う現実に、必死で向き合わねばならなかった。

 負けた軍人に対する国民の視線を、意識しながら生きる者。連合国軍から与えられた仕事に就く者。とにかく戦後の混乱期は「生きる」事で精一杯であった。

 あれだけ「死に場所」を探していた人達が、今度は生きる道を選択している。それは、この世の皮肉以外の何ものでもなかった。

 そんな混乱期の中でも、掃海部隊による掃海作業は粛々と進められた。所属先は目まぐるしく変わったが、掃海の邪魔に成るような事ではなかった。やる事は変わらない。海に囲まれた日本が機雷で鎖国をしている様な状況から、一刻も早く抜け出さねばならない。徐々にではあるが、掃海部隊の仕事のおかげで、状況は改善されていった。

 被害はあったが、毎日処理される機雷処理の現場で、大文字も機雷処理の方法を覚えた。勿論、現場の指揮官がさせなかったが、練習させてもらう内に機雷処理を任されるようになった。海上に障害がある内は船舶が安心して航行出来ない。それは、貿易によって成り立っている日本にとっては自殺行為だった。

 そして、戦後日本が高度経済成長を遂げる事が出来たのは、この帝国海軍に起源を発する掃海部隊の、血の滲む様な献身的な我が身を削る活躍が下支えしていた事は、言うまでもない。その事が世間一般ではあまり知られていない事は、悲しいかな日本と言う国家の最も弱いポイントでもある。こうして、日本周辺海域の機雷は除去されていった。

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